第20話:ラインルート准将の朝活と白桜級の戦略的恐怖
閑話休題 ラインルート准将の朝活
私の朝は午前3時半のアラームと共に始まる。新兵時代から変わらない筋トレを30分、黙々とこなし、プロテイン血液を飲んだ後は、まだ静かに寝てる下士官達を起こさないように足音を立てずに、長い廊下を走り、参謀本部の外にある早朝喫茶へと向かう。
「国家経済新聞を。あといつものカフェモカとチョコケーキも」
「ふふっ、准将閣下は本当にチョコレートがお好きですね。少しお待ちください」
そう、私ラインルート准将がやめられないもの第2位がチョコレートだ!第1位はシガレット……悲しい話だ。
新聞をそっと置いてもらい、チップを支払い、読む。だが私が読むのは経済や帝国国勢調査などの記事ではなく……
「ふむ、帝都に新しく、スイーツ盛り放題喫茶店か」
広告と帝都紹介のページだ。私は思わず想像する、パフェカップいっぱいのチョコレートパフェを……思わず将官らしくない顔を指摘されたのは情報屋からだった。
「あんた、いつもより気持ちの悪い顔してんな」
「はっ!?……君か。人の妄想に口出ししないでくれ。それよりも……」
「お待たせ致しました!あ、ニアーナさん、ブラックコーヒーですね!少々お待ちください!」
喫茶店のウェイターさんは走って厨房に戻る。
「ニスペル、例の情報は手に入ったか?」
「もちろん!僕に手に入れられない情報はないよ……しかし侍従長閣下が英雄亡国カルイアの王族だったとはね」
私自身、この情報をヴァルツ閣下から聞いた時は耳を疑い、信頼できるニスペルという情報屋に頼んだ。彼女とは私がパラディンズに潜入していた頃の仲だ。だからこそ信頼できる。
「お礼はこの小切手に好きな額を書いてくれ」
「……いいよ。あんたとはビジネス関係を続けていきたい。今回だけは無料にする。その代わりこの情報を僕の信頼出来る情報屋のみ機密厳守で伝えたい」
本来情報屋が金を貰わずに情報を共有したいなど言語道断。有り得ない話だった。だが彼女は優れた情報屋だ。信頼に値する。
「いいだろう。相手は選んでくれ。あと念の為に言っておくが私には彼女が……」
「知ってるよ、言っただろ?ビジネス関係だって、さぁ、これからはニアーナだ」
ウェイターさんが丁寧にコーヒーを置いて一礼する。
「ニアーナ、もし何かあれば……」
「分かってるよ、海軍情報部に来てくれだろ?僕がそんな事になる時は死ぬ時くらいだよ」
済まなかった、愚問だったな。と返すと彼女はブラックコーヒーを素早く飲み終え一言。
「次の仕事が迫ってるからな。また今度話そう。個人的な雑談でも報酬は貰うけどね。コーヒーご馳走様」
そしてウェイターさんのありがとうございましたー!の声が響き、彼女のカップを見る。
お金を入れてない……まぁ普段の情報代金とコーヒー1杯を比べれば安いものか。
そんな私ラインルート准将の朝は早くから情報集めの一日で始まる。ニアーナとは月に1度会うくらいだがそれでいい。その方が彼女は仕事が出来るのだから。
中央洋 大海原 白桜級 艦首にて
「実戦は久しぶりだなぁ……懐かしい新鮮な潮風だ。本当に進水式も行う余裕なく、ヘルシア閣下をご帰還させる為に処女航海をさせるのが惜しい……」
私、ヴァルツ海軍元帥は両腕のふたつの腕時計を見る。1つは帝国標準時、もう1つはトリアーナ協商連合国の標準時。幹部新人として入軍した時から毎日自国と仮想敵国の時間は意識している。
「閣下!協商連合国の沿岸砲地帯にもうすぐ接近します。入艦を。あと女王陛下がお呼びです」
「わかった。だが、私が1つ予言しよう。敵は1発も撃ってこない」
上級士官は困惑していたがこれは間違いなく当たる。
船内に入り、まるで高級ホテルのような内装の船内を歩き、女王陛下専用の部屋に入る。
「陛下、敵は1発も撃たないでしょう。ただ少しだけうるさくなるかと」
「うむ、同感だ。敵達が怯える姿が楽しみだな」
女王陛下の悪どい顔に思わず私も、悪どい顔で返す。
トリアーナ協商連合国 沿岸砲陣地では……
「なんだ!あの巨大戦艦は!?」
「帝国の旗を掲げてるぞ!!同盟国では無かったのか!?」
