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夜明けの環  作者: リィーヴ
旅立ち編
8/10

8.真の対戦


 男は、あっさりと私の申込みに承諾した。

 きっと、私のような女に負けることはないと確信しているのだろう。



「本当に大丈夫ですか?僕なんかのために。」


「大丈夫。丁度良い機会だしね。」


「…機会?」



 対戦は、武器屋の奥に設置されている対戦広場で行われる。

 武器屋にいた客のほとんどが見に来ている。

 そりゃ、武器を必要としている冒険者ばかりの店だ。関心があるのは当然のこと。


 私は、ずっと羽織っていた紺色のマントをシエルに預ける。



「二人ともしっかり見てて。…これが真の対戦だから。」



 広場の中央へと足を進める。

 この一騎打ちは、どちらかが戦闘不能になれば終了だ。そしてそこに、生死は問わない。

 そう、先程のランクアップ試験とは全く別の対戦だ。

 

 モノを賭けた対戦には暗黙のルールがある。

 戦闘不能なんてものじゃない。どちらかが死ぬことが当然の対戦。

 それが、この世界のルールだ。

 

 

「嬢ちゃん。降参するなら今のうちだぜ。」


「その必要はありません。あなたこそ降参するなら今のうちですよ?」


「はっ!大人をナメんなよ?」



 審判の旗が下がる。





 












 ーー「死んだのか?」



 周りで見ていた客が発する。

 私の目の前には、男の剣の先端がある。おそらく、あと数ミリで私の目に刺さるところだ。

 だが、そこで止まっている。


 男は、私の氷結魔法により体のいたるところに氷の柱が刺さり、剣を私に突き出した状態で動きを止められていた。

 そして、どくどくと血が流れ落ちる。


 男は、死んでいた。


 凍りついたように辺りが静かになる。

 だが、それも一瞬の出来事で、またたく間に歓声が鳴り響く。


 ーー目に見えない速さだったぞ!


 ーーあの女、一歩も動かずに殺したぞ!


 ひそひそと、称賛の声も聞こえる。



「いやー、久しぶりにとんでもないモノを見せてもらったよ。これは、その礼として受け取ってくれ!」



 私は、店長から杖を受け取り、レイとシエルの元へ戻る。そして、マントを羽織る。

 固まっている二人を店の外へと促す。


 そろそろ、時間だ。

 私たちは、人通りの少ない国の塀の辺りに向かった。

 その間、二人は何も話さなかった。



「…何で殺した。」



 沈黙を破ったのはレイだった。いつもより低く、怒りの満ちた声だ。



「何でだと思う?」


「何でだと!?殺す必要は無かったはずだ!あの対戦にそんな決まりはないっ!」


「でも、あの男を殺さなければ私も死んでいた。それに、男も私を殺す気だった。」


「…っ!それでもだ!お前ならなんとか止められたはずだ!」


「そうですよ。わざわざ殺す必要はないはずです。」


「…そうね、私なら止められた。」


「ならっ!」


「相手を殺さなければ自分も死ぬ。それが、真の対戦であり、本当のルールだ。私が男を殺して批判する者が一人でもいた?皆もそのルールが当然のものだと知っていた。だから、逆に、生かしていたら、周りの人間に私が殺されてしまう。」


「…けど、俺は違う。誰も批判をしなくても、俺はする。この世に死んで良い人間なんていない。あんなの、真の対戦じゃない。死ぬのが当然なんてものはおかしい。」



 レイは人の死を嫌う。とても酷く。

 それは知っている。

 けれど。

 けれど、これが、、



「「これが、今の世界の掟だ。」」

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