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召喚勇者と七つの魔剣  作者: 蔭柚
第3章 悪魔との遭遇
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第34話 小さな村の大きなジジョウ①

前話のあらすじ:

第七の魔剣を手に入れたユージンは、戦闘力が上がった!


ディストラ「いくら何でも、そんなに空中で動ける?」

ユージン「ジャングルの中でのサルを思い浮かべてみろ。縦横無尽に空間を移動できるだろ?」

ゾーイ「そして、人間が身軽に、力強く動けるようになるのが、魔力による身体強化の効果なのである!」

ユージン「まあ、現実世界と比較すると異常に思えるが、ファンタジー世界ならこんなの序の口だろ」

フラール「人間の身でありながら宙を蹴って跳んだり、光速で移動したり、あまつさえ瞬間移動したりね」

ゾーイ「まあ、全部魔法ならできなくはないけどね。生身でやっちゃうとヤバいよね」

フレイヤ「この物語は、身体能力については、比較的現実的な物語です」

ユング「おれも魔法使わずに2段ジャンプとかしてみてー!」

 その日、ユージン達は、人口200人程度の村、カギョウ村に辿り着いた。


 現在いる地域は旧ヴァナル王国の勢力圏に近いため、訪れる国も必然的にかつてヴァナル王国と親しかった国である。

 ヴァナル王国とネアン帝国は敵国ではなかったものの、大国同士のライバル意識もあり、それほど仲が良い訳ではなかった。


 したがって、この地域の国々とネアン帝国との間柄は微妙である。

 とは言え、ヴァナル王国なき現在、表立ってネアン帝国に敵対する真似をするはずもなく、ネアン帝国とはそこそこの付き合いをしている国が多い。


 ユージン達が今いる国もまさにそんな感じで、入国時にライリーがネアン帝国の騎士だと名乗ったときには少し微妙な顔をされたが、特に厳しい審査があるわけでもなく、さらっと一行に入国の許可が下りた。


