第1話 クエスト
冒険者国家【グランデュオ】
数ある国家の中でも、軍事力が驚くほど高いことで有名な国家である。
なぜなら、この国の住人のほとんどが冒険者であり、兵士でもあるのだ。
勿論、まだ幼く、冒険者の資格を持っていない子供やもう戦うことができない年寄りなどもいるが、冒険者国家とあるように国民の9割が冒険者だ。その冒険者たちが戦争になれば、特別な事情がない限り兵士として駆り出される。
無論、国王を護衛するための近衛兵など最低限の兵士はいるにはいるが、それでは戦力として心許ない。
なので戦争になると冒険者ギルドに対して緊急依頼という形で冒険者達を兵士として扱う、そんな国である。
そんな国の中で今ある噂がまことしやかに囁かれていた。
「おい、光と闇の勇者って聞いたことあるか?」
「あぁ、なんでも若い男女の凄腕パーティなんだろ?」
「そうだ。ただそれ以外何もわかっちゃいねえんだよ。ただ、わかっているのは若くして最強の名を手に入れた二人だって事くらいだ。」
「おかしな話だよな、そんだけ強けりゃもうちっと目立ってもいいのに。」
「だよな〜、でももしいるんだったら一度お目にかかりたいぜ。」
そんな噂話をしている彼らがいるのは、グランデュオの中でも少し辺境にある、とある村の冒険者ギルドである。
ここはあまり強くない魔物が近くに湧くため、初心者向けの村として、辺境でありながら中々の規模まで発展した村、というよりほぼ町に近い場所である。
この二人もまた、冒険者成り立てのビギナーで、今日は昼間っから酒を煽っていた。
そんな話をしていると、静かにギルド入り口の扉を開け堂々とした佇まいでクエストボードへ向かう、二人の若い男女が目に入った。
「おいおい、そんな若えのに冒険者なんかやってんのか?悪いこと言わねえから家の手伝いでもやって平和に暮らしといたが身のためだぜ?」
そう二人に忠告したのは、ここら辺りでは有名なC級冒険者のギースという名の、ガタイのいい中年のおっさんだった。
「ユーリー、なんかあの人がそう言ってるけど私達に言ってるのかな?」
「さぁ、確かに俺らはまだ若いかもしれねーけど、流石にC級の冒険者に忠告されるほどヤワじゃないし、違うんじゃねーの?」
少女の名はリーシェ。見れば思わず目を引く綺麗な金髪に、くりっとして可愛らしい瞳。鼻は高くスッと通っており、唇は思わずキスをしたくなるほどに透き通っている、まさに完璧美少女。
対する青年の名はユーリ。黒に少し青みがかった髪色で普段から手入れをしてないのか少しボサッとした印象を受ける。しかし顔立ちは整っており、目は少し釣り目だが綺麗な紫色の瞳をしており、鼻、口にいたってはリーシェのそれよりも、人によっては美しく感じる程には整っている。
所謂こちらも完璧美青年だ。
そんな二人が、この辺では有名なギースの言葉を無視とも取れる態度で返し、さらにユーリにいたっては挑発とも取れる発言をしたのだ。嫌でも周りの目を引く。
「おいおい、こっちは親切心で忠告したってのになんだぁ?その態度は。」
ギースも少し苛立っている様子である。
「まあ、いいや。リーシェ、このクエスト受けるぞ。」
「あいあいさー!今日はどんなのー?」
「見てみろ、ここいらで暴れまわってる危険度Aの魔物だ。話によればなんでも新人がこいつに何人もやられてるとか。そりゃ緊急で依頼も回ってくるわな。」
「ぇー、でもたかだかAランクじゃん。ここの村ってそんなに冒険者いないのかなー。」
「ちげえよ。純粋な戦闘能力の高さが低い冒険者しかいねんだ。しょうがないだろ、新人が育っていくための村なんだから。」
「そーだね、なら私達でさっさと倒して今日はゆっくり休も〜」
「ああ、そうしよう。」
「お、おい!ちょっと待て!」
「「ん??」」
思わずギースは呼び止める。
「お前らそのクエストの内容わかってて言ってんのか!?そのクエストの対象の魔物は危険度Aのキメラだぞ!?まずこの辺りでキメラなんて出るのもおかしな話だがそれ以前にキメラはAランクの中でも上位に位置する、かなりの魔物だ!それをお前ら若造が二人で討伐なんていくら何でも無茶だ!!絶対にそのクエストを受けるのはやめろ!」
ギースが言うことも、ある意味当然だ。二人は見た目からしてまだ16〜18程とかなり若く、戦闘経験もないように見える。しかし二人は
「ねえユーリ、この人私達のこと心配してるみたいだけどなんでかな?」
「そりゃ、俺らみたいなのが危険度Aのクエスト受けようとしてたらみんな気にするだろうな、なんせこんな見た目だし。」
と、さして気にしてない様子で会話を続け受付へと向かう。
そして受付嬢にクエストの内容が記された羊用紙を手渡した。
「…お二人のギルドカードを拝見してもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。」
「もー、いちいち面倒くさいんだよね毎回。」
と、ユーリは素直に、リーシェは少し不満そうにしながらギルドカードを手渡す。
受付嬢は
「(こんな若いのに危険度Aなんて無謀すぎるわ…。ここはギルドランクの低いのを理由にしてもっとこの二人にあったクエストを斡旋してあげなきゃ!)」
と、心の中で思いながらカードを確認する。すると
「……!!!!申し訳ありませんでしたっっっ!!!!!」
急に態度が変わり二人に対して物凄い勢いで謝り始めた。
これには周りの冒険者も動揺する。
「な、なんなんだ…??」
「あの受付の譲ちゃん、急に謝りだしたぞ…??」
そして受付嬢が大声で謝りながら
「誠に申し訳ありませんでした!!まさかお二方があの光と闇の勇者だとは思わずに…!!このクエストの受注、勿論異論ありません!お二人ともよろしくお願いします!!」
と、二人の羊用紙に物凄い勢いで判子を押し、クエストの受理を行った。
「何だって!?あんな若えのがあの噂の勇者!?」
「おいおいおい…なんだってこんな場所まで来てんだ…??」
「あれが本物…!始めてみたがそんなに覇気とかは感じられねえな…??」
周りの冒険者は驚愕、疑問、落胆等様々な感情を思い思いに吐き出す。
「ユーリ、クエストいこーよ。ここの人たちなんかすごい目でこっち見てるよ。」
「あぁ、そうだな。早いとこ出てクエストに行こう。」
二人ともその空気に耐えられなくなったのか足早にギルドを後にした。
物語構成が難しい…。
ノリと勢いで執筆、投稿した作品なので拙いですが応援していただけたら幸いです。。。