6.新しいもの
その後、私達は、課題の結果無事にランクを上げることができた。
そして、しばらくの間街で噂になったのだ。内容は、7年ぶりに人体戦である第2の課題をクリアした化け物が現れた、らしい。
逆に、これをクリアできずにランクAやBを名乗っている者が多いということだ。
実際のところ、レイとシエルは12人中10人に勝つことができ、ギリギリのクリアでランクEからランクBへ。私は、超余裕で12人中12人に勝ち、ランクFから一気にランクAまで上がったというだけで、ただただ課題をクリアしただけだ。
だが、ここまで飛び級のランクアップは、相当異例なようだったらしく、対戦前と後じゃほとんどの冒険者たちのこちらへの態度が変わった。
それが今では清々しい。
けれど、私は最下位ランクからの出世レベルだが、レイとシエルはランクB止まりと、伸びがいまひとつのようだ。
「完全に調子に乗ったね。」
「そ、それもそうかもしれないけど、リオがおかしすぎるんだって。」
「いーや。これなら勝てるかもって相手をなめた君たちがおかしいの。練習が足りてないね。」
「いやいやいやいや、リオ姉。その場から一歩も動かずに12人相手に勝つ方が、よっぽどおかしいですよ!むしろ、怖いです!」
「そうだよ、リオ。お前がおかしい。」
「…もう。みんなして私を変人扱いして。」
だって、あまりにも相手が弱すぎて、その場から動く必要さえ無い戦いになってしまったのだ。そう、相手が弱すぎるのが悪いのだ。
対戦後、受付員は顔を真っ白にさせながら、ランクアップの手続きをしてくれた。
白すぎて心配になるほどだ。
まぁいい。
とりあえず、その手続きのたときに、自分の使用武器の登録もしなくてはいけないらしい。
私とレイはそれぞれ持っているが、シエルのものは下級品で、今のシエルの魔力に対して器が小さすぎる。
ということで、シエルの杖を買いに、武器屋に来ていた。
「どうせ近距離戦もできるなら、短剣ぐらいでも買っておけば?」
「そーね。せっかくだし、お金も沢山あるし、実力に見合うものにしようか。」
「いいんですか?せっかく集めたお金なのに、僕なんかの為に使ってしまって。」
「いいんだよ。どっかの誰かさんが、コアを大量に売っちまったんだからさ!」
「…そうですね。そうします!」
二人とも完全に、私の事を弄っている。
そりゃ、家一つ分くらいの広さの亜空間でさえも、いっぱいにしてしまうほど量のあったコアを、全て売ってしまったのだ。
根に持っている事は確かだ。
それにしても、根に持ちすぎている。
私はそれとなくそっぽを向く。
武器屋は、多くの人で賑わっていた。
この国一番に大きく、多くの種類の武器を取り扱っているそうだ。
短剣は、レイが一緒に選んで上げているようだ。
さすが、剣の使いだ。
なら、私は杖を探すとしよう。