 その後、一行は国の首都を通らず最短で西に向かうルートを選択しため、宿場町の整備がされていない場合があり、度々野宿をする事にもなった。


 昨日もそんな日だったため、村に着いたゾーイが普段以上にテンション高く喜んだ。


「ふい~、やっと着いた~!今日はゆっくりお風呂☆ ユージン、今日は覗かないでよねっ!」

「まるで覗いたことがあるかのような発言をするな馬鹿娘。フレイヤ、このアホの発言を真に受けるなよ」


 ゾーイの言葉を聞いて、ユージンに疑いの視線を向けていた少女を、ユージンは冷静に諭した。


「あ、び、ビックリしました。そうですよね。ユージンお兄ちゃんがそんなこと」


 ホッとした様子のフレイヤだったが、そこにフラールが意地悪い顔で突っ込む。


「覗きはしてないけどね。フレイヤ、男性というのは皆少なからず破廉恥なものよ。そこのユージンもね」

「えっ」


 ゾーイと違い、それなりに信頼しているフラールの発言を受け、フレイヤがユージンを見る。

 ユージンは反射的に反論しかけたが、過去の発言を持ち出されると論破される可能性が高いと判断し、


「ま、男がそうっていうんならある程度はそうだろうな。仕方ない。な、ディストラ」


 対象を総体化した上でディストラに話を振り、自身の印象を薄める作戦に出た。


「俺に振らないでよ。まあ、でも人間が子供を成すためには必要なことだよね」


 そしてディストラはユージンに嫌そうな顔をしながらも、一応は加勢してくれた。

 ユージンとディストラの、破廉恥であることを半ば認める発言に、フレイヤは若干衝撃を受けつつ、生物学上は同じ男である実兄に視線を向ける。


「なに?なんの話だよ」


 しかしユングは途中から興味をなくして話をあまり聞いていなかったため、フレイヤの微妙な眼差しに眉をひそめた。

 その様子を見たゾーイが補足する。


「あ、でもさっきのフラール様の発言、お子様は除く、だよ」

「ちょっと待て今おれを子供扱いしただろ!」

「え、子供じゃん」

「違う!」


 そこから2人のいつもの口喧嘩に発展したが、宿の調査から戻ってきたライリーはもはや止めはせず、粛々とユージンとフラールに報告をする。


「小さい村ですが、一応、宿屋はあるようです。と言っても1軒しかなく、部屋数も多くないので相部屋となりそうなのですが……」


 治安の良い町では基本的に1人部屋を用意されていたフラールなので、言いづらそうにするライリーに、フラールは頷く。


「別に構わないわ。フレイヤかゾーイと同じ部屋でも。これまでだってあったじゃない」

「ありがとうございます。部屋は3部屋あるようなので、2・2・3で分かれることになりますね」

「そうね」


 ライリーとフラールがユージンに視線を向ける。一応リーダーであるユージンの意見を、ということだ。


「女子3人、俺とディストラ、ライリーとユングで良いだろ。フラールが3人が嫌なら、フラールとゾーイ、ヴァン兄妹とライリー、残りの2人だな。緊急時の戦力的に」

「別に3人で良いわよ」

「んじゃそういうことで」


 ユージンの案にライリーは頷いた。


 ◆ ◆ ◆


 小さい村なので、ユージン達が訪れたことはすぐに村中に知れ渡った。

 そして、宿屋併設の食堂で夕食を食べる一行に、好奇心旺盛な村人が話しかけてくる。


「あんたら、なんでこんな村に?」


 壮年の男性からの尤もな質問に、ユージンが返答する。


「お嬢様がこっちの方角に行きたいと言ったからだよ。特に深い理由はない」


 そう言いながらチラリと隣のフラールに視線を遣った。

 これがそのお嬢様です、と言わんばかりの視線に、フラールが村人に聞こえないように小声で反論した。


「ちょっと、それだとまるで私が我儘お嬢様みたいじゃないの!」


 ほとんど事実だろ、と思いながらも、ユージンは同じく小声で説得する。


「我慢しろ。『お嬢様の気まぐれ』は行動の理由として怪しまれずに使用できる万能スキルだ」

「何よそれ」


 完全に納得したわけではないようだが、それ以上反論する気はないようで、フラールは食事に戻った。


「そりゃ残念だったな。この村には何もないぜ。ところで、兄ちゃんはその嬢ちゃんの護衛か何かか?」


 ユージンは頷き、設定通りフラールとヴァン兄妹が雇い主のお嬢様方で、他4人は雇われ傭兵だと言った。そしてついでとばかりに、口の軽そうなこの男性に訊ねる。


「この辺りで、最近何か変わったことはないか?獣魔が増えたとか」


 この先のルートの参考になればという、深い意図などはない質問だった。


「変わったこと?特にねえなあ。ここ半年ほど、獣魔はむしろ少なくなって、最近は滅多に見なくなったな。おかげで平和なもんだぜ。なあ?」


 男性は後ろにいた仲間にも同意を求めた。

 話しかけられた男性は頷きつつも補足する。


「でも北に2日ほど行った所にある街では、最近悪魔が出るって大騒ぎだぜ」

「悪魔?悪魔に襲われているのか?」


 ユージンの問いに、村人が頷く。


「ああ。ただ、街をやたらめったら壊すんじゃなく、定期的に現れては数人を殺して消えるらしい。だから、国としても大々的に軍を派遣するのを躊躇って、中隊レベルをいくつか派遣してるけど、討伐には至っていないらしい」


 ユージンがスフィテレンドに来て始めて聞く、現在起きている悪魔による被害であった。

 勇者として悪魔討伐に赴くべきか、と考えてライリーに視線を送るが、彼は難しい顔で首を横に振った。


「この程度の散発的な悪魔による被害は、世界各地で発生している。目の前で街が襲われているならまだしも、襲われることもある、という情報で討伐に向かっていてはキリがない」


 ライリーに小声でそう言われ、ユージンは口をへの字にしつつも納得する。


「まあ、いつ現れるかわからないんじゃ仕方ないか」


 村人はユージン達の態度に首を傾げつつも、そういえば、と会話を続けてきた。


「最近というのがここ数年を含めるなら、1つ事件はあったな」

「あー、あれか。まあそうだな……」


 最初の男性が微妙に苦い顔をする。

 それにゾーイが食いついた。


「なになに?何か面白いことでもあったの?」


 どうみても面白そうな話をする表情じゃないだろ、と思ったユージンだが、話を聞くためにゾーイに聞き役を任せた。


「いや、面白くはないんだが……。1年くらい前か。当時、村で渉外役だった男が、交易品を持って外に出た後、一緒にいた奴等を撒いて、そのまま行方を眩ましてな」

「え、持ち逃げしちゃったの?」


 ゾーイの質問に、男性が頷く。


「ああ、そうしようとしたらしい。けど、その後の捜索で、村の北にある沢で馬車と一緒にそいつの遺体が発見されたんだよ。その前日の雨でぬかるんだ崖道を行こうとして落ちたんだろう。交易品は川に流されちまったみたいで結局戻らないし、とんだ災難だぜ」


