第23話 ヴァン兄妹と共に
前話のあらすじ:
たびの なかまに ふたご が くわわった!(かり)
ゾーイ「双子の魔法使い……幻獣召喚……白い龍、もとい蛇……。な~んか、何かを思い起こすような~」
ユージン「FFⅣの子供達を合わせたような設定だな」
ディストラ「え、ユージンそんなメタ発言を堂々と」
ユージン「ここはパロディ欄だから良いんだよ。ていうか、俺は日本の出身だからFFを知っていても問題はない」
ディストラ「え、なにそれ。なんかずるくない?」
設定については偶然です。後で気付きました。
ヴァン兄妹が加わったことで、ユージン達の賑やかさはさらに増した。
何せ、2人は10歳。日本でいえば小学4、5年生だ。行動範囲が広がり、何でも自分でしたがり、口も達者になり……と、生意気盛りの年代である。
特に男児にその傾向は強く出るだろうが、ユングもまさにその典型と言えよう。
ユージン達がある程度大人な対応をするために口喧嘩には至らないが――、1人だけ、大人な対応をできない少女がいた。
ゾーイである。
そもそも彼女自身も15歳で中学生の年代なのだが、性格が子供っぽいので、もう少し下に見える。
そして、それゆえユングとの口喧嘩が絶えず――。
「だ、か、ら。ボクを呼び捨てにするな~!」
「いいじゃん別に。皆もそう呼んでるし。おれとそんなに年変わんないし」
「ボクは15歳!キミは10歳!ぜ~んぜん違う!」
「え?15歳?嘘つくなよ。12くらいだろ?」
「はあぁ!?も~何なのこのガキンチョ!最初に会ったときは姉ちゃんって言ったくせに!」
「あの時はまだよく知らなかったから。でも喋ったら12歳くらいにしか思えない。フレイヤもそうだろ?」
兄に話を向けられたフレイヤが、前からのゾーイの強い視線を受けて、慌てて目を逸らす。
「え、えっと……」
その様子に、ゾーイががっくりと項垂れる。
「良いんだ。フレイヤがどー思ってるかは呼び方に如実に出てるから。フラール様は『フラールお姉ちゃん』なのにボクは『ゾーイちゃん』だからね」
「ご、ごめんなさい。ゾーイちゃんは、お姉ちゃんっていうより、お友達みたいな感じがして」
一行は、双子が参入したことで、1列の隊形ではなくなり、先頭にライリーとユージンが並び、続いてフラールとゾーイ、双子と来て、最後にディストラである。
「良いじゃねえか。友達ができて良かったな、ゾーイ」
後ろのゾーイに話しかけたユージンを、ゾーイが睨む。
「嬉しくない~。いーよね、ユージンは。幼女に『ユージンお兄ちゃん』なんて呼ばれて悦に入られるんだから」
「んなつもりはねえよ。それならディストラもだろ」
ユージンが後ろに視線を向けるが、ディストラには声が届いていないようだった。
代わりに、ゾーイが首を振る。
「フレイヤ、ディストラのこと『ディストラさん』って呼んでるよ」
「え?そうだっけ?『ディストラ兄ちゃん』って呼んでるのは……ユングだけか」
ユージンは少し思い返してみるが、確かにフレイヤがディストラを呼ぶときはさん付けで呼んできた気もする。
ちなみに、ライリーのことは2人とも『ライリーさん』である。
その会話を聞いていたフラールが、フレイヤに訊ねてみた。
「ねえ、フレイヤ。何でユージンはお兄ちゃんなのに、ディストラはさん付けなの?」
「あ、それ俺も少し気になってたんだ」
フラールの声は何とか聞こえたらしく、ディストラが少し距離を詰めて来た。フレイヤは、少し首を傾げる。
「えっと、特に深い意味はないんですけど……。もともと、わたし、優しくて頼りになるお兄ちゃんが欲しかったんです」
「ちょっと待ってフレイヤ。まるで、おれが優しくなくて頼りにならないように聞こえるじゃん」
妹の衝撃発言に、ユングが突っ込む。
「んー、お兄ちゃんは、ちょっと違うっていうか……双子だし。それに、優しくて頼りになるかって言われると微妙」
「ぐはっ」
妹の毒舌が、兄の急所を抉った!
