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第6戦 VSオークの戦士



 フィーラ村の朝、三人の喧騒が村外れの建物の前で響いた。

「お前ら、どういうことだ?」

「言った通りの意味だが!?」

「悪いが謝る気は無い! 俺達は貴様よりもラフター様の頼みを優先した!」


 東の国からフィーラ村へと戻ったバイオンとプレゼン、その次の日の昼。

 バイオンとドワーフの兄弟が揉めていた。


 蛮族のバイオンは怒りに任せて吠えた。

「俺の体にあった鉄の槍を、一日あれば作っておくと言ってたじゃねえか!」

 ドワーフのガラールとフィアラルは、髭を揺らして言い返した。

「ああ、そうだ、しかしラフター様から仕事を依頼されたら俺達はそっちに行く」

「俺達、兄弟は謝らんぞ! さあ、殴りたければ殴れ!」

 バイオンの拳がそれぞれの顔面を殴り飛ばす。ドワーフ兄弟は、ぶっ倒れた。

「くそ!」


 バイオンは、かつてある国から鉄の槍を強奪していた。

 しかしバイオンの体格には小さく短い槍に過ぎず、その大きな手にも細く感じられ使い辛かった。

 その為、鍛冶場が出来たら、長くて太くて頑丈な槍を作るようにドワーフ兄弟に要請していたのである。

 今日にはできていると返答していたドワーフ兄弟。

 だが約束は守られず、手も付けていなかった。



 その代わりに作られていたのが、大きな鏡の板。

 家の前に立てられたその鏡は、ラフターの頼みでドワーフ兄弟が作った物である。

「なんだよ、これは」

 バイオンは悪態をつきながら、それを頼んだ女の元に行く。


 玄関前の階段に、女は座っていた。

 漆黒の目に漆黒のローブ、相変わらず眠たそうな目でぼーっとしている。

「おい!」

 バイオンは声をかけるが、女は微動すらしない。

「おい、ラフター、あれは何だ!?」

「あれは遠くの物を見る鏡だ」

「ああ!?」

 淡々とした口調で魔女は答えた。

「あれに魔力を通せば、遠くの物が見える。そんな覗き窓の魔法道具だ」

 鏡の周りには装飾が施されている、それはドワーフ兄弟が作った物である。

 その説明に、バイオンは納得がいかない。

「そんなもん、お前一人で作ればいいじゃねえか?」

「私なら鏡は作れる……だが土の地面にまっすぐに立たせる支えを、私は作れん。作り方がわからん」

「なに?」

「私は大工ではないんだ。設計図があればその通りに魔法で生み出せばいいが、そうでもないなら作り方がわからない」


 ラフターは最初、鏡を地面に立たせるための支えの部分の、その設計図をドワーフ達に頼んだ。

 ところがドワーフ達は、自分達が作ると言い出し、木を伐り石を割り整え組み立て、頑丈な土台を作り、細かい装飾まで勝手に施した。

 こうして一晩、立派な鏡台が完成したのだった。


 結局バイオンが何を言っても、もはや過ぎてしまった事。

 文句を言っても鉄の槍は完成しない。

 バイオンは舌打ちをして、日課の鎖投げの練習をしに行く為に森へと向かって行った。



 バイオンが立ち去った後、一人の女の子が走って来た。

「ししょーう! おはようございます!」

 赤い髪と赤い目の魔法使いの少女プレゼンである。

「うわっ!? でっかい鏡、これなんですか?」


 ラフターはバイオンにした説明と、同じ話をプレゼンにした。

「ああ、テレビってやつですか」

 プレゼンは納得する。今度はラフターが聞いた。

「テレビ?」

「師匠はご存じありませんか?」

 小さな体で胸を張り、プレゼンは得意気に説明する。

「テレビというのは電気で動いて、電波で遠くの映像を映し出す物ですよ」

「機械か?」

「はい」

 無表情な女の問いに、少女は元気に答える。

「知識の新聞に載っておりました」

「ああ、あれか」

「あの新聞ってすごいですよね。時折、世界中に無料で送られて、送った人の姿を誰も見てないんですよ? 内容は科学の他に、魔法や道具の作り方、医療や化粧品の事までいろんな知識が載ってます!」