 村の半年間の儲けがパーだ、と大袈裟に肩を竦めた男性に、


「その話は止めて!」


 鋭い女性の声が飛んだ。



 ユージン達が驚いて声がした方に顔を向けると、ユージンと同じ年頃の少女が立ち上がったところだった。


「クリス……」

「確証もないのにカールおじさんのことを悪者にするのは止めて!」


 いきなり内輪揉めが始まったな、と思いながら、ユージンはクリスと呼ばれた少女を観察する。


 ダークブラウンの髪に、同色の瞳で、それなりの美少女。色は違うものの、髪をポニーテールにしているところや、勝ち気そうな雰囲気が、何となくユージンにジャンヌを思い出させた。


 カール、というのは先程の男性の話に出てきた、交易品を持ち逃げしようとして死んだとされる男のことだろう。

 だがどうもそれには証拠がなく、この少女はカールの無罪を信じているようだ。


「そうは言ってもな。カールに撒かれたというケビン達の証言もあるし、実際カールは1人で沢に落ちて死んだんだ」

「ケビン達の証言だけじゃない!」


 クリスの吐き捨てるような言葉に、別の所から青年が立ち上がった。


「おいおい、俺達が嘘を吐いてるとでも言うのか?」


 二十歳過ぎくらいの青年だ。

 野暮ったい村人が多い中で、彼はきっちりと髪を揃えており、身なりも小綺麗であった。


 おそらく彼がケビンで、例のカールに同行していた1人なのだろう。


「あんた達なら平気でそんな嘘も吐くでしょうね」

「落ち着けよ。なんで俺がそんな事をする必要がある」


 喧嘩腰のクリスに対して、ケビンは冷静に返す。

 それに対する反論はなかったのか、クリスはフン、と鼻息を荒くして唇を突き出した。


「あんた達のせいでギルは……!」


 クリスはキッとケビンを睨む。

 それを受けたケビンは肩を竦めた。


「ギルバートがああなったのは別に俺らのせいじゃないだろ。それよりクリス、お前に応えるつもりのないギルバートより、いい加減俺の――」

「さよなら!」


 ケビンの言葉の途中で、クリスは身を翻して立ち去ってしまった。

 それに対して、やれやれと首を振ったケビンの視線が食堂を一周し、ピタリとライリーで止まった。


 ライリーは、一連の騒ぎにも眉一つ動かさず、頭に血が上った村人がフラールに危害を加えないかと周囲を警戒している。

 それが気になったのか、ケビンがユージンに訊ねてきた。


「なあ、君達は本当にただの傭兵か?」

「そうだけど。何か気になる点が?」


 ユージンはとぼけた表情で答えた。

 別に正体がばれたところで問題はないのだが、誤魔化せるならそれにこしたことはない。


「……いや。変なことを聞いた。失礼」


 ケビンはユージンの表情に、例え何か隠していても口を割らせるのは容易ではないと判断したのか、おとなしく引き下がって仲間の元に戻った。


「何だったんでしょう?」


 こそっと訊ねてきたフレイヤに、ユージンは首を傾げる。


「さあ。何か後ろ暗いことでもあるのかね」


 ユージンは適当に返したつもりだったが、それを聞いたユングがキランと目を輝かせたのには気づかなかった。


「てゆーか、さっきの内輪揉めはなんなの?ボク達、完全に置いてかれてたよね」


 不満そうにするゾーイを、ディストラが宥める。


「ま、色々あるんだろう。明日の朝にはもうここを発つわけだし、あまり深く関わらない方が良いよ」


「そうだけど~気になる~。ギルバートって誰よ?」

「カールの息子だよ」


 ゾーイの空に向けた質問に、最初に話しかけてきた男性が答えてくれた。


「いやあ、悪かったな。あの娘――クリスは、ギルバートの幼馴染みでな。カールにも昔から懐いていたから、あの事件の話には未だに噛みついてくるんだよな」

「なるほど。それで、そのギルバートはどこに?」


 ユージンが訊ねると、男性は居心地悪そうに目を逸らした。


「あー、まあ、うん。今日は来てねえな」


 その反応を見たユージンが周囲の村人を窺うと、男性同様、皆一様に視線を逸らす。


「そうか」


 若干の消化不良感はあるものの、この話はここまでだな、とユージンは判断した。


 ◆ ◆ ◆


 それから暫くして、村人達は自宅へと帰っていき、ユージン達だけが食堂に残った。


 食後のお茶を飲みながら、ユージンが呟く。


「少し気になるな」


 それに対してゾーイが身を乗り出してくる。


「あ、やっぱりユージンも気になる?そうだよね、ボクもちょ~気になる~☆ 父親を亡くしたことで心を壊してしまった幼馴染み。彼女はかつての彼を取り戻してもらうため、淡い思いを胸に彼に寄り添う。しかしそれを良く思わない青年が、無理矢理2人を引き離す――、こんな感じだよね!」


