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第2話:侍従長の役職は胃薬無しでは耐えれません

侍従長(研修期間)として認められた自分はまずは書類仕事を覚えることからだった。ミスレイア陛下の買った物の承認と財務省への提出が基本的な仕事だった。なんだが……

「あのぉ……陛下は何を買われたんですか?」

部下の1人で侍従の1人が答える。

「侍従長殿、大変申し上げにくいのですが陛下はここ1週間買い物をしてらっしゃらないので仕事がないのです……さらに言うと我々の本来の責務の晩餐会のお召し物選びや食事選定も無いのです……」

「そ、そうか……まぁ、仕事が無いなら他の部署を手伝うとか……」

「ダメです!侍従長閣下!ここの閣僚吸血鬼の方々は強いプライドと責任感を有しております!下手に仕事を手伝えば戦闘も起こるほどです。実際私も国家保安局を手伝ったら保安局長から苦情の手紙が10年間毎日届いて胃薬と血酒をやけ飲みしましたから……」

もはや嫌がらせの規模が人間とは比べ物にならず、た、大変だったね……と言い、時間潰しに図書館へ向かう。すると帝立司書さんが笑顔で話しかけてくれる。

「侍従長閣下、一度お会いしてみたかったです。何か御本をお探しですか?」

「自分知っての通り人間なのでもっと吸血鬼さんの事を学びたいんですけど良い本とかないですかね?」

司書さんは何冊かの本の位置と種類が書かれた書類を見て、自分の瞳を見る。

「……自分の顔なにか着いてますか?」

「えぇーとですね……侍従長というお役職はこの国では第2位の政治役職になるので下手な本を選ぶと私の進退が……」

なに?侍従長ってそんな重たい役職なの!?女王陛下のお守りとかじゃなくて……

「ち、ちなみに自分ってこれからどんな……業務が……」

「歴代の侍従長閣下達のご経験だと国家安全保障会議の女王陛下への資料作りやお召し物の選定補助とか……ですね」

あまりにも重大な役職過ぎて脳がパンクしそうになりながら、とりあえず吸血鬼のビジネスマナーという本を紹介してもらった。

第1条:他の部署の仕事を手伝うな。吸血鬼の者は強いプライドと責任感で仕事をしている。よって勝手に手伝うことはそれを奪うことに繋がり家が焼き討ちにあったり、10年間毎日苦情の手紙届いたりするので絶対にやめよう。

あ、侍従のあの方が例に載ってる……

第2条:女王陛下を怒らせてはいけない。現アルスヴァーン帝国の女王陛下は侍従長を8回、閣僚達を20回、その他政府高官を十数回飛ばしているので気をつけよう!

いや、何を気をつけるのかと聞いているんだが……

その他にも現女王陛下に血液を使わない料理を出すと、職務を罷免されたり、帝国国家保安局に目をつけられたらすぐに尋ねて、事情を話した方が楽になるなど基本的にネガティブな事しか書いてなかった。

「司書さん……ありがとう……この仕事頑張るよ……あぁ……もし、気になる役職があれば今回のお礼ついでに人事局に相談しとくからね……バイバイ……」

司書さんは笑顔を崩さず、ありがとうございますと答えるだけだった。

胃を痛めながら、侍従長の任(研修期間)を解いてもらおうと女王陛下の部屋に向かった。

「ミスレイア陛下にご謁見なさりたいのですが……」

門番は念の為に立場が上の人でも聞く義務がある通りにしっかり聞いてくる。

「侍従長閣下、一体なんの御用件でしょうか?」

「侍従長の解任を……」

すると門番達が慌てふためく。

「お願いです!侍従長!辞めないでください!最短5秒で左遷された侍従長閣下もいますから!1日持ったのはあなたが初なんです!!」

「そうですよ!陛下のお姿に見とれて変な顔をした侍従長なんて顔面キック食らってますし……」

うわぁ……ますます辞めたくなってきた……

すると静かにドアが開き、不機嫌そうなミスレイア陛下が顔を出す。

「人間、ちょうどよかったわ。入ってきて」

「は、はい……」

部屋の中は驚くほど女の子らしいぬいぐるみや全身鏡があり、他にも高級そうな調度品やウォークインクローゼットもある。

「えーと、陛下。自分解任されたいんですけど……」

「やだ」

想定外の答えに驚く。嘘でしょ?

「あのご事由とかお聞かせ願えないでしょうか?」

「ん?あなたで遊ぶのも悪くないかな〜って。ところで人間、名前は?」

遊ばれるのか、弄ばれるのか、分からない中で自分の名前を答える。というかここでどうしても辞めたいと言ったら命の保証が無い気がしたからだ。

「そう、レイヴァスというのね。明日財政検証会議があるから資料を作ってちょうだい」

「陛下……誠に申し訳ないのですがそのような書類は作った事が……」

ミスレイア陛下はニヤニヤしながら顔を傾ける。まるで小悪魔のように。

「誰だって何事も初めてなんだからやってちょうだい。残り13時間よ」

「えーと出来なかったら……?」

陛下は少し考え、楽しそうに処罰の方法を考える。

「その不幸顔を治すために幸運な知らない男性の血と入れ替えるわ」

「すぐに仕事に取り掛かります陛下」

自分はまず、図書館までダッシュで向かい、司書さんに事由を話し、過去の資料を貰い、侍従本部に持っていき、侍従総出で突貫で作業を進める。

「ヤバいですよ!軍務省が新たな戦艦の建造計画を要求して、財務省と揉めています!」

自分はすぐに副侍従長にしてこの国のトップ3のハレルオン副侍従長に調停を頼む。

「閣下、直ぐに向かいます!ですが3時間は覚悟してください!」

その後も帝国国家保安局の職員の汚職による武器密輸の得た資金の追跡など、明らかに人数不足、暇じゃなかったのか部署は会議の開始30分前に資料を完成させて、陛下に渡す。

「陛下ぁ……何とかできました……」

「ご苦労、じゃあレイヴァスも着いてきて」

は?女王様?自分は寝る権利があると思うのですが……喉仏までこの言葉が出かかったが抑えきった。

「何故自分も?」

「自分の作った資料なんだから分からない所はあなたが説明するしかないでしょ?」

「はい……」

もう素直に認めた方が早く眠れそうな気がしたので、そのまま5時間の会議後に陛下から一言。

「本当にご苦労様。レイヴァス、あなたを侍従長にして良かったわ。明日の朝正式な任命式があるからそのつもりで」

周りの閣僚や官僚が驚く。あのミスレイア陛下がこんな優しいお言葉をお掛けになると……

まぁ、自分からしたらもっと寝かせてくれが本音だけどね!


どうも、第2話になります!レイヴァスの職務が暇なはずだったからミスレイア陛下からの無茶ぶりで激務に変わる瞬間は自分の学生時代を思い出しました。第3話もいつでも投稿できますがまだ緊張がほぐれてないので、落ち着いたら投稿していきます!ちなみにこの話での戦艦はかなり重要になってきます。

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