7.つまらない男
魔法使いにもそれぞれ、属性と魔法使い自体の二種類のレベルがある。
もちろん、モンスターほどわかりやすく選別はされていないが、初級魔法の威力とどこまで上級魔法を使えるか、応用魔法の精度など、様々な評価基準がある。
魔法使いのレベルは、1〜10まで。その中で、シエルはレベル3くらいはあるだろう。
ちなみに、レイはレベル5くらい。私は、計ったことはないが、おそらく二人以上ではあるはずだ。
レベル3自体は低いが、シエルは土と金魔法に特化している。おそらく、属性レベルでは6か7くらいはあるはずだ。
だから、土と金魔法に強く、尚且つ短剣と併用できるように手軽の杖が好ましい。
ふと目をやると、30センチほどの細い杖を見つけた。素材は木のようで、2本の枝が捻れているようだった。さらに、先端には夕焼け色の魔石がはめ込まれている。
この杖は、魔石によって支配されている。すなわち、小さくとも、自我を持っている。
故に、杖が主を選び決める。
魔石の一部は、モンスターのコアから生成される。強いモンスターであればあるほど、生成される魔石は強くなる。
そして、稀にモンスターの自我を失わない物もある。
この杖は、とても希少なものだ。
さらに、都合いいことに、この杖はきっとシエルを受け入れる。シエルの使う土魔法に属性が適正する。
これにしよう。
私は掲示してある杖を取ろうとした瞬間、後ろから大きな声がかけられた。
「よう、嬢ちゃん。人のものを取るなんざ、教育がなってねぇな。この野郎。」
私の事を言っているのだろうか。
振り返ると、そこには明らかにガラの悪いゴリマッチョの男がいた。
またもこういう奴に絡まれるのか。私の運も悪いものよ。
「失礼ですが、こちらの商品はまだ誰のものでもないと思いますが。」
「ほう、俺の目を見て言い返すか。だがな、その杖はずっと前から俺のもんだって決まってんのさ。この野郎。」
「…それでしたら、こちらに出品されていないものかと。」
男はひたすら私を睨んでいる。
こんなゴリマッチョがちまちまと魔法を使うのか?というか、店の物を俺のものと言い張るとは、何ともクズ感が溢れ出ている。
「お、お客様!申し訳ございません。以前から申しておりますように、当店は、商品の購入は現金のみの交換となっておりますので、予約販売や相応の現金をお持ちでないお客様にお売りする事はできないのです。ど、どうか、ご理解くださいませ。」
「あぁぁん?!んなことは、どーでもいいんだよ。杖は俺を選んでんだから俺のもんだって決まってんだよ!この野郎!」
どうやらこの男、この野郎が口癖な上に杖に選ばれたと勘違いしているらしい。
だが、杖に自我があることを見抜いている、ということは相当なやりてかもしれない。
それなら、簡単だ。
丁度、店員も他の客もこの男に迷惑している。
やることは一つ。
「でしたら、私と一騎打ちしません?その杖を賭けて。」