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召喚勇者と七つの魔剣  作者: 蔭柚
第1章 2度目の召喚
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第6話 ユージンの力量

 翌日、朝食を摂り終えたユージンは、侍女に連れられて一昨日自らが召喚された建物に向かった。

 高層ビル並みの高さを誇るも、ビルというより塔、といった風体のその建物は、昨日フラールに「魔法なんとか」と紹介されたが、生憎説明が速すぎて聞き取れなかった。その1階の1室で、イサークとルキオールが待ち構えていた。


「おはようございます、ユージン様。今日は、今後の方針を決めるためにも、色々とお付き合いいただきたいのですがよろしいですか?」

「了解」

「ではまず――何でも良いので、魔法を使ってもらえますか?あ、できればこの部屋が壊れない程度の」

「魔法、ね」


 クゼールにいた頃は、主に身体能力の向上を行っていたため、魔法はあまり教わっていない。召喚された当初にジャンヌに色々調べられた結果、魔法を伸ばすよりも身体能力を伸ばす方が向いていると判断されたからだ。

 今となってみれば、魔剣が魔法を無効化する能力を持っていると判明したため、魔法に注力していなくて良かったというべきか。


 それはさておき、ジャンヌからいくつか教わった魔法は、基礎中の基礎かつ、マナスカイで生きて行く上で役に立つものばかりだった。具体的には、水を出す魔法、火を出す魔法、明かりを灯す魔法、身体強化魔法、などである。

 マナスカイでは、周囲の空気に在るマナを感じ、それを集めてエネルギーとし、呪文によって魔法を発動していた。


 日本に育ったユージンには、周囲のマナを感じられるようになるまでに数日を要したものの、一度感覚を掴んだ以降は普通に魔法を使えるようになった。

 その当初こそ、魔法が使えることに歓喜し、興奮したものの、周囲の皆も大体同じ魔法は使える上に、指導役のジャンヌは常識外の規模の魔法を使えるとあっては、その興奮も長続きはしなかった。


「(さて、こちらの世界でも使えるか……?)」


 ユージンは、集中して周囲の気配を探り、マナを探す。そして、それらしい感覚を掴むのだが、


「(マナ、とは違う?似てはいるけれど……、とりあえずやってみるか)」


 マナスカイとは微妙に異なるスフィテレンドの空気に戸惑いつつも、失敗した時に最も被害が少なそうな、明かりの魔法を唱える。


「万物をあまねく照らす極光よ 我が手に集い事象を顕せ 『光の礫』」


 ユージンが差し出した右手に、マナに近い何かが集まる気配がする。そして黄色の魔法陣が浮かび上がり、その中心に光が集まって行く。

 やがてそれは拳大の光球となり、周囲を柔らかく照らし出した。


「魔法はあまり変わり無く使えるみたいだな」


 ユージンが、期待以上ではなく、不安以下でもない結果に溜め息を吐いていると、


「す、ごい。魔珠でなく、どこからか魔力を持ってきて魔法が発動している……!」


 ルキオールが、目を見開いて興奮していた。


「え?」

「やはり、マナスカイの人間は我々とは違う理で魔法を発動しているようだな。これなら、500年前の勇者が我々では不可能な規模の魔法を使っていたという記録にも納得だ」


 1人頷くルキオールに、隣のイサークは、そうなのか、と呟き、ユージンは若干引いている。それに気付いたルキオールが、ひとつ咳払いをしてユージンに向き直る。


「我々の世界の人間は、皆『魔珠まじゅ』と呼ばれるモノを持っていて、普段はそこに魔力を溜め、魔法を使うときはそこから魔力を引き出します。しかし、私が見たところ、ユージン様の体には魔珠はありません。ああ、魔珠は、物質として体内に在るわけではなく、特定の魔法で見ることによって確認できるものです」

