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召喚勇者と七つの魔剣  作者: 蔭柚
第4章 亡国の末裔
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第60話 王宮突入!

前話のあらすじ:(ユージン目線)

やっとのことで王宮(の庭)まで辿り着いたのに、目の前には大量のクモの獣魔がいた!

 その鐘の音は、ユージンにとってまさに福音であった。


 仲間が、そして周囲の獣魔ですら、王都中に響き渡る突然の音に注意を向けている中、ユージンだけは別のことに気がついた。

 それは、まさに絶体絶命といった現状を打破するための、大きな助けとなる。


「(考えている暇はないな。これがいつまで続くのか分からない。やるなら、今だ!)」


 ユージンはそう判断し、仲間に向かって叫ぶ。


「王宮の門まで突っ切るぞ!」


 言われて、仲間が正面に聳える王宮の最下部に視線を向けた。

 現在、一行は城壁の正門脇にいる。城壁の正門から、北に向かって前庭の中を一直線に通路が通っており、200メートル程行けば王宮の門に辿り着くのだが。


「このクモはど~するの?ちょっとボクもう魔力が枯渇しちゃう~」


 ゾーイが、ヘタリ込んだまま、若干自棄になった表情でそう言った。


「この数が相手では、フラール様とゾーイを守りながら突っ切るのは厳しいぞ」


 ライリーが、冷静にそう告げた。


「私はまだ魔力はあるけれど、移動しながら防御魔法を使うのは……。動かないで良いなら、多少は持つと思うんだけど」


 フラールも、悔しそうな顔でそう告げた。

 だが、ユージンはそれらを聞いても強気に笑い。


「道は、俺が拓く」


 そう言って、眼前で蠢き出した大蜘蛛の大群を見据えた。


     ◆ ◆ ◆


 ところで、ユージンの使う「魔力ブースト」は、設置型魔法との相性が非常に良い。

 『盾』や『壁』系の防御魔法がその典型で、魔力を余分に継ぎ足すことで、防御力や耐久力を増すことができる。

 そして、実は攻撃魔法にも設置型魔法は少数ではあるが存在する。


 設置型の攻撃魔法が少ないのは、単純に制御が難しいからだ。

 常に必要量の魔力を注ぎ続けるのは非常に神経を使う作業である。少しでも必要量を下回れば魔法が途切れるし、多めに魔力を注げば、多少の威力増大につながるものの、大幅に効率が悪化する。