兵員達は混乱し、この24センチ沿岸砲では旧来の戦艦では非常な脅威であったがあの白き船には全くダメージが与えられないのは彼らが1番よく知っていた。
「兵長!予想される装甲圧の長さは!?」
兵長は口を開けたまま、計算機を落とす。
「兵長!?」
「最低60センチ以上……貫徹どころがそこそこ凹ませるのが限界……終わりだ!第1王子がヘルシア特使殿に手を出さなければ!!」
そのまま白桜級と護衛の駆逐艦は何の被害も受けずに湾岸に停泊し、陛下とヴァルツを乗せた海軍最高級車でトリアーナ協商連合国の十人評議会に殴り込む。
警衛の兵士達もあんな巨大な戦艦の砲がこっちに向いてるだけで物怖じし、通すしかなかった。
ガダン!と堂々とドアを開けたミスレイア陛下ははっきり一言申する。
「議長を連れてこい!!」
「わ、私です!」
議長は怯えながらきた。どうやら白桜級の報告を受けているようだった。
「今すぐヘルシアを連れて帰る。代わりの特使は近いうちに。そしてヘルシアが結んだ相互補助貿易条約も5年延長だ」
「そんな身勝手な!息子は真剣に恋をしてるんですぞ!!」
「真剣に恋をしているなら何故嫌がることをする!!それすら把握出来てないなら……貴様は国王以前に父親失格だ」
すると1人の議員がキレ散らかす。
「議長殿になんと無礼な!いくら帝国といえ……」
ヴァルツが答える。
「あーそうそう、評議会の皆様。ここはあの戦艦の射程圏内です。陛下のご気分次第ではトリアーナは亡国となりますこと、ご容赦ください」
全員がもはや黙り切るしかなかった。
その時だった。リレイド第1王子がヘルシア特使に拳銃を突きつけ、現れる。
「帰れ!帝国のクソども!!ヘルシアは俺が支配するんだ!!」
「あれがあなたのお子さんで?」
ヴァルツも陛下も全く気にせず、議長は「はい……」と呟くだけだった。
「お姉ちゃん逃げて!私は平気だから!!」
「嘘をつくな!……お前の顔を見れば分かる!本当は辛いんだろ?苦しかったのだろ?私の責任だ……だから私が連れて帰る!妹よ、願え」
ヘルシアは少しの沈黙の後に答える。
「お姉ちゃんのもとに帰りたい!!」
その瞬間に陛下の剣が輝き、圧倒的ともいえる速度で第1王子の拳銃を持ってる腕を切り落とす。
「貴様ァ!こんな事してただで……」
今度はヴァルツ海軍元帥が葉巻を吸いながら、帝国の最新型の自動拳銃を向ける。
「この拳銃は面白くてな。電気を流す拳銃だ、もし脳に打ち込めば永遠に全身不随は避けられまい」
「この……このクソジジイ!」
パンッ!!
「がァァァァ!!」
銃声と共に第1王子は悲鳴をあげて、気を失う。
「議長殿、先程の全身不随は誇張表現です。早く手当しなくては彼は失血死しますぞ?」
議長は慌てふためく中で救護兵を呼び、そのまま条約の調印式を急がせた。かなり強引で理不尽なのは分かっていたが国の為だ。やむを得まい。議長は心に言い聞かす。
「あの……」
議長がヴァルツに問いかける。
「本当にこの城が射程圏内なのですか……?40kmは離れてると思うのですが……?」
「さぁ?試したければ陛下を怒らせてみては?」
そのまま陛下とヴァルツは車に乗り、三十年ぶりに会った大好きなお姉ちゃんにヘルシアは抱きつき、ゆっくり休んでいた。
「陛下、これからはあなた一人の命では済まなくなりますぞ」
「そうだな。ワガママはほどほどにしよう」
ヴァルツは満面な笑みで姉妹愛を感じて思わず愛する葉巻に手を伸ばす。
「おっと葉巻を吸いたい」
「ヘルシアはタバコ嫌いだからダメだ」
ヴァルツはガッカリそうにしたが少し嬉しみも含めた表情で「それは残念」と答え、白桜級に乗船する。
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そしてここで新作予定のお知らせです!自分が大好きなアニメ・漫画作品のヨルムンガンドを久しぶりに読み返していたら少年兵の物語を書いてみたくなりました。ここまで読んでくれた読者様にお伝えします!キャラクター設定とプロットは完成しております!吸血姫の執事シリーズを完結させたら新たに投稿予定です!鋭意製作中で、ぜひともご期待ください!




