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召喚勇者と七つの魔剣  作者: 蔭柚
第3章 悪魔との遭遇
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第40話 悪魔の狙い

前話のあらすじ:

ギルバートは、ケビンが父の仇だと知り、彼に剣を振り下ろした!


フラール「ギルバートは、父親だけじゃなくて母親も亡くなっていたのね」

ディストラ「そうだね。中々辛いね」

ユング「まあ、でも何とかなるもんだぜ」

ディストラ「あ、そっか。ユングとフレイヤも……」

フラール「周りの皆さんに支えていただいたおかげで、何とか過ごしていけています」

ユージン「真っ当に育ってくれて、親御さんも草葉の陰で喜んでるだろうよ」

「……何のつもりです?」


 ケビンのすぐ脇の木を抉るだけで終わったギルバートの剣。


 それを見た悪魔が、胡乱な視線をギルバートに向けた。

 ギルバートは、それに対して、今だ怒りと憎しみを湛えたまま、しかし歯をくいしばってそれに耐えながら答える。


「例えこいつが父の仇だとしても、俺は殺さない。村に戻り、正当な裁きと償いをしてもらう」


 ギルバートの言葉に、ユージン達はホッと息を吐き、ケビンは未だ呆然とし。


「ハァ、興醒めですね」


 悪魔は、やれやれ、とばかりに首を横に振った。


「折角、目の前で愚かな人間共の劇が観られると思ったのですが。これだけお膳立てをしたというのに、親の仇を殺す勇気もないとは。まったく情けない」


 悪魔の視線に、ギルバートは恐れを感じるものの、同時に覚える反抗心で、怯えるまでには至っていない。

 だがそれが気に食わなかったのか、悪魔はスッと手をギルバートに差し向け、


「私を落胆させた罰です。消えなさい 炎よ!」


 直径2メートル程の炎球が、轟音を立てながら物凄い速度でギルバートを襲った。


 先程のケビンを狙う氷の槍は無我夢中で叩き落したものの、ギルバートとて魔法による攻撃を向けられることは全く慣れていない。自身の身体を簡単に焼き尽くすであろう超常の炎に、咄嗟の対応などできなかった。

 逃げなければ、とは思うものの、身体が動かない。


 そんな青年の前に、何かが滑り込んできた。


「させるかよっ!」




 ユージンは、右手に構えた『セブン・フォース』で、炎撃を下から上に切り上げた。

 炎の中心を正確に断る斬撃は、魔法全体へと波及し、2メートルもの炎球を両断せしめた。


「……全く、どうなっているんですかねぇ。ただの人間ごときが、私の邪魔になろうとは。目障りにもほどがある!」


 語気を荒らげ、悪魔は地を蹴りユージンに迫る。そして身構えるユージンに、勢いをつけた強引な一撃を見舞った。

 単純だが恐ろしいほどの速度を持つそれを、ユージンは完全に避けるのは無理と判断し、剣を盾にして受け流そうとした。


「くっ!」


 だが、想像以上の威力が込められた拳に、ユージンの身体が揺らぐ。それを見逃さず、悪魔は身体を捻って後ろ回し蹴りをユージンに叩き込む。

 鋼鉄のごとき拳と違って、悪魔の足は人間より多少頑丈な程度であるが、打撃の威力自体は殴るより蹴る方が強いのが道理。拳と同様に、蹴りもまともに食らえばただではすまない。


 しかし、まともに食らわなければ良いのだ。


 もちろん、ユージン一人であれば、身体能力に勝る悪魔の攻撃をいずれはまともに食らうことになるだろう。

 だが、ユージンは一人ではない。


 ユージンを襲う悪魔の回し蹴りを、ディストラが逆方向に受け流す。

 その間にユージンは体勢を立て直し、ディストラと2人で悪魔に相対したのだった。


 ◆ ◆ ◆


 悪魔は、内心で舌打ちをしていた。


 目の前の人間達は、見た目こそ自分が普段から餌にしている街の人間と変わらないものの、その戦闘能力は比較にならなかった。

 街の人間は、一般人はもちろん、街を守る兵隊らしき人間共も自分に傷一つ付けることはできなかった。そしてこちらの攻撃を防ぐこともできない。

 悪魔からすれば、兵隊も一般人と何も変わらない、取るに足らない存在であった。


 だが、目の前の人間達はどうだ。

 一撃で終わらせるつもりで、かなりの魔力を込めた初撃の魔法を無傷で乗りきった挙げ句、2対1とはいえこちらの得意な接近戦で対等に戦う。さらに、魔法士の攻撃により傷を負うはめになった。


