4.課題
あの初実戦から何ヶ月か経った。
はじめは弱々しく、自信も無かったレイとシエルは凄まじい成長を遂げていた。
今までは二人掛かりで倒していた上級モンスターも、一人で倒すこともできるほど、とにかく強くなっていた。
だが、この世の中はそう甘くはない。今、さらなる壁が彼らの前に立ちはだかっている。
そうそれは、ランクアップ試験。
それを受けなければ、強いとは認めてもらえない。
私たち冒険者にはS〜Fまでの7つのランクがあり、それぞれのランクを上げるためには、いくつか方法とされる課題がある。
1.各レベルの依頼を50以上達成すること。
2.自分のランク以上のランクの冒険者と12回の対戦で10回以上勝つこと。
3.各ランクで指定されているモンスターのレベル以上のモンスターを75体倒し、全てのコアをギルドに持ってくること。
これらの中から一つでも達成できれば、ランクを上げることができる。
もちろん私達は依頼なんてこなしていない。故に、第1の課題は当然達成できない。だから、必然的に第2か第3の課題が条件になるが、、
「…はぁ、何で全部売っちゃうかな。」
「だって、お金足りないし。そもそも知らなかったし。」
私は口を尖らせてぶつぶつと言い訳をする。
私達はランクを上げるためにギルドを訪れていた。
本来であれば、今までの訓練で倒したモンスターたちの核を提出すれば、第3の課題はクリアできたはずだった。しかし、ランクを上げるための課題があることを知らなかった私は、全てのコアを売ってしまったのだ。
(コアは、武器や防具など、あらゆる道具の材料になる。そのため、モンスターの大きさやレベルにもよるが、売ればそれ相応の額で返って来る。)
「ま、まあ。良い経験になるんじゃない?第2課題でも。」
「…知ってるか。ここ数年、第2課題を突破した奴は誰一人としていないぞ。」
「…大丈夫!みんな強くなったし!」
「それもそうだとは思うんですけど、ただ、凄いんですよ。相手の冒険者たちが。」
「そんなに強いの?」
「はい。それに…少し言いにくいですが、“ズル”をする人がたくさんいるんです。」
「じゃあ、尚更良いじゃん!」
ということで、私達は第2の課題をレイ、シエル、私の順で受ける事になった。
レイとシエルはランクE。私はランクF。そのため、相手はこのランク以上の12人だ。
この国に冒険者は700人ほどいるらしく、すぐに人は集まった。
パーティ全員で相手役を引き受けてくれる人もいる。だからか、何だかニヤニヤと話し合っている団体が多い。
耳をすましてみると、どうやら作戦を立てているらしい。
――一対一だというのに作戦か。
なるほど。シエルの言う“ズル”というのは、先輩冒険者として、謎のプライドを持った輩が第2課題でランクを上げようとしている後輩の私たちのことを良く思っていないということが原因のようだ。
よっぽど面子を潰されたくないのだろうか。
まぁいい。そんなことは関係ない。
受付員に案内され、裏の競技場に出た。そこは、円形闘技場になっており、客席もある。
第2課題を受けるのが珍しいからか、客席には何人か人がいる。
「レイ。思う存分打ち込んでおいで。」
「…当たり前だ。」
そう言い残し、レイは舞台へ進んで行った。