表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けの環  作者: リィーヴ
旅立ち編
2/10

2.リスタート


「おい、勝手に閉ざすな!くそっ、シエル無事か?」


「大丈夫です。兄貴。パイアは?」


「どっか行ったらしい。」


「…間一髪でしたね。」



 なんと、二人は生きていた。ギリギリのところで踏まれずに済んだらしい。



「やあ、二人とも。気分はどう?」

 

 

 ジロリ。

 私は目を咄嗟に反らす。

 少し、やりすぎたかな。けど、どうしても口元が緩んでしまう。



「笑ってますが、リオ姉さん。」


「き、気のせいじゃない?」


「…シエル、ちょっと耳貸せ。」



 何の話をしてるのだろう。

 コソコソと二人で会話をしている。盗み聞きをしようと思えば出来るが、、やめておこう。何だか楽しそうだ。

 話が終わったのか、二人は私のいる木に登ってきた。そして私を間に挟んで両腕を掴む。



 ―――ん?



「ど、どうしたの?二人とも。」


「いや?ちょっと気合の入れ直しに。」



 もしかして、、

 シエルが空いている方の手で魔法を発動させる。この紫色の陣は、音魔法だ。



 ―――キィィィィィン


 両腕が使えない今、耳が塞げない。私は、咄嗟に防音魔法を自分に使う。

 しばらくすると、地面が少しずつ揺れ始める。

 まさかの、まさかだ。

 二人は再びパイアを呼び寄せ木に突進させることで、私を道連れにしようとしてるらしい。


 ―――どどどどどっ


 何だか、さっきより音が重い。

 二人は、なんか噛み締めてる。怖いならこんなことしなければいいのに。そこがまたかわいい。

 遠くから徐々に奴が近付いてくる。


 ―――どどどどどどどどどどっ!


 ドスッ!!


 目の前に現れたパイアは、私達のことには目もくれずに木をなぎ倒す。

 だが、私は気が倒れる寸前にパイアの頭の上にに瞬間移動した。

 あぁ、随分と大きくなっちゃって。

 私は、パイアより少し大きい透明な結界で閉じ込めた。



 ―――ふぅ。



 さてと。

 倒された木の下で伸びている男二人に目をやる。

 どうやら、作戦は失敗だね。



 「おーい。生きてる?…えいっ。」



 私は、水をかけてやった。



「ぷはっ!ゲホッ、おい、リオ。何故逃げる。」


「いや、逃げるでしょ。普通。」



 しばらく私とレイはにらみ合うが、私はついに耐えられなくなり、吹いてしまった。



「ぷっ。ふふっ、ふっはははっ!」


「…リオ姉、頭大丈夫ですか?」


「ふふふっ、君らよりは、大丈夫よ、ふふっ。なんか、拍子抜けでさ。」


「何がそんなに面白いんだよ。」



 こんなにも腹を抱えて大笑いをしたのは何年ぶりだろう。とても気分が良い。

 レイもシエルも不思議そうに、けれどどこかふてくされた様な顔で私が落ち着くのを待ってくれた。


 

「いやー、ごめんて。何だか面白くって。」



 私は涙を拭いながら言い訳をする。

 この優しい二人だから何だか安心する。



「…まぁ、いいけど。で、あいつどうしてくれんだよ。」



 レイが指を指した先には、先程私が閉じ込めた大きなパイアがいる。どうにか外に出られないかと暴れている。

 どうしたものか、私だったら一撃で仕留められてしまうが、二人に倒してもらわないと意味がない。



「そもそも、まだランクEの俺らが倒せるモノじゃないと思うが。」


「まあ、ね。けど、ランクEの受けれる依頼なんて薬草集めとか、下級モンスターの討伐くらいしかないから特訓にならないんだよね。」


「下級モンスターからじゃだめなのか?俺らランクEだけど。」


「…何を言ってるの。上級モンスターをランクEの君たちが死ぬ気で戦い、倒すから、ランクは上がるのだよ。」


「死ぬ気って、最悪死にますよね、リオ姉。」


「死ぬけど、本当に死ぬときは私が助けに行くよ?」



 はぁ。

 と、二人してため息を付かれた。



「リオ、お前は強いが俺らは弱いんだ。あんな強いの相手に手も足も出ねえ。そもそも戦いにならないんだよ。」



 随分と弱気だ。

 仕方ない、ここは指導者としてしっかりとこの弱虫共を指導してやらねば。

 私はまたもニヤッと笑ってしまった。



「…よし、じゃあ第2ラウンドと行こうか!」


「人の話聞いてた!?」


「聞いてたよ、もちろん。だから、今度は私も手伝ってあげるよ。私が手伝うからには、倒せるよね?(キラッ)」



 二人の表情が一気に恐怖に変わり、コクコクとうなずく。

 そんなに私は怖いのだろうか。だがまあいい。そんな事よりも、目の前の問題が先だ。



「いい?強い敵を倒すには相手の強みと弱みを見極め、弱みを攻撃するしかない。パイアの強みはなんだと思う?」


「…あの大きな牙ですか?」


「そう。他には?」


「…」


「脚。速く走ることのできる脚。あれがあるから牙の破壊力はさらに強くなる。覚えておいて、強みには必ずそこに至るまでの段階がある。それをあぶり出しなさい。そして弱みは相手を見つける目と鼻。これは、ほとんどのモンスターに共通してるからわかりやすいと思う。」


コアは?」


コアは、どの生き物に対しても最も大事なものであり、モンスターはその場所を体内のどこかに移動することができる。そう簡単には見つけることも、潰すこともできない。だから、周りの鎧から破壊していくの。…教えてなかったっけ?」


「…初めて聞いた。」


「あら、そりゃ倒せないわけだ。」


「おい!」



 そのくらいは知ってると思っていたが、どうやら本当にこの二人は初心者らしい。

 一体今までどうやって生きてきたんだか。

 でも、まあここ最近はひたすら身体を鍛えまくっていたから無理もないか。



「まぁまぁ。とりあえず、結界を解いたら、私が目と鼻を潰す。それだけでかなり暴れだすはずだから、シエルは土魔法で脚を捕まえて。レイは捕まった脚と牙を切って。コアはそれから探す。魔法でも剣でもなんでもいいから。いい?」


「…了解。」


「じゃあ行くよ。三、ニ、一。結界解除!」



 ブギャァァァァ!!



 さあ、そろそろおさらばと行こうか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