 このため、攻撃魔法には普通の放出型魔法が好まれるのだ。


 だが、「魔力ブースト」によって効率を気にしなくて良いユージンは、その設置型攻撃魔法に目をつけ、ゾーイにいくつか教えてもらっていた。


「道阻むものを焼き払え! 『炎扇』!」


 その内の1つをユージンは起動し、魔法陣に魔力を注ぎ込む。()()()()()()()()()()()()()()()()を、ありったけ。


 一行の少し前に現れた魔法陣から、扇状に炎が広がってゆく。

 通常であれば10メートル程度まで広がった後に消えてしまう魔法だが、ユージンは魔力を大量に注ぎ込むことで、炎の維持のみならず、範囲の拡大まで行った。

 50メートル程度まで広がった炎の扇に、大蜘蛛達が耐えきれずに退散しだした。文字通り、蜘蛛の子を散らすようである。


 10秒程炎を維持して、周辺から獣魔が消えたのを見て、ユージンが魔法を解く。


「え、ユージン、魔法」


 ゾーイがポカンとした顔で呟いた。


「なんか知らんが、鐘の音と一緒に魔力が回復した。しかも、通常よりもかなり濃い。今なら打ち放題だ」

「あ、ホントだ。俺も身体強化が使える」


 ディストラも周囲の魔力が戻ったことを感じ取った。


「だがいつまでもつのか分からねぇ!急ぐぞ!」


 魔力があるのは、この鐘が鳴っている間だけかもしれない。そんなことも考えつつ、ユージンは走り出した。仲間もそれに続く。


 しかし、一行の動きに気付いた蜘蛛が、逃げていた足を止めて引き返そうとする。


「並列起動!『炎弾』!」


 ユージンの呪文に応じて、数十の魔法陣が一斉に起動し、そこから前方に向かって炎がばら撒かれた。


「うっひゃ~、ユージン、もしかしてボクよりも並列起動得意かも」


 ゾーイの言う「並列起動」とは、同一の魔法を単一の呪文で複数起動する補助魔法である。どれだけ起動するかは、術者の思考と魔法制御次第であるが、当然、起動数が多ければ多いほど制御が難しい。


