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召喚勇者と七つの魔剣  作者: 蔭柚
第2章 魔剣と聖剣
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第25話 変人魔法士ロキ

前話のあらすじ:

ユージンは、双子の師匠と会いたくない!


ディストラ「それにしても広い畑だったね。ところで皆の好きな野菜は?」

ユージン「菜の花」

フラール「茄子」

ゾーイ「スイカ」

フレイヤ「蕪」

ユング「ブロッコリー」

ディストラ「え、みんな妙に渋いチョイスだね。ていうか、スイカは野菜なの……?俺は、トマトかな」

ユージン「お前……空気読めよ」

ディストラ「え!?何この白けた空気!?……はっ!まさかの、しりとり!!」


スイカは一応、定義的には野菜です。

 そして、当然のようにユージンの願いは裏切られた。


「おっかえり~ん。キミ達なら無事に任務遂行できると信じてたよ~ん。さ、早く例のブツを出せ」


 外壁の入国管理所で待ち構えていたのは、明らかに正規の衛兵ではない30代の青年だった。

 白の長髪を適当に後ろで束ね、洗い晒しのシャツにズボン、白衣のような丈長のローブを羽織った青年は、ユージン達一行の中に双子を見つけるや否や、彼等の前に立ちはだかって笑顔で右手を突き出し、上記の言葉を放ったのだった。


「師匠……なんでここに居んだよ。衛兵は?」


 ユングが非常に嫌そうな顔をする。どうやらこの青年が、双子の師匠である魔法士ロキらしい。


「いや~、そろそろキミ達が帰ってくる気配がしたから待ってたのさ!ここに居た男なら、ちょっとからかっただけで逃げていったよ。まあそんなことはどうだっていい。早く鉱石を出せ」