ずーん、と沈む少年に、ゾーイですら少し哀れに思った。
「でも、それならユージンよりディストラの方が明らかに優しいわよ。頼り甲斐もあるんじゃないかしら」
フラールが、話を戻す。そしてチラリと挑発するようにユージンを横目で見た。
当然、ユージンはそれに乗り、いつもの口論が始まる。
「なにをっ。意義あり!」
「却下します」
「何てことだ、俺がこんなにもフラールに優しくしてきたというのに、まさか伝わっていなかったとは」
「よくもまあいけしゃあしゃあとそんな心にもない事を言えるわね。貴方のどこが優しいのよ」
「ほら、フラールがイサーク殿下の前で泣いたとき、優しく宥めて――」
「お黙りっ!そういうあまり思い出してほしくないものを持ち出す所が優しくないって言ってるのよっ!」
「え、あれはフラールの中では黒歴史になってるのか?兄妹の心が改めて通じ合った美しい出来事なのでは」
「物語としてはそうかもしれないけどね、当人にとってはあれを広められたらたまったもんじゃないわ」
「へーそうなんだ」
「その棒読みが苛つくのよ。そしてその顔。絶対碌なこと考えてないでしょ」
「え、俺今どんな顔してた?」
「ザ・悪巧みって顔よ!」
その見苦しい2人の言い合いを見て、フレイヤがくすくすと笑い出す。
それに気付いて、ユージンもフラールも少女に注目する。
「フラールお姉ちゃんとユージンお兄ちゃん、いつも楽しそうに騒いでて。本当にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって思ったんです」
「なるほどね。ユージンの不躾さが逆に親しみを覚える要因になったって事か」
ディストラが納得したように頷く。
「おい、さらっと俺を貶して来るんじゃねえよ」
「え?ああ、ごめんつい事実が口から出ちゃったよ」
半眼で後ろを睨むユージンに、笑顔で返すディストラ。
今度はこの2人の口論が始まるかというところで、ライリーが口を開く。
「そろそろ国境だ。我が国の側には、一応関所がある。特別なことがない限りは誰もいないがな」
道の先に、小さな建物がいくつか見えた。
そしてその左右には100mほど木製の柵が伸びており、あれが国境線なのだろう。
「特別な事って?」
「貴族などが移動するにあたって警備を強化し、人の出入りを監視する必要がある場合や、犯罪者が付近で発見された場合などだな」
ライリーの説明に、ユージンはチラリと後ろを見る。
「今まさにこの国で1番偉い身分の人が後ろにいるけど」
「フラール様は、現在は平民であられる」
もちろんユージンは本気で指摘した訳ではなく、ライリーもそれは分かっている。
ユージン達は、なるべく目立つのを避けるため、フラールの身分についても基本的に隠す必要があるのだ。
その会話を聞いていたユングが、フラールに視線を向ける。
「フラール姉ちゃんって、本当にあのフラール姫なんだよなあ」
意外そうな、感心したような視線を向けられて、フラールはやや困った顔になる。
「『あの』と言われても分からないけれど、『姫』が付くフラールは、社交界には今私しかいないわね」
ユージンが勇者であることがバレた以上、フラールの事を黙っていても仕方がないので、2人にはフラールがネアン帝国の皇女であることを正直に伝えている。
まあ、皇女と同じ名前で同じ年頃の少女が勇者と共に居れば隠しようがないが。
「ユングの気持ち、わかる~。え、話と違うじゃん、って感じ~」
「そうそれ!」
先ほどまで喧嘩していたゾーイとユングが意気投合する。
ネアン帝国の庶民だけでなく、他国の市民までもフラールの「傍若無人な我儘お姫様」という噂は定着しており、共感を得られる程度の共通認識となっているようだ。
そこで、ユージンは気になって、ライリーに小声で訊ねる。
「なあ、ライリーもゾーイ達みたいにフラールと接して驚いたのか?」
「いや、私は元々若手の頃からイサーク殿下に取り立てて頂く機会も多かったので、殿下やルキオール様の会話などから、フラール様の人となりは多少は理解していた。まあ、それでもユージンと話す時のフラール様の感情の豊かさには少々驚かされたが」