 楽し気に話すプレゼン。ラフターは遠い目をする。

「こんな辺鄙な村にまで一刷、送られてきてたんですよ! 私もこの村の宿で集められていたのを見つけて読んでました! 知識が無料で手に入るなんて本当に凄い! 内容は記号とか数字が羅列していて、専門家にしかわからない事がほとんどでしたけど!」

「……」

「今回は拳銃特集とか、私が読んでも内容がチンプンカンプンでしたけど」

「……堕天使ってのは暇なんだな」

「え?」

 漆黒の魔女の呟きは、誰にも聞こえずに消えた。

「そういえば師匠、私は村の宿泊りなんですよ。私の家も建ててくださいよぉ!」

「お前も魔法使いなら自分で作れ」

「そんな高レベルな魔法、無理ですぅ~」













 センターナ王国より西の隣国エウトス。

 ここは現在、別の地方からの侵略を受けていた。

 攻撃してきたのはオークの軍団。

 牙の生えた醜い岩のような顔、豚の様に上を向いた大きな鼻、そして筋肉の塊のような巨体が特徴の種族だった。

 平均的な人間よりも大きく、そして高い腕力を持つ。

 エウトスの国の人々は、オークの集団と戦うも、個人的な実力差に押され敗北寸前だった。




 夜の山の合間を、五人の革鎧で武装したオークが進んでいる。

 彼らは本体のオーク軍隊とは別同隊であり、別口から人間の城へと攻め込み攪乱する予定の少数部隊であった。

 彼らは無駄口をせず、ただ自らの任務の為に崖の合間を歩いていた。

 夜の霧の山道は彼らの姿を隠し、ここまでは順調に五人の巨体を任務に進ませていた。



 静かな夜の道。

 崖の間を歩くそのオーク達の前に、その足元に突然、燃える松明を投げ込まれる。

「誰だ!?」

 夜を照らす炎に驚くオーク。

 続いて、薄い霧の中からもう一つの明かりである松明を持った鉄仮面の男が現れた。


 右腕から鎖を垂らし、左手には鉄斧。全身を革でつないだ鉄鎧で包んでいる。

 ワープされてきたバイオンであった。

 明らかに戦意があり、鉄仮面の奥のぎらついた眼がオーク達を睨んでいる。

「人間共の戦士か!?」

「一人で我らに立ちふさがるつもりか!」

「……待て、お前達!」


 町を破壊するためのハンマーや斧を手にしたオーク四人が、隊長の言葉を無視して突撃する。

 戦で高揚していた事、隠密行動であり本体の部隊を助ける為に早く移動しなければならない事、それらがオーク達を急かしたのである。

 迎え撃つように自らの足元に松明を投げ捨て、鉄仮面の男が鉄斧を構えたのも彼らに対する挑発となった。


「罠の可能性を考えろ!!」

 突撃する四人が隊長の大声に、動きを止める。

 左右を崖に囲まれた道、霧によって遠くが見えない場所。

 陽の落ちた夜である事も踏まえて、松明の明かりが互いを標的として輝かせる状況。

 一人だけで道に立ちふさがっているのも、怪しさを増幅させた。


(崖の上から、あるいは夜霧の向こうから、それとも地面に落とし穴が?)

 四人のオークは周囲に視線を巡らせる。意識を道の先の鎧の男から逸らした。

 だがそれが悪手だった。


 鉄斧をぶん投げるバイオン。

 意識が散漫だったのもあり、巨体ゆえに避けきれず、一人のオークの革兜の上へと斧が直撃した。

 さらに間髪入れず、鎖を引っ張って斧を手元に引き寄せながら、鉄仮面の戦士がオーク達に走り出す。

 戸惑うオーク達だが、とにかく目の前の敵を倒さんと前に出る。


 相手はおそらく人間、だがその体格はオークと遜色無い。

 オーク達に戦闘に置いて連携は無い、その恵まれた体格を振り回すだけで相手をなぎ倒せるからである。

 真っ向からの激突となる。


『一瞬、横を向いて相手を惑わせろ!』

 バイオンの耳元でドワーフの大声が届いた。

(これ、うっせぇな)

 走りながらバイオンは愚痴る。

 バイオンは走る途中でその顔を横に向