 一人一人であれば、簡単になぶり殺せるだろう。しかし、奴等は巧みに連携し、お互いの短所を補い、個で劣る自分に対抗して見せた。

 これが、魔王一派の言っていた、人間の真の力か、と納得せざるを得ない。


 かつて、個々が強力な力を持つ悪魔でも、突出すれば人間の軍隊に潰されたという。それを防ぐために、魔王は独立精神の高い悪魔を統一しようと考えたらしい。


 これまで、何をバカな、と考えていたが、現状を鑑みれば、なるほど、である。


 が、それでも、自分はこいつらに負けるつもりは毛頭ない。

 確かに奴等の連携は厄介であるが、それがなければ何ということはない。そして、連携というのは補い合う仲間がおり、きちんと意思疏通できていなければ成り立たないはずだ。


 すなわち、奴等の一人でも削れば簡単に崩すことができるだろう――、いや、ただ一人削るだけでは不足かもしれない。削った一人を補う戦術に変更される可能性がある。


 であれば、補いようのない人間を削れば良い。それはだれか。


「(……こいつですね)」


 悪魔は、自分の目の前で、妙に存在感のある剣を握る黒髪の少年を睥睨する。


 この少年は、ただの前衛のようでありながら、全体の戦術の要になっているようだ。ここぞという時に一々邪魔をしてくるのもこいつだ。

 前衛としての能力は隣の銀髪の少年の方が上だが、ギリギリのところで致命傷を受けない妙な巧さがある。その上2人で連携してくるのだから、目標を定めたとしても中々決定打を与えることができない。


「(ふむ……外野を使いますか)」


 悪魔は、チラリと周囲を眺め、敵の戦力を分析する。


 目の前の剣士2人以外に、自分が彼等から少し離れると邪魔くさい魔法をちょこまかと撃ってくる青髪の少女と、翠髪の少年。これは攻撃型の魔法士だろう。

 そして、その2人と共に居る翠髪の少女。こちらは、初撃の際にそこそこの防御魔法を張っていたことから、防御系の魔法士か。


 そういえば、攻撃魔法を打ってくる青髪の少女も、かなりの防御魔法を張っていた。それに加えて、あの時にはもう一つ防御魔法が張られていたが……あれはかなり下等な魔法であったし、気にする必要もないか。翠髪の少年が張ったのだろう。


 そして、魔法士3人の奥に控える茶髪の剣士と、金髪の少女。

 動きをみるに、この男が最も戦闘能力が高そうである。一方の少女は最も低そうだ。男が少女の前から動かないことから、少女の護りを重視しているのだろう。


 自分との戦闘に、まともに戦えなさそうな人間を連れてくるとは、舐められたものだ――と思ったが、良く考えれば別にこいつらは自分と戦うために来たわけではなさそうだった。

 だというのに、この戦力とはどう言うことだ?と疑問に思ったが、まあそれはどうでも良いことだ。


 そして、彼等以外に、麓の村の住人が2人。

 先程はその内の悪人の方を殺そうとしたが、実際のところ、殺したところでたいした意味はない。別に奴等の仲間ではないから。


 だというのに、目の前の少年は村人を守ろうと動いた。

 正直仲間でもない人間を救う行動の理解に苦しむが、この少年はそういう性格をしているのだろう。自分達が戦っている場所と、村人との間に、盾になるように魔法士を置いているのはそういうことだろう。


 それならば。


 それを利用させてもらおう。




 目の前の少年剣士2人との戦闘は、油断すればこちらがやられてしまう。が、油断さえしなければ十分に対応できる。


 そして――離脱も容易である。


 悪魔は、少年2人に攻撃すると見せかけて、大きく後ろに跳んだ。そして彼等の後ろに控える魔法士が魔法を放ってくる前に、唱える。


「氷の柱よ 飛び出し貫け 空気よ爆ぜろ それ ほっほっほっ」


 呪文に応じて、氷の柱が宙に現れ、勢い良く飛び出した。狙うは、遠くでこちらを眺めている村人2人。

 それを察したか、黒髪の少年が叫ぶ。


「フレイヤ!」

「はいっ!」


 それに応じて、翠髪の少女が防御魔法を発動する。予想通りに。


 村人を守るように『殻』系の魔法が発動した時に、ようやく青髪の少女が気づいたらしい。


「まだ終わってない!?こっちに来てる!」


 そう叫びながら、自分達の前に『壁』を張る。そこの『壁』を、空気の弾丸が直撃した。

 少しヒビが入ったものの、『壁』が持ちこたえた様子にホッと少女が息を吐いた。


 甘い。


「っ!?しまった!まだ!」


 気付いたときには手遅れだ。


 悪魔は、分かりやすい氷の柱の他に空気の弾丸を「複数」放っていたのだ。そして、1つはダミーとして直進コースを、そして残り3つは『壁』を避けるように大回りするコースを通り、


「ぐあっ!?」

「あぁっ!!」


 翠髪の少年少女に直撃した。


 あの程度の詠唱では直撃で殺傷するほどの威力はないが、骨の数本は折れているだろうし、運が無ければ内蔵にダメージを負って致命傷だろう。

 もう1つ、青髪の少女には避けられてしまったが、十分だ。


 なぜなら――これはただの布石だからだ。


「ユング、フレイヤ!」


 仲間の負傷に顔色を変えた黒髪の少年を目前にして、悪魔は実にしっくりとくるニタリとした笑みを浮かべた。

 少年は、一瞬にして距離を詰めていた悪魔に目を剥くが、もう遅い。


 固く握った右拳を、最も避けづらい胴体に向かって振り抜く。

 隣の銀髪の少年も、魔法士の負傷に一瞬気を取られ、フォローすることができない。


 それゆえ。


 悪魔の右腕が、肉を引き裂く音を周囲に撒き散らしながら、少年の腹部を貫通した。



 完全に悪魔の狙い通りだった。


次の投稿は明後日の予定です。

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