「へぇ」
ユージンとライリーが、同時にチラッと後ろを振り返る。
話題のフラールは穏やかな顔で、フレイヤと楽しそうに会話をしている。
「ま、噂は噂だよな。お、ついに関所か。ネアン帝国ともお別れだな」
話を切り上げて無人の国境を眺めるユージンの横顔を、ライリーが横目で見る。
フラールのあのような表情は、王宮では見ることはできなかった。
それは、皇族として毅然とあろうとする心構えのせいもあっただろうが、やはりあの婚約のせいだったのだろう。
先日電撃的に発表されたフラールの婚約の白紙撤回は、ライリーにも大きな衝撃を与えた。
詳しい内容は公表されていないものの、元婚約者のウラバン子爵子息は軟禁状態にあるというから、フラールに対して何か罪を犯していたと考えるべきだろう。
元々、あの2人は仲が良いという話は聞かなかったし、婚約解消してからのフラールは、あからさまに表情の角が取れていた。
そして、もう1つ公表されていないが、ライリーは確信していることがあった。
ユージンが、婚約解消に関わっていることだ。
証拠などは何一つない。
だが、「傍若無人で我儘」ではないにせよ「我が強い」事は確かであるフラールが、彼と喧嘩しながらも彼についてきていること、婚約者がいなくなったフラールをイサークとルキオールがユージンに預けていることを考えると、ただユージンが勇者であるから、という理由では弱い気がした。
皇族が抱えていた何らかの問題を解決することで、フラールやイサーク達の信頼を得たと考えた方が自然だろう、とライリーは推測している。
そして、この世界に呼ばれて間もない、まだ17歳の少年がそれを成した事に、驚かざるを得ない。
だが。
「(それでも、私は、彼を勇者と認めるわけにはいかない)」
そう考えながら、ライリーは祖国を後にするのだった。
◆小話:旅の人数についての誤解◆
イサーク「しかし、お前がジンクスを気にするとはな」
ルキオール「何のことだ?」
イサーク「勇者の旅の人数の話さ。フラールも入れて5人になれば、歴代勇者の旅の仲間と同じ人数だから、仲間にあの2人しか付けなかったんだろ?」
ルキオール「ああ、そのことか。それはちょっと違うな。むしろそうであれば良かったんだが」
イサーク「……なんだと?」
ルキオール「単純に、人材が居なかったんだよ。この旅に耐えうるだけのな」
イサーク「いやいや、それはねーだろ。魔法士は知らないが、騎士にはまだまだ熟練の人間は沢山いるぞ」
ルキオール「いや、俺とお前の権限で簡単に引き抜ける場所にいる人間で、彼の足手まといにならない人間は他にいなかった」
イサーク「足手まといだと?」
ルキオール「そうだ。もしユージン様が冷徹に仲間を見捨てられる人間だったならもう少し増やしたが、彼は仲間を絶対に見捨てないだろう。ならば、足手まといを付けるわけにはいかない」
イサーク「それでも、まだまだユージン殿よりも強い騎士はいたと思うが」
ルキオール「選定基準は、彼より強いかどうかではない。先日王宮を襲ったクラスの悪魔に1人で勝てるかどうかだ。あれに1人で勝てないようでは、いずれ必ず足手まといになる」
イサーク「悪魔に単体で、か。それは確かに厳しいな。騎士でも両手で数えられるくらいか」
ルキオール「それに、今後どこかの国で我が国には居ない人材に巡り合うかもしれない。その時に、人数が多いからお前は置いていく、ということも彼にはできないだろう。だから、少ないくらいの人数しか付けなかった」
イサーク「……結局、人材不足が切実って事か」
ルキオール「ああ。今回の件で、後任育成の重要性を切実に痛感しているよ、俺は。お前も早く跡取りを作れよ」
イサーク「嫌な話題を出すなよ」
ルキオール「この国にとってはそれも切実な問題だからな」
イサーク「やれやれ……」
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