 あのいざこざからゾーイが妄想したストーリーに、ユージンは恋愛脳に侵され過ぎだ、と思うが、突っ込むのも面倒だったので冷静に返す。


「それはどうでも良い。村の事情に深入りするつもりはない」

「えぇっ!?じゃあ、なにが気になるワケ?」


 ゾーイと、地味にフレイヤがショックを受けていた。


「その前の男性の言葉だ。この数か月、獣魔の数が減ったと。最近は世界中どこでも悪魔や獣魔が活性化してるんだろ?その中で獣魔が減ったというのは気にならないか?」


 ユージンが、ライリーに視線を向ける。


「確かに、獣魔が沈静化しているというのは聞いたことがないな」

「獣魔を減らす、あるいは獣魔が忌避する何かがあるかもしれないってことか」


 ライリーに続いてディストラがユージンの意図を汲み取って頷いた。


「例え魔王を倒したとしても、悪魔や獣魔の脅威がすぐになくなる訳じゃないわ。もし獣魔に対する有効な何かがあるなら、ネアン帝国でも取り入れられるかもしれないわね」


 フラールも同意する。

 一方で、気になる村のジジョウをどうでも良いと言われたゾーイは面白くない。


「ボクは村のジジョウも気になるっ!」

「あ?誰得だよ」

「ボク得だよっ!」

「却下」


 ユージンのつれない対応に、ゾーイが頬を膨らまる。

 そして、ダン、と立ち上がり。


「もういい!ユージン達はそっちを調べれば良いよ。ボク達はこっちを調べるから!行くよ、ユング、フレイヤ!」


 ガキかよ、しかも2人も巻き込むのか、との年長組の心配は意外にも、


「おうっ!」

「分かりました!」


 ヤル気満々のヴァン兄妹の前に杞憂に終わった。


 そして血気盛んに宿を出て行った3人をポカンとしながら見送ったユージンは、


「……まあ、大丈夫か。ゾーイが居れば多少の危険は問題ないだろうし、フレイヤが2人の暴走を諌めてくれるだろ」


 追いかけるかどうか迷って、好きにさせることにした。


「でも、もう夜よ」


 フラールが少し心配そうに3人が消えた扉に視線を向ける。


「頭が冷えたら戻ってくるだろ。だいたい、何をどうやって調べるつもりなんだか」


 やれやれと頭を振るユージンに、ディストラが突っ込む。


「でもそれはこっちもだよね。何が獣魔に効いているかなんて、どうやって調べるつもり?」

「そうだな……」


 しばらく考え込む4人。


 その後最初に口を開いたのはライリーだった。


「元々、どの辺りに獣魔が多かったのかを村人に聞き、そこを中心に捜索するのはどうだ」

「そうだな。あとは、獣魔が減りだした時期と同時期に、些細なことでも何か変化があったかどうかだな」


 ユージンがそう言ったが、ディストラが反論する。


「それ、相当聞き込みする必要があるんじゃない?流石に旅行の護衛中の傭兵がやることじゃないと思うけど」

「お嬢様の気まぐれ作戦で――」

「何でもかんでも私に押し付けるのは止めてくれる?それでなくても私達は人数が少ないんだから、人海戦術は無理があるわ」


 2人に反対され、ユージンは肩を竦めた。


「分かったよ。とりあえず明日一日、ライリーの案で調査して、何もなかったら先に進む。これで良いか?」


 ユージンがまとめると、3人は頷いた。


「さて。それじゃ、本格的には明朝から動くとして、とりあえず宿の主人にでも話を聞いてみるか」


 ユージンはそう言ってお茶を飲み干して席を立つ。

 しかしそれにフラールが待ったをかけた。


「待って。それは私達がやるから、ユージンはゾーイ達を探してくれない?やっぱり、夜に子供だけじゃ不安だわ」

「それは良いけど……なんで俺が?」

「不馴れな土地で闇雲に探しても効率が悪いわ。この中で探知系の魔法を使えるのは貴方だけでしょ」

「そりゃそうか。んじゃ、ちょっくら行ってくるかね」


 ユージンは店の奥に行こうとしていた体を方向転換し、店の表へと向けた。


「俺も行こうか?」


 ディストラの申し出に、ユージンは首を振る。


「いや、1人で大丈夫だろ。それより、宿の主人の話を聞いた後、3人で明日の作戦を煮詰めてくれ」

「分かった」


 危険があるような土地でもないので、ディストラはユージンが言うとおり任せることにした。

 そして1人宿を出るユージン。


「さてと。索敵魔法だと大まかな種判別はできるけど、個人の識別は難しいからな。まだ精度はイマイチだけど魔力探知魔法を使うか」


 ユージンは集中し、探知魔法の呪文を唱える。


 この探知魔法は、本質的には索敵魔法と同じで、自らが魔力を発して、周囲のものを把握する魔法だ。

 ただし、個人を特定するほどの情報を得ようとすると、膨大な情報が一気に流れ込んでくることになり、人間の脳でそれを処理することは不可能となる。そのため、返ってくる情報を一定の条件でフィルタリングすることで、必要な情報を人間が処理できる量で得ることができる。

 この条件付けがかなり複雑であるため、探知魔法は様々なパターンがあり、ユージンが覚えるのも一苦労であった。


 ちなみに、ネアン帝国一とされるルキオール程の魔法士であれば、その場で条件をアレンジするということも可能であり、様々なパターンを覚える必要もないが、魔法理論を学んだわけではないユージンにそんな芸当は不可能であった。


「えーっと、ゾーイの反応は……たぶんあれか」


 ユージンは、探知魔法によって得られたおぼろ気な人間の反応から、ゾーイと思われる反応に当たりをつけて、そちらに向かって歩き出す。

 どうやら、村の外れの方にまで行っているようである。


「なんだってまたあんな端まで……」


 そう呟きながら歩くユージンを、1対の眼が闇の中から観察していたが、ユージンがそれに気づくことはなかった。


 ◆ ◆ ◆


 村の端まで歩いてきたユージンは、もはや廃屋と呼んでも差し支え無さそうな古い小屋を見つけた。


 小屋の中からは僅かに明かりが漏れており、数人の気配も感じる。が、ユージンは小屋には入らず、その裏手に回り込む。ゾーイの魔力は、この裏から感じられたためだ。


 ちょうどユージンがその裏に辿り着こうとしたとき。ばたん、と小屋の扉が開く音がした。


 ユージンはつい、悪いことをしているわけでもないのに、正面から隠れるように建物に身を寄せた。

 月明かりしかないため、はっきりとは分からないが、男性3人組が小屋から出て村の北の方に向かったようである。


 こんな小屋で何してたんだ?と思わないでもないユージンであったが、それよりも、その小屋の裏に潜んでいるゾーイ達こそ何をしている、という話である。


「おい、何してんだ?」


 裏手に回り、ゾーイとヴァン兄妹を発見したユージンは小声で声をかけた。


 突然現れたユージンに、ヴァン兄妹は驚いた様子だったが、ゾーイはユージンに気付いていたようで、驚いてはいなかった。

 しかし、唖然とした表情をしており、呆けた顔のままユージンに告げる。


「ユージン、ボク達、とんでもない村のジジョウを聞いちゃった……」

「……」


 ああ、また面倒なことになるのか。


 ゾーイの言葉を聞いたユージンはそう思いながら、深く溜め息を吐くのだった。


次の投稿は明後日の予定です。

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