「はあ」

「この魔珠の大きさや密度によって、その人間の使える魔法の規模や回数が決まります。しかし、ユージン様は魔珠ではなく、どこからか魔力を持ってきていますね?」

「ああ、マナスカイでは、周囲に漂うマナ……魔力?を使って魔法を使うんですが」


「なるほど……。そういった方法で魔法を使うユージン様がこちらでも魔法を使えたということは、スフィテレンドの大気にも魔力が漂っていることになりますね」

「なんとなく、感じますね。向こうのマナとは少し違うけれど」

「ほう。と言うことは、我々にも同じ事が可能なのか?いやしかし、そのようなものを感じたことはない。産まれたときからこの世界に居るから気付かないだけ?魔法の発生要素は似通っていたのに、周囲にある魔力を使う事にはならないのか?意思や認識が呪文に作用している?……ううむ、ここで考えても埒が明かないな。色々試してみる必要が――」

「ルキオール!」


 完全に自分の世界に入っていた次席魔法士を、イサークが一喝する。


「お前、今はそんな状況じゃないだろ。そんな一朝一夕であちらの魔法が使えるようになるなら、先人が既にやってるだろうが」

「……それはそうだな。可能性は捨てきれないが、それは時間が出来てからの研究課題としよう」


 若干興奮が冷めやらないのか、口調が怪しくなったルキオールだが、一呼吸置くとすぐに平静を取り戻した。


「さて、それでは続けましょうか。他に、どんな魔法を使えますか?」


 問われて、ユージンは渋い顔になる。

 悪魔に対抗できるような魔法は知らないということは、変に期待を持たせる前に伝える必要があるだろう。だが、何となく後ろめたいのも事実だ。


「それが……俺は、あまり魔法が得意ではなくて。小さな火を出したり、水を出す程度の小規模魔法しか覚えてないんです。確かに、周りには街を吹き飛ばすくらいの威力の魔法を使える人もいたんですが」


 ジャンヌの事である。一度だけ見せてもらった彼女の本気魔法は、炎で全天を紅蓮に染め上げてみせた。


「そう、ですか」


 内心落胆しているだろうが、ルキオールは特に表情を変えずに頷いた。


「参考までに、他の魔法も見せていただいても良いですか?」


 ユージンは頷き、掌大の炎を出したり、散水シャワー程度の水を出したりしてみせた。

 ルキオールとイサークはそれを興味深げに観察する。


「次は、身体強化魔法です」

「身体強化?」

「ええ、身体のスピードを上げたり、力を上げたり」

「ふむ。こちらにはない魔法ですね」

「そうなんですか」

「こちらでは、魔力がそのまま筋力を増したりする効果がありますので。意思に応じて魔珠から魔力が供給されて、身体能力を向上させます。あまりやりすぎると逆に身体を痛めますが」

「魔力を直接……なんとなく、そちらの方が効率が良さそうですね。まあ、とりあえずやってみます」


 先程までと同じように、周囲の魔力を感じとる。


「世を創りし万象の源よ 我の躰を創りて力となれ 『身体強化』」


 ユージンを中心とした赤い魔法陣が床に広がり、そして消えた。


「……あれ?」

「どうしました?」


 首を傾げるユージンに、ルキオールが訊ねる。


「いや、発動していないみたいだ」


 言いながら、少し走ったり跳んだりしてみるが、平常時のユージンの身体能力と変わらない。マナスカイで身体強化を使った時には、通常の5割増し位のスピードや跳躍力だったのだが。


「ふむ。肉体に作用する魔法は、そもそもの肉体の構成要素が異なる事などから不発に終わるのでしょうか。それとも、別の要因が……?まあ、今は置いておきますか」

「そうですね。で、今の俺に出来るのはこの程度です。さすがに、この程度では悪魔相手に有効な力にはなりませんよね」

「それは、そうですね。悪魔は魔法耐性も高いですから。個体にもよりますが、この世界の人間が使える最高位の魔法を直撃させても倒せない場合もあります。ちなみにユージン様、他に戦いの手段はお持ちではないですか?」