 この数秒の会話だけで、ユージンはロキから面倒な臭いをぷんぷんと感じていた。正規の入国審査などぶっちして、彼がこちらに興味を持つ前にさっさと逃げたい――。

 そんなユージンの願いを他所に、フレイヤがどこからか取り出した袋をロキに手渡した。

 ロキはそれを無言で受け取ると、中から水色の鉱石を取り出し、フムフムと検分しては元に戻す、という動作を数回繰り返した。

 そして袋を手品のように消してしまい、フレイヤに言う。


「ま~合格ってことにしておくよ。ホントはもっと高純度な物が良かったけど、もうあそこからはあまり出ないのかもね~」


 ユージンは、袋がどこに消えたのか気になったが、なるべく関わりたくないのでその疑問は封印する。

 そして、衛兵がいないため入国をどうするか迷っているライリーに、さっさと入ってしまって、事後報告にしようと提案しようとしたが、すでに遅かった。


 ロキは、その興味を双子からユージン達に移行し、ライリー、ユージン、フラール、ゾーイ、ディストラの順に眺めて、にぃ、と笑った。

 その笑みにうすら寒いものを感じたユージンは、遅くても良いから今すぐ逃げようとして、


「ふ~ん。キミがウワサの勇者君だね?聖剣のために来たのかな?」

「!!」


 ロキの言葉に、驚愕をありありと表に出してしまった。

 無論、それはユージンだけでなく、フラールやゾーイ、それなりに場数を踏んでいるライリーさえもだ。


 彼とユージンは、当然だが初対面だ。一言も会話をせずに勇者と見抜くには、前に双子が呼んだ幻獣の白蛇のように特殊な能力が必要だろう。

 まあ、それだけならそういう能力があったり、あるいは双子が何らかの手段で連絡をしていたかもしれないと納得できる。


 だが、この国に来た理由は双子にも告げていないし、ネアン帝国でも知っている人間は限られている。

 それを看破してきたということは、情報が漏れている可能性がある。それも、かなり上流側で――。


 ユージンとライリーが、事の重大性に冷や汗を流し、目の前の人物を警戒したところで、ロキはニヤニヤしたまま肩を竦めた。


「あっは~?そんなに睨まないでよ。こんなの簡単に分かることでしょ~?」


 そう言って、ロキはフラールを指差す。


「そこにいるのは、ネアン帝国の第二皇女、フラール殿下でしょ。何度も見てるから知ってるよ。僕は、これでも結構貴族のゴシップに詳しくてね~。お金になるから」


 ゴシップがお金になる。つまり貴族を強請ゆすって金蔓パトロンにしていると悪びれなく言うロキに、フラールがひきつる。

 それを気にせず、ロキは続いてライリーとゾーイを指差す。


「そして、ネアン帝国の上級騎士ライリー=ナダルヤ君と、一級魔法士ゾーイ=カルサイ君。それぞれ皇太子イサーク殿下と、その右腕であるルキオール君の信頼する強力な手札だ。このタイミングでそんな一行と一緒にいるのはだ~れだ?子供でも分かるよね?」


 ピッ、とユージンを指差して、ロキは笑みを深める。


「そして、勇者君がなんでわざわざ魔王への道のりを遠回りしてまでこのミッドフィアに来たの?この国の取り柄は魔法と魔道具だよね。対悪魔用の魔法や魔道具を得るため?それなはいね。この国はそれらの知識や技術を友好国であるネアン帝国や周囲の国に積極的に提供しているし、今さら帝国がそれを疑わないでしょ。もし疑うとしても役人が数人来れば良い話。じゃあなんで勇者がこの国に?残るは1つしかないよね。そう!この国に眠る聖剣で~す」


