第1話 帝国からの呼び出し
1人の調華師が帝国に呼ばれた。
「調華師【精霊の息吹】 師シンシ・ヘルネウスより代を譲り受けましたシュウ・ヘルネウスと申します」
白髪に薄い紫の瞳、透き通るような白い肌、少年のような少女のような中性的な見た目のシュウは師が病に伏せり齢15にして代を継いだばかりであった。
〚面を上げよ 調香師ヘルネウス〛
呼びかけたのは12代帝王オランジュガルベラである。
『そなたを呼び出したのは他でもない調華師の能力を買っているからだ 15にしてすでに師の力を超えた能力者…と聞き及んだからだ』
シュウは生まれつき華の能力を引き出す力が強かったらしい 師の元で鍛錬を続け10歳にして師の能力を超えてしまった。
『その能力を見込んで我が息子に華を付与してもらいたい』
「?」
シュウは疑問に思った。
確か皇子は17のはず、ならば元服の時にすでに付与されているはず 兵士の才がなくとも帝王の血を継いでいるのであれば最低でも1体の妖精は持てるはず。
『息子は体質的に妖精を持てなくてね 名だたる調華師に付与してもらったが3日と持たず妖精は朽ちていった』
確かに己に合わない妖精を身に付ければ反発しあってやがて妖精は力を失い朽ちていく、だが帝王の血を受け継ぎながら1体も持てないのは前例がなかった。
『元服の儀には儂の妖精で代用して事なきを得たがいつまでも隠し通せるものでもない、現に一族の者には勘付いて後継者として名乗りをあげる者も出ている』
このまま皇子ではなく別の血族が後継者となっても遜色はない、今までも実力のある者が即位してきた12代がそうであったように…
しかし血筋であるにも関わらず妖精が持てないのは前例がなかった、他の一族の笑い者にされるか不義の子として后もろとも処刑されるかもしれない。
『儂とて息子は可愛い…生き恥をさらす人生を送ってほしくはない!ましてや不義の子として死なせるなど!!
妻は自分のせいで能力が持てないと嘆いておる!
どうか 調華師よ!そなたの力で息子を救ってくれ!』
「分かりました、どこまで出来るか分かりませんがやってみます(こんな秘密聞いて断ったらヤバイ事になりそうだし)」
『息子の秘密を明かせば死ぬ血の契約を結んでもらう 今までの調華師もそれで緘口している そしてこれからはこの屋敷で生活してもらう そなたの師には良い医者を付けよう』
《やっぱり ヤバイ事になったな 師匠は人質ってわけね…》
こうしてシュウは帝国の後継者争いに巻き込まれるのであった