 ユージンの魔法をここで掘り下げても仕方がないと思ったのか、ルキオールは方針を変えて来た。


「多少は剣を使えます。けれど、大したものではないかと」

「一度お手合わせ願えますか?」

「ルキオールさんと?」


 魔法士である彼はてっきりインドア派かと思っていたが、違うのだろうか。


「これでも、そこらの騎士よりも剣の腕は上だと自負しています」

「こいつは強いぜ。マジで」


 澄まし顔で返すルキオールを、イサークがニヤリと笑いながら補足する。


「ジャンヌとキャラ被りすぎだろ、オイ……」


 ユージンがぼそりと呟く。

 2人とも、ユージンを召喚した魔法使いの実力者で、今のところユージンと直接対話する第一人者であり、しかも魔法使いのくせに剣も使えるとなると、性別が違ったことが唯一の救い(?)だろうか。


「何か?」

「いえ何でも。じゃあ、軽く打ち合いましょうか」

「はい。では武器庫に行きましょうか。さすがに真剣だと危ないので、模擬剣にしますが、あまり種類がないんですよね。どんな種類の剣を使いますか?」


 歩き出しながら、ルキオールが訪ねてくる。ユージンが使った事のある剣は、ただひとつしかないが、幸いにしてそれは形状としてはごく一般的な長剣の部類である。


「普通の直剣で良いです。片手と両手兼用で使えるサイズの」

「それならあるでしょう」



 そうして2人は武器庫で剣を選んだ後、王宮の隅にある小さな広場で向かい合った。


「(さて、俺の剣はどこまで通用するか)」


 少し離れた所に立つルキオールは、長剣を右手で軽々と持ち、身体を斜めに構えてこちらを見据えている。


「(あの感じだと、ディストラくらいの腕前っぽいんだよなぁ)」


 魔法はダメで、剣もダメとなれば、あちらとしては勇者として呼んだ意味がない、となるだろう。

 まあ正直、そんなことは知ったこっちゃないのだが。


 勝手に召喚して、勝手に期待しておいて、失望する。巻き込まれた方としてはたまったものではない。ふざけるなと反発しても仕方ないと思う。

 けれど前回、そうしたって何も変わらなかった。状況が好転することはなかった。むしろ、人間関係が悪化する一方だった。


 だから、今はやれることをやろう。


「いくぞっ!」


 勝負は、5分で着いた。

 最初の2分は、ユージンの攻撃をルキオールが受ける一方だったが、様子見が終わってルキオールが攻めに転じると、徐々にユージンは防戦に傾いて行き最後には剣を弾き飛ばされていた。


