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夜明けの環  作者: リィーヴ
旅立ち編
3/10

3.リスタート〈2〉


 私は、突進してくるパイアに向かって走り出す。同時に、髪に刺さっているエメラルドグリーン色のの簪を取り、手にかざす。すると、全く同じ色の細い剣にに変わった。


 衝突する寸前でパイアの頭上にジャンプし、空間魔法を展開する。完成した陣に剣を突き刺すと、パイアの両目の前に複製、転移し、刺さる。

 


 ――鳴き声で耳が痛い。



 先程よりさらにパイアは興奮し、暴れだしたが、だんだんと動きが鈍くなっていってる。

 シエルがしっかり魔法を使えているようだ。足元がぬかるみ始めている。

 的を定めた私は落ちるのと同時に鼻に剣を刺してやった。

 これでパイアの目と鼻の脅威は無くなり、私の役目は終わりだ。

 暴れだす前にまだ倒れていない木に飛び移る。

 あとはレイとシエルだ。


 魔法は、展開する範囲と強さによって陣の完成する速度と魔力の消費量が変わる。

 普段、水を出したり、風を起こしたりと生活魔法しか使っていなかったシエルからしたら、あのパイアほどの陣の展開には時間がかかっている。

 それに、いくら肉体を鍛えて魔力量が増えたとしても、かなり辛そうだ。


 これは今後の課題だな。

 シエルの魔法が完成すると、パイアは完全に足元が陥没し、固められて身動きが取れない状態になっていた。



「兄貴!今です!」


「おう!」



 レイはシエルの合図によって隠れていた茂みから剣を持ってパイアに向かって走る。その剣には炎を纏っていた。

 火炎魔法で、強化したようだ。


 レイの剣に関しては、申し分ないくらい扱えるというのに。なぜ、あんなにも実践経験がないのだろう。



「はぁ!」



 スパンッ!



 作戦通り、パイアの脚はレイによって綺麗に切られ、横に倒れた。もう牙を突き刺すことも、走ることもできない状態だ。

 なんかもう、その姿は見ているこちらがかわいそうな気持ちになってきてしまう。


 だが、ここまでで一つ疑問がある。

 上級モンスターにも関わらず、なぜモンスターは私達に魔法を発動させなかったのだろう。これではまるで、本当にただのイノシシと変わりない。

 私が今まで戦って来た上級モンスターたちは必ず魔法を使う。けれど、パイアは魔法を使わなかった。

 まあ、この世界にはまだ私の知らないモンスターはたくさんいる。実のところ、パイアを見るのも戦うのも今日が初めてだ。それに、時代の流れというものもある。だから、わからないことがあっても当然なのかもしれない。



「…オ。…リオ!何ぼーっとしてんだ?」


「あ、ごめん。考え事してた。…じゃあコアを取るとしますか。場所はわかる?」


「あそこだろ。普通に、心臓があるとこらへん」


「えぇっ!よく分かりますね。さすが兄貴。」


「まぁな。あそこだけやけに力集まってるからな。」


「…正解。じゃあ、壊してこーい。」


 へいへい、と言いながらもレイは的確な一本でコアを剣で貫いた。


 コアとは、人間で言う心臓だ。

 そこにはどの部位よりも生命力や魔力が集まっていて、もちろんそれが破壊されれば、モンスターは死んでしまう。だが、モンスターのコアは人間を含む普通の生き物とは違い、体内のあらゆる位置に移動ができ、力自体を隠す事が出来る。

 だからというもの、戦いながらその位置をすることは、たとえレベルAの人間でさえ容易ではない。

 だが、レイは相手が身動きが取れない状態ではあるものの、一瞬でコアの位置を言い当て、更に一回で壊した。


 ――やはり、レイは良い眼を持っている。



「お疲れ様。初めてにしてはなかなか良かったね。けど、私が手を貸してるようじゃ、まだまだだねぇ。」


「おいおい。そんなこと言ったって、相手は上級モンスター様で、俺らはレベルEだぜ?逆によく倒せたよ。」


「ホントですね。ですが、リオ姉の言う通りしっかりと身体を鍛えると、魔力の質量も出力も随分と変わるものなんですね!ビックリしました。僕でもあんなに大きくて強い魔法が使えるなんて。」


「だから言ったでしょう?」



 私はフンッと腕を組んで見せた。



「…なんかイラッとすんな。その顔。」


「…へぇ。そう。随分と体力が有り余っているようで。じゃあ、今日は帰ってから腕立て500回かな?」


 ニタァっと笑ってみると、今にも死にそうな顔で二人は遠ざかっていく。相当嫌らしい。

 フッと私は笑う。つられて二人も笑っていた。

 けれど、出会ったときと比べて、二人とも強くなった。この調子で行けばレベルAもそう遠くないのかもしれない。それと同時に、今のこんなにも平和な日々がずっと続けばいいのにと願わずにはいられなかった。


 彼らには、これから先、さらに過酷な日々が待っている。出来れば、彼らにそんな日々を送ってほしくはない。

 けれど、歩み進まなければいけない。

 彼らのために、願いを叶えるために。…約束のために。

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