第11話:無期限外交条約の罠
少し長めになっております。自分の文章量調整が上手くいかず申し上げないです。もし読み切って頂けたなら幸いです!
自分は今国家元首様に抱き着かれ、月が沈むのを待っている。あんなに嫌ってる素振りを見せていたのに何故自分が……考えてもしょうがなく現時点までを振り返る。
1時間前、侍従長室寝室にて
自分は夢の中でチョコケーキとコーヒーを食べまくっていた。とても甘く幸せな気持ちだったが、砲弾飛来警報音で呼び起こされる。もう、すぐに陛下からの着信音だと気がつき、少し冷たく応えてしまう。
「はい、もしもし?」
「ごめんね、レイヴァス……ちょっと会いに来て欲しいの……でも嫌だよね……」
陛下がここまで下に出て、なおかつ泣きじゃくった声をしている。侍従長としての務めを果たすべきだ。ここで動かなければ侍従長としての名が泣く。
「すぐに向かいます」
「ありがとうレイヴァス……」
受話器を置いて、すぐに陛下に会う際の制服に着替えて、陛下の部屋まで猛ダッシュで向かう。本来城内では役職持ちは走ってはいけない。何故なら周りに何かあったと知らせるようなものだからだ。だがこの時間帯なら!!
すぐに陛下のいる帝国城の別塔へ向かい、警備をしていたエルメンド騎士団長は既に事情を把握しているようで、何も聞かず、自分はノックしてから、入ります。と言って入ると陛下はベッドの上で座りながら、ボソッと「レイヴァス……」と呟くだけだった。
「陛下……もしかして寂しかったのですか?」
日頃からかわれるので、少しだけ意地悪な質問をしたが答えは予想外だった。
「うん……あなたにとって、信頼という言葉は呪いだと分かってる。けど……今だけ言わせて……あなたを信頼してるからそばにいて欲しい……」
そう言われ、ベッドで抱き着かれ、今に至る。
陛下の頭を撫でてあげると顔を最近鍛えてる胸筋に埋めてくる。
「ちょっと硬いわ……」
「すみません……筋トレをしてるので……」
「でも……この硬さ……お父様によく似てるわ……」
ミスレイア陛下のお父様とお母様にはそう言えばお会いしたことがなかったな……ただこれは本人または信頼できるといったエルメンド騎士団長から話し始めた時に聞くとしよう。
「ねぇ、レイヴァス……今夜はここにいてね?」
「陛下がお望みならいくらでも」
自分的にも本気で返すと少し表情が和らぎ、ありがとう。と答えてそのまま、陛下は寝落ちしてしまう。
「はぁ、朝までどうするか……」
結局、自分も寝落ちして、目が覚めると自分が陛下を抱き倒したみたいな姿勢になっていた。
ヤバい……ヤバい……
ずくに起き上がると、腕を掴まれて、陛下の小悪魔笑顔を見せる。
「変態侍従長さん、幼き女王様を押し倒しちゃうなんて悪い子ね」
「すみません……寝落ちしてしまって……」
「まぁ、当然と言えば当然ね。許してあげるわ。さぁ、職務に戻りなさい」
「はっ!……また今度も甘えてもいいんで……」
ぬいぐるみのダイレクトアタックを食らう。
「バカ!昨日は気の迷いよ!さっさと仕事しろ!変態ワンちゃん!」
もはや、侍従長とすら呼ばれず、侍従本部に向かうとハレルオン副侍従長が書類を持ってくる。
「侍従長閣下、先ほど外務大臣と外交保安部など外交関係者とパラディンズ調査班がヴァンルデット連邦に向かったと報告がありました」
「後は彼らに託すのみか……」
ヴァンルデット連邦 紅い城 来賓会議室にて
「よく来てくださった!親愛なる帝国の方々。さぁ、席に座ってください。話したい事はこちらも想定しているので」
相手は連邦の首相だが私は外務大臣立場の差を弁えなくてはならない。
「ありがとうございます首相閣下。早速ですが……」
私は手身近に軍事演習の中止についてとパラディンズに関する脅威から双方の国民を守るために安全保障条約を結ぶ案を提案する。
「なるほど。そうでしたか。こちらの想定通りですね。実は侵攻を想定した演習はあなた方の協力を行動で紡ぐために行いました。誤解と不安を招いた事、誠に申し訳ない」
仮にも世界最強クラスの国家の首相が頭を下げる。
「実は我々連邦内で聖遺物が使用されました。『聖者の灰』と呼ばれる物です。吸血鬼が吸えば、灰になり、その灰も聖者の灰と化す。悪魔のような代物です。3000名の兵を犠牲にしてようやく鎮圧し、ガラスケースに保管してあります。私は書記長からこの話をして帝国がパラディンズに対して共闘姿勢を示せば首相のあらゆる権限を使えと命じられてます」
私はホッとした。この交渉は正直に言って自信がなかった。だが連邦内で聖遺物が使われ、3000名の屍の上で制圧し、事実上の国家の脅威としてるなら我々にも希望がある。
「では、我々帝国としては軍事演習地域を北上させて、緊張を解決しませんか?無論我々も国境線付近には軍を配置しません」
「えぇ、それくらいならお安い御用です。覇権戦争でわが国の優秀な将兵は失われ、どうしても実戦を想定した訓練が必要でしたのでそれも踏まえての侵攻作戦演習でした。改めて申し訳ない……」
頭をお上げください!と私は言い、こちらのパラディンズの情報も話す。
「12万名ほど抱えているのですか……しかも聖騎士達も……安全保障条約、ぜひ結びましょう。期間は無期限、条約発動中は国境線に軍隊を配置しない事を最重要事項として……いかがですか?」
「こちらは大歓迎です。その条約によりそちらの優位性を高めるためこちらも人間の領域との最前線にある我が帝国の情報網に入った物も可能な限り速やかに共有します」
「それはありがたい。記念に我が国の名産の血液カクテルで乾杯しませんか?」
首相の有り難いお言葉に感謝し、帝国の勝利を確信し、祝杯をする。
その後私はすぐにラインルート准将宛に最優先で結果を送るように陛下から申し上げられた通りに准将閣下宛に結果文を送る。
アルスヴァーン帝国海軍参謀本部にて
シガレットを吸いながら、ここ最近肺を悪くしないか心配だと思いながらも止められない自分を情けないと思いながら送られてきた文書を確認する。
「やはり、聖者の灰が撒かれたか……向こうに潜っていた頃に手に入れた情報通りだ……」
自分の拳を見て、事故で鉄骨が陛下と侍従長閣下に落ちた際に粉砕した時の記憶を思い出す。
「あのクソみたいな宗教団体で神々の力を借りる術を得れたのは運命か……裏切りの月と呼ばれ、一部国家トップ層しか私を理解しなかったが……報われたな」
そのまま私はヴァルツ海軍元帥に報告書を提出する。きっと喜びのあまり葉巻二本吸いするに違いない。あの方は葉巻と家族を愛するのだから。あと戦略は義務とも言っていたか。
だがその晩、元帥閣下に突然呼び出しを受けた私、ラインルート准将は閣下の怒りをほぼ抑えきれないレベルの「原文持ってすぐに来い」という知らせを受けて、大至急ヴァルツ閣下官邸へと向かった。
閣下愛妻家の一面からメンテナンスやお掃除が楽にするために普通よりも少し立派な程度の洋館に住んでいる。だけどいつ見ても丁寧に手入れがされており、そのまま衛兵も通してくれて、元帥閣下の執務室へ直行する。途中娘さんが夜にも関わらずピアノの練習をしているのは大変安心するものでもあった。
「閣下、失礼します」
扉を開けた時だった。すごい本数の葉巻を吸っており、何故ここまでの朗報なのに怒り心頭なのか全く理解ができない。
「准将閣下、本当に『無期限』なんだな?」
「はい、こちらの原文通りです」
ヴァルツ閣下は何度見直して……拳を机に叩きつける。
「こっちは完全に嵌められたな……クソっ……」
「一体どうして……そこまでお怒りに……?」
「分からんのか!?本来国際条約は期限付きかつ更新が基本だ!なのに無期限で通ったという事は期限がない。つまりいつでも切れるという事だ!私の一番弟子がそこに気が付かないとはな……」
ようやく閣下の意味を理解した時には、既に調印式が行われてる時間だった。
「陛下にはもう送ったのか!?」
「え、はい……」
「外務大臣の奴……打首になってもおかしくないぞ……」
十数時間後帝国城、ミスレイア陛下私室にて
「貴様、なぜ呼び出されたか分かるか?」
外務大臣は陛下の怒りを抑えた声に恐怖しながら答える。
「全く分かりません……無期限なら永久に安全保障条約を……」
「その無期限が問題だと言っておる!!期限がない以上いつ爆発するか分からない爆弾を背負ってるようなものだぞ!!」
外務大臣は泣きながらすみません……すみません……と謝っている。
「貴様の失敗は死で償ってもらう。これは悲劇かもしれないがこれから戦争が起きれば人数的には統計学の領域に入る。分かってるな?」
「私は……ただ民を……」
陛下は冷徹に答える。
「喋る許可は与えてはいない」
するとドアが開かれ、レイヴァス侍従長閣下が入室する。
「入室許可を出した覚えはないが?」
「申し訳ございません。陛下。条約文に違和感を感じたので……やはり……」
外務大臣は泣きながら許しを乞うている。
「陛下、大臣の処分は?」
「彼女1名の処刑で終わりだ」
自分は大臣を見つめながらつぶやく。
「無期限安全保障条約の調印式の際に連邦側がやたらと好意的ではありませんでしたか?」
「は、はい……なので私達も戦争したくない気持ちは同じだと思って……」
「陛下、愚考を承知で頼みます。彼女に一旦釈明の余地を」
「1分だ」
陛下は即座に答えた。
「私自身、覇権戦争で家族や親戚を失いました……ですから永久的な平和と無期限の平和は同じだと考えてしまい……そして何より安全保障条約を結べば帝国の未来があると信じたまでです……」
自分は彼女の過去も知った上で陛下に再び具申する。
「陛下、彼女は優しさ故の無期限安全保障条約に調印してしまったと見るべきです。陛下と同じく民を守るために。そう考えれば処刑は適切ではないかと。公職追放と辺境地送りで済ませれば他の閣僚達を恐怖で従わせる必要もなく、命までは取られないという安心感の元で働けます」
陛下は黙ってから一言。
「外務大臣の任を解く。その後は国境沿いのアルファン村送りだ」
外務大臣は感謝の言葉をずっと述べながら退室する。
「レイヴァス」
「はい……」
「あなたって優しいわね。老後は詐欺に引っかかるんじゃない?」
「それも人生の勉強ですよ」
陛下はクスクスと笑って、自分の肩に手を置く。
「後始末の会議だ。着いて来い」
「承知致しました」
そのまま外務大臣は解任され、内閣側も妥当と判断し、序列3位の外務政策参与が外務大臣になった。もちろん副大臣は抵抗したが賄賂疑惑が浮上していることもあり、今回は見送るとだけ伝えられた。
「会議お疲れ様、レイヴァス。この後は陸海の元帥と会議よ。少しだけ大変かもしれないけど出来そう?」
最近陛下がやたら自分の体調を気にしてくるので隕石でも落ちるのかと思いながら「問題ありません」と告げて、陛下の許可した者のみ入室可能な会議室で4人の会議が始まった。
「ドルヴォーフ陸軍元帥も既に把握してるな?」
「はい、外務大臣の責任は大きく、我々のプランは大きく変更を余儀なくされるかと」
すると珍しくシガレットを吸うヴァルツ閣下が一言。
「国家総動員法はもはや避けられない事態となった。連邦の事だ。パラディンズの排除で疲弊した我々を後ろからハンマーで殴り、同時に人間連合軍から顔面キックを食らう。簡単にK.O.されるだろうな」
ドルヴォーフ閣下は珍しく有名な安酒に手を出して、酔って誤魔化そうとしてるのか……?
「はぁ……ヴァルツ。俺とお前の仲だ。はっきり俺に望むことを言え」
「国境線から30km地点に305mm自走榴弾砲をありったけ配置しておけ。同時に民間人住宅には数千名程度の兵士を隠れさせて時間を稼ぐ。レイヴァス侍従長閣下、今年度の海軍軍事予算の残りはいくらか覚えているか?」
自分はすぐに鍵付きのメモ帳を開き、答える。
「75億リレンです」
「最新型の駆逐艦も作れない額だな。ドルヴォーフ、そちらは時間を稼げるだけの砲門は用意できるか?」
「305mmは戦場の主役だ。200門ある」
「では、40億リレンで500門まで増やして10億リレンで砲弾をありったけ作れ。残りは工業生産能力増強だ」
ドルヴォーフ閣下は驚きを隠さなかった。本来自分の部署の予算を他部署に渡すなど御法度もいいところだ。
「いいのか?」
「陛下次第だな」
陛下も頭を抱えながら、特例で許可する。と告げて、会議は終わった。陛下が真っ先に退室したらドルヴォーフ閣下が耳打ちをしてくる。
「1週間後は陛下のお誕生日です。プレゼントをあげるときっと喜びますぞ」
そう言って、サムズアップして去っていった。安酒に酔っているのだろうか。だけど陛下への誕生日プレゼントか……あの子に聞いてみるか……
黒井冥斗です。無期限条約の罠…恐ろしいですね。もし自分が外交大臣だったら多分やらかしてます笑
ここまで読んだ読者様なら薄々勘づいてるかもしれませんが連邦との戦いがいつ起きてもおかしくない状態に来てます。人間連合はきっと今度こそ勝つために念入りに準備をしてるかもしれませんね。それではご拝読ありがとうございました!続きも書いてあるので今夜はそれがラストになります!