「参った。やっぱ無理だったな」


 だが、ある程度予想していたことである。悔しくない訳ではないが、ショックは少ない。


「正直、俺の剣の腕はこちらではどれくらい?」


 汗を拭いながら剣を拾いに行くユージンに問われ、ルキオールは少し考える。


「一般兵の平均より少し上、騎士だと若手と同程度ですかね」

「ま、そんなもんだろうな」


 それでも良い方だ、と思いながら、ユージンは地面に落ちた剣を拾い、手に馴染まぬそれを軽く振るう。


「(やっぱ、可能性があるのは『アレ』だけだな)」


 じっと剣を見つめて考えるユージンに、ルキオールが不審な眼差しを向ける。

 ユージンの戦闘力は、ルキオールの見立てとほぼ同様だった。ただ、最初の気迫と最後の粘りは予想外だったが。

 そして、闘争心は感じたものの、負けてもさほど気にした様子がないことから、やはり勇者として引っ張るタイプではないか、と思っていたところでの謎の沈黙である。


「ユージン様――」

「ひとつ、提案があります」


     ◆ ◆ ◆


「提案、ですか」


 先程までの、負けたというのにさらりとした態度とは異なり、強い意志を感じる眼。ついでに、素に戻っていた口調が丁寧語になっている。


「マナスカイへの送還魔法は使えないようだけど、あっちからの召喚魔法はまだ使えるんでしょう?」

「ええ、まあ」


 なるほど、それでユージンより強い人物を召喚してはどうかということだろうか。というルキオールの予想からは外れた質問が来る。


「それは、人だけじゃなくて物も召喚できるんですか?」

「物?」


 ルキオールが復活させた召喚魔法は、いくつかの条件を定めて、求めるものをイメージし、その対象を異世界から呼び寄せるものだ。


「その物の情報がはっきりと分かれば、可能だと思います」

「なるほど。ひとつ聞きたいんですけど、ルキオールさんはどんな条件で俺を召喚したんです?」

「それは……。この世界を救う力のある勇者、というものですね」

「俺に、その力があるように思いますか?」

「……現状では、思いません」


 問われたルキオールは、素直に答えた。

 見せてもらった魔法も、あの威力では目くらまし程度にしか使えないし、剣の腕も、強い悪魔相手では瞬殺だろう。


 だが、可能性は感じている。

 彼の魔法は、こちらの魔法を応用すれば強力になる可能性がある。そして、今まさに感じている彼の意思の力は、何かを期待させる。


 そんなフォローにも似た言葉をルキオールが発する前に、ユージンが頷いた。


「俺もそう思います。ただ、ひとつだけ心当たりがあります」

「心当たり?」

「ええ。魔法の力も剣の腕も大したことのない俺が、勇者として呼ばれた理由――それはたぶん、俺が使っていた剣にある」



 魔剣『セブン・フォース』。

 それこそが、ユージンが日本からマナスカイに召喚された最大の理由だ。

 かの剣の封印を解くために、大した力が無いにもかかわらず、勇者としてユージンが召喚されたと聞いている。であれば、マナスカイからスフィテレンドに召喚された理由もまた、魔剣なのではないか。

 あの剣こそが、ユージンを勇者たらしめているのではないか。


 その思いを胸に、ユージンは説明した。


「向こうの世界で、俺は魔剣と呼ばれる特別な剣を使っていました。まだその力を引き出せてなかったけれど、引き出せるようになれば、悪魔に対抗できる可能性があります」


 こちらに召喚される間際に垣間見た、『セブン・フォース』の能力。他の魔剣の力を無効にする、そんな力と推測できた。

 そして、あの剣が理由でユージンが召喚されたのだとしたら、その力の先に、悪魔の力を無効化するような能力がある可能性が高い。


「なるほど、特別な剣。千年前の勇者と同じですね。それがあれば、もしかすると……」


 ルキオールが、ちらりと視線をイサークに向ける。

 イサークが頷いたのを見て、ルキオールが決断する。


「分かりました。その剣の召喚を試みましょう。そのためには……あぁっ!!」


 突然、ルキオールが大声を上げ、ユージンとイサークがぎょっとして彼を見る。何かあったのかと彼の視線を追うが、ルキオールは何かを見て叫んだ訳ではない様だった。


「しまった……!完全に忘れていた。まずいぞ、一体どこに――」

「どうした、ルキオール」


 滅多にないルキオールの動揺具合に、イサークが声を掛ける。

 ルキオールは視線を上げて、まるで噛みつくように告げた。


「『彼女』のことを完全に忘れていた」

「あ?彼女って――まさか!」


 イサークにも心当たりがあったらしく、目を見開いた上で泳がせるという器用なことをやってのけた。


「あれから1日半以上経っているぞ!」

「ああ、まずいな。追えるかどうか……とにかく探そう――ユージン様」

「え、あ、はい」


 完全に置いて行かれていたユージンは、突然話を向けられて間抜け面を晒す。が、それに構っている暇もないのか、ルキオールは焦り顔のまま早口に告げた。


「すみません。召喚魔法に非常に重要な事項を完全に失念しておりました。これから早急に事態の対処に移りたいと思いますので、申し訳ありませんが少々ここでお待ちいただけますか。すぐに誰か寄越しますので」

