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夜明けの環  作者: リィーヴ
旅立ち編
9/10

9.約束という名の鎖


「ねぇ、君は約束したよね。あの娘の責任を取ると。仇を取ると。」


「…ああ。したさ。でも、何故それが今出てくる。」


「どうやって?」


「どうやってもだ。…人の話聞いてるのか?」


「なら、これからは何をどうするの?いつになったら果たす事が出来るの?」


「それは…」


「レイ、君はまだ、スタートラインにも立っていない。それは、君も知っているはずだよ。」


 まだ、決心できないのだろうか。

 私は、レイの正面に立ち、深く息を吸う。

 シエルは、静かに私たちを見守っている。



「…君はさっき、この世に死んで良い人間などいないと言ったね。それは、人を殺した人間にも、子供を捨てた親にも、同じことが言えるの?」


「もちろん、言えるさ。」


「なぜ?」


「…」



 風が少し、冷たくなってきた。もうすぐ春になるとはいえ、まだ夜は肌寒い季節だ。

 空も、少しずつオレンジ色になってきている。

 レイは、人の目がなくなると、いつも髪にかけている変色魔法を解く。

 だからか、今ここにある光全てを、彼の銀髪の髪は反射する。

 まるで、どんな色の影響も跳ね除ける様に。



「…人には、必ず生まれた意味がある。命に理由が、価値がある。たとえ、人を殺した悪にもも、子を捨てたようなクズにも。」



 レイは一度、話を切る。

 彼もきっと、立ち向かわないといけない壁がある事を知っている。



「もちろん、それらの人間は、死するべき罪がある。けれど、その人にも母親がいて、彼らの行いのおかげで救われた人もいるかもしれない。…さっきの男だって、たくさんの依頼をこなしてきた。人を、救ってきたはずだ。」


「…綺麗事だね。」


「ああ、綺麗事だ。」


「もし、君のその答えが、誰かを傷つけてしまっても?」


「当たり前だ。誰にとっても正しいこと。それが、綺麗事だ。何か悪いか?」


「…いや。」



 ーー君は、どこまでも君だね。


 

 私は、小さな声で呟く。

 本人もわかっているじゃないか。

 なら、私が言えることはただ一つ。

 そして、手のひらをレイに向けて差し出す。

 


「アズトレイカ·ルス·へオース。君はこの名を拾うことができる?」



 沈黙が流れる。

 レイは、とても驚いているようだ。怒っているような、困惑したような表情をしている。

 なぜ、私が知っているのか、とでも言いたげだ。



「君に出会うときから、知っていたよ。知っていたから、君に会いに行ったんだ。」



 少しずつ、夜に向けて辺りが静けさを纏い始めている。



「さあ、どうする?私は、君の背中を押すことを約束した。だからもちろん、それは果たす。けれど、君はどう約束を果たす?」



 私は、レイの正しさがわりと好きだ。彼自身の正義も、正しさも、全て青空のように広く、澄みきっている。

 それは、誰もが持てるものではない。


 だから、どうか、足を踏み出してほしい。

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