 パチパチ、と1人で満足気に手を叩くロキ。

 その様子にユージンは胡乱な視線を向けるものの、彼の理論には筋が通っていた。

 確かに、それらの情報があれば推測は容易だ。むしろ、バレないと思っていた自分達が甘すぎた感もある。


 ただ、1つユージンには疑問があった。


「あんた、他国の兵士や魔法士まで逐一記憶してるのか?」


 そう、フラールがバレるのは当たり前としても、皇太子やその右腕の手駒と言うだけで、ライリーとゾーイの名前と容姿を知っているのは納得がいかない。

 各国の要人だけでなく、その手駒まで把握しようとするならば、一体何人覚えれば済むのか見当もつかない。


 ユージンの質問に対して、ロキはこてんと首を傾げるという似合わぬ仕草をして、クスリと笑った。


「さっき言った通り、僕は貴族のゴシップに詳しいんだ~」


 それがこの2人となんの関係があるんだ、と言おうとしたユージンは、その2人の表情を見て押し黙った。

 いつも表情に乏しいライリーは更に無表情になり、ゾーイですら真顔になって冷たい視線をロキに向けていたのだ。それ以上口を開くな、とばかりに。


「(うわ、マジか。面倒臭えな)」


 これは突っ込まない方が身のためだな、と判断したユージンは、やれやれと首を振った。


「まあ、いい。あんたの言うとおりだよ。俺達は、聖剣を入手するためにこの国に来たんだ。その途中でたまたまあんたの弟子2人に会って、ここまで同行したんだ」


 ライリーが固まっているので、ユージンがロキと会話を進める。


「な~るほど~。これは運命かもね」


 運命?とユージンが質問する前に、ロキが説明した。


「知っての通り~、この国は、議会制共和国だから、聖剣が封印されている重要施設、通称『勇者のあん』への立ち入りは、議会の~承認が~必!要!です!」


 ビシィ、と両手の人差し指をユージンに向けてくるロキ。

 ユージンは心の中だけで、うっわうぜぇ、と呟く。


「そして~通常~議会の承認には~10日程度~かかるんだよね!」


 歌うかのように語尾を伸ばして、ふらふらと歩きながらロキが告げる内容に、ユージンは顔をしかめた。

 それが事実なら、この国でかなり無駄に時間を使ってしまうことになる。


 その辺りどうなんだ、というつもりでライリーを見ると、彼も難しい顔をしていた。


「最悪、外交的手段によって、フラール様の立場も利用して無理矢理時間短縮を図ろうかと考えています」


 フラールに向かってそう言うライリーに対し、フラールも状況が状況だし仕方ないか、という表情。

 だが、そこにロキが口を挟む。


「止めた方が良いんじゃな~い?こういう、形に出来ない貸しは後で高く付くよ?」


 ロキの言葉に、ライリーとフラールが渋い顔をする。

 確かに、他国の手続きを外交圧力で短縮するのは印象も悪いし、後にどんな要求されるか分かったものではない。極力避けるべき事案である。

 しかし、勇者の旅をここで数日間止める訳にもいかない。そんなにゆっくり出来る旅ではないのだ。


 それらを察しているロキが、満面の笑みで言う。


「そっこで~、僕の出番ってワケだね!」


 どういうことだ?というユージン達の視線を受け、ロキは非常に満足そうに説明する。


「実は、国の重要施設へ立ち入るには、議会が承認する以外にも手段があるんだよね。その施設の管理責任者が、特例として許可すれば良いんだよ。そして!『勇者の庵』の管理責任者は!なんと~!……そう!この僕です!!わ~パチパチ~」


 今度は口に出しながら手を叩くロキに、ユージンは白けた視線を送る。

 いくらなんでも、そんな都合の良いことがあるだろうか。たまたま旅の途中で出会った子供の師匠が、立ち入り困難な施設の管理者であるなどということが。


 そんなユージンの視線を感じてか、ロキが叩いていた手を止めてユージンを見た。


「あっれ~?疑ってる?何なら議会にでも行って確認する?結果は変わらないけどね~。ほら、ここは運命に感謝して、僕に立ち入り許可をねだりたまえ!あっはははは!」


 上機嫌なロキにユージン達が困惑していると、フレイヤがこそっと耳打ちしてきた。


「ユージンお兄ちゃん、師匠の言っていることは本当です。さっき言った通り、師匠は変なものや面白いものが大好きです。『勇者の庵』にある資料や魔道具は、師匠の興味を惹くには十分なものばかりで、あそこの管理権限も無理矢理自分のものにしたらしいです。この知識を尊ぶミッドフィアにおいて師匠は、残念なことにそれだけの権力を持ってます」


 少女が淡々と告げる内容に、ユージンは顔がひきつった。

 自分の弟子にこれだけ言われるのもあれだが、そのあれがそれだけの権力を持っていることもあれである。もはやあれがあれであれである。


 さてどうするか、とユージンがライリーを見るも、彼もロキの破天荒な態度に戸惑っている様子だった。

 まあ、性格的にライリーが最も苦手とするタイプだろう、と判断したユージンは、自ら交渉に乗り出す。


「それで?あんたが許可する権限を持っていたとしても、ただで許可してくれるつもりはないんだろ?」


 そんな生易しい性格をしているとは、とてもじゃないが思えない。貴族の弱味を握り、脅して研究資金を得ていると平気で口にするするような青年だ。

 ついでに、双子への態度と双子からの態度を見ても、清廉というよりも陰険と言った方が良い部類の人間だ。


 そんなユージンの問いに、ロキはにんまりと笑む。


「勇者君は物分かりが良いね~。そう言う子は好きだよ。もちろん、僕にメリットがないのに無駄な事務手続きが発生する特例許可なんて死んでもやらないよ」


 キッパリと宣言するロキ。

 ユングが、事務手続きをやるのは師匠じゃなくて部下やおれ達だろ、と呟いたが当然黙殺される。


「まあ?この千年沈黙を続けた聖剣がもし再び解放されるのであれば、それはそれで興味深いけど、それだけじゃね~」

「御託は良い。要求は何だ?」


 ニマニマと、鼻息がかかるほどユージンに顔を近付けてくるロキに苛つきながら、ユージンが訊ねた。

 ロキは身体を引き、人差し指を下唇に当てて少し考える仕草をした後に、決めた、と呟く。


「キミ達の旅に、その双子も連れていくこと!これに決まり~」


「「……は?」」


 ロキを除くその場の7名の感情と言葉が一致した。何言ってんだコイツ、と。


次の投稿は明日の予定です。

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