「あ、はい。分かりました」


 ユージンの返事を聞くや否や、2人は猛スピードで広場を出て行き、ユージンが召喚された建物がある方向に走って行った。

 1人残されたユージンは、ここで悪魔の襲撃でもあったら俺終わりだな、と独り言ち、はて、と思い出す。


 そういえば、1か月程前に、この王宮は悪魔の襲撃を受けたと言っていた。その際に召喚用の魔道具を奪われたとも。そして、その口振りからは、王宮が襲撃を受けるのは異例で恥ずべきことのような印象を受ける。

 実際、悪魔の本拠地は遠い地にあるようだし、この王宮まで攻めてくるのは大変なことだろう。

 にもかかわらず、悪魔は、自分たちの脅威となりうる勇者の召喚を阻止するべく、ある意味最適な行動をとったと推測できる。


「(いくらなんでもおかしくないか?)」


 もし、これが全て悪魔独自の能力によって行われたとすると、悪魔の情報網は人間の行動を完全に把握してることになる。そうであれば、最早戦いになどならないだろう。防御の網など簡単に探し出し、圧倒的な能力を持って簡単に人間を蹂躙できるはずだ。

 しかし、そうはなっていない。考えられる理由は2つ。


 ひとつは、悪魔が完全に遊んでいる。

 全てを掌の上で転がして、悦に浸っているとすると、自分達にとって危険な勇者の召喚を阻止した上で、壊滅には追い込まず人間が慌てる様を観察する、という現状に近い状況が生まれうる。

 だが、それだとユージンが召喚されたのは筋が通らないし、すでに数体の悪魔は人間に倒されているようなので、そんな犠牲を払うとも思えない。


 可能性が高いのは、2つ目。


「(人間側に、裏切り者がいる)」


 ネアン帝国が勇者を召喚しようとしていること、召喚には魔道具が必要なこと。これを何者かが悪魔に知らせ、情報を得た悪魔がこの王宮を襲撃した。これならば、単発的な王宮の襲撃にも筋が通る。


「(知らせた方が良いか?……いや、俺が思いつくようなことは当然気付いてるよな)」


 少し話を聞いたユージンが気になった程だ。盤石の守りが敷かれているであろう王宮の防御を突破し、しかも魔道具を狙ってきたという事実は、内通者の存在を知らしめるには余りある。


「(昨日は、現在大きな争い事は無いって言ってたけど、まあ、やっぱり色々と厄介事はありそうだな)」


 造反者がネアン帝国の内部か、他国の人間かは知らないが、人間側が一枚岩という訳ではなさそうである。

 やれやれ、と内心溜息を吐き、ユージンは握った剣を振るう。面倒事が起きても、結局やるべきことは変わらない。


「(まずは、もっと強くならないと)」


 面倒事に立ち向かうためにも、そして悪魔に打ち勝つためにも、まずは強くなる必要がある。


「(そして、その先のためにも)」


 ユージンが見据えるのは、魔王を倒したその先。マナスカイに戻った後。

 今のまま向こうに戻っても、カイナの魔剣に倒されて終わりだろう。ジャンヌに、ディストラに、守られているようではダメだ。

 守れるくらい、強くならなければ。


 そんな、一心不乱に剣を振るう少年の姿を、2対の眼が別々の所から観察していた。

 そして、その内1対の持ち主が近付いてくる。



 真正面から堂々と近付いてきた人物に、ユージンが動きを止める。

 歩いてくるのは、大きめのバスケットを小脇に抱えた、ユージンと同じくらいの年齢に見える、青い髪の少女だった。身長はユージンより頭ひとつ半ほど低く、ルキオールと似た薄紫色のローブを着用していることから、魔法士であると思われる。


「やっほー。君が勇者様?」

「ああ、そうだけど、君は?」


 内心、軽っ、と思いながら返事をするユージンに、少女は茶色い瞳を細めてにっこりと笑う。肩口に届かない程度の長さの髪が外に向かって撥ねている様と相まって、何となくネコを連想させる少女だ。


「ボクはゾーイ。ゾーイ=カルサイだよ。よろしくねっ!」

新キャラ登場!

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