「こんなの慣れだろ。それより、俺はひたすら撃ちまくるから、ゾーイは索敵と防御頼むぞ」

「りょ~かいっ!」


 ユージンは、その後も走りながらひたすら『炎弾』を撃ち続けた。

 一発一発は大した威力はないが、虫系の獣魔は殊の外炎を嫌がる。それが絶えることなく周囲にばら撒かれては、中々近づけなかった。

 加えて、蜘蛛の遠距離攻撃手段である毒毛や糸は、よく燃えた。


 そうして、ユージンのゴリ押しで何とか王宮の門に辿り着いたのだが――。


「開いてないわよ!」


 フラールとディストラが思いっきり門を押したり引いたりしたが、鉄製の扉は軋むのみで、一行を受け入れようとはしなかった。


「ま、そりゃそうか。……と、サービスタイムもここまでか?」


 ユージンは、周囲に異常なほど溢れていた魔力が収束していくのを感じた。

 鐘の音は、いつの間にか止んでいる。


「どうするのよ!」

「そう焦るな。狙撃手から狙われてる訳じゃないんだから、適当に上の方の窓から侵入すれば良いだけだ。ゾーイ、頼む」

「あれ?ユージンがやらにゃいの?」

「周りの魔力が減ってきた。どこまで減るか分からんが、途中で落下したくはないだろ?」

「そりゃそ~だ。ま、それくらいなら今の魔力でも大丈夫かにゃ」


 そう言って、ゾーイは『壁』を変形させて階段を作り上げていく。


「……やってることが、勇者じゃなくて犯罪者になってるわよ」

「文句言うなら帰るか?」

「行くわよ!」


 フン、と鼻を鳴らして、フラールがゾーイに続いて半透明の階段を上っていく。

 ユージン、ディストラ、ライリーもそれに続いた。


 そして、5メートルほど上がったところで。


「ゾーイ、そろそろ良いんじゃないか。もっと建物側に行って、窓に近付こう」


 ユージンがそう声を掛けるも、ゾーイはユージンの数段上で振り返り、


「ん~、そうしたいところだけど……魔法障壁があって、これ以上近寄れないんだよね」


 空中にある壁をコンコン、と叩いて見せた。


「どこかに隙間がないかと思って、探しながら上ってるんだけど……」


 そう言いながら、ゾーイはどんどん上に上っていく。


「ちょ、ちょっとゾーイ」


 ひょいひょい、といった感じで半透明の階段を上るゾーイに対して、フラールはそろそろ高さが気になってきた。すでに高さは10メートルになる。

 ゾーイが簡易的に作った階段には、当然ながら壁も手摺も無い。少し足を踏み外せば、獣魔が蠢く階下へと真っ逆さまだ。


「こういうのは、大抵上の方が薄かったりするんだけど、結構しっかりしてる~」


 しかしゾーイはフラールのビビり様など気付かずに、階段の維持と王宮を覆う魔法障壁の調査に集中している。


「今度は余裕があるから、落ちても何とかしてやるよ」


 フラールの後ろから、先程城壁から落ちた際のことを思い出しつつユージンが声を掛けた。


「頼むわよ?」


 若干青ざめつつも、フラールはゾーイの後を追う。

 その様子にユージンは苦笑する。そして、ゾーイに訊ねる。


「ゾーイ、障壁を破壊すれば良いんじゃないのか?」

「う~ん、それも考えたけど~。これ、結構強力な障壁だし、どうもこの奥にもまだありそうなんだよね。今のボクだと、ちょっと無理かも」

「なら、俺がやる」

「え?魔力が減ったって言ってなかった?」

「ああ。ただ、普通レベルで落ち着いたみたいだ。それに、魔法がなくても、俺にはこれがある」


 そう言って、ユージンは左腰に提げた魔剣に手を添えた。


     ◆ ◆ ◆


「どうせなら、一気に目的地まで行くか。フラール、謁見の間ってどこか分かるか?」


 ユージンの問いに、フラールが何かを諦めたように笑って、答える。


「あのステンドグラスじゃないかしら」


 フラールが指差したのは、ユージン達が今いる場所からさらに20メートル程斜め上に位置する、大きなステンドグラスだった。


「高そうだな」

「……呆れた。ここに来て、値段の心配?」

「うるせえな。俺は庶民なんだよ。もしも弁償しろって言われたら、ネアン帝国につけるからな」

「どうぞ」


 こんな状況でもいつもの軽口を叩くユージンに、仲間が苦笑する。

 そして。


「じゃあ、行くぞ!ゾーイ、障壁を破ったら一気に階段を延ばせよ」

「がってんだ!」


 ゾーイの隣に移動したユージンが、『セブン・フォース』に魔力を混めて『断魔アイソレーション』を発動し、見えない魔法障壁に向かって斬りつけた。


 スパン!


 という軽い音と共に、障壁に裂け目が生じる。

 淡く光るその傷口はしかし、数秒も経たない内に元通り修復されてしまった。


「ちっ、この程度じゃダメか。じゃあ、もっと広く斬るしかねぇな。皆、穴が開いたらすぐに飛び込めよ!」


 ユージンは、今度は2メートル四方程度の枠を切り取り、障壁に穴を開ける。


「行くよっ!」


 すかさずゾーイが『壁』の階段を延ばして、障壁の中に潜り込む。

 その間にも障壁は徐々に穴を狭めて行き――。


「しつこいな!」


 ユージンが再び伸びてくる障壁の端を削る間に、他の皆も穴を潜った。

 最後にユージンが中に入ると、既に数メートル先にいるゾーイが、振り返って叫ぶ。


「ユージン、2枚目だよ!」

「了解!」


 ユージンは先を行く仲間を追い越して、再び障壁の前に立ち。


「邪魔だ!」


 叫んで、道を切り開く。



 そして、3枚目は。


「うっそ~。壁やガラスにぴったり沿って障壁が張られてる。なにコレ。調べた~い」

「後にしろ。しかしそうすると、障壁の破壊がそのままガラスの破壊になるな……」

「つまり?」


 フラールが、嫌そうに問うてきた。それにユージンは、いつもどおり不敵に笑って。


「準備はいいか?」

「はぁ。もう慣れてしまった自分に悲しくなるわね」


 肩を竦めたフラール。他の皆もユージンに頷いた。

 ユージンも頷き返し、


「行くぜっ!」


 魔法障壁ごと、ステンドグラスを盛大に破壊した。


ゾーイ「ユージンの能力が若干チート臭くなってる点について」

ユージン「俺のは純粋な努力の結果だから、チートじゃないだろ」

ディストラ「努力が確実に身に付いているという点ではチートかもね」

ユージン「そんなこと言ったら、お前やゾーイ、ユングとフレイヤの方がよっぽどチートだっつーの」

フラール「……」

ユージン「あ、フラールも治癒魔法に関してはチートだな、うん」

フラール「別に要らないわよ、そんなフォローは」

ディストラ「まあ、全員、一般的なチート能力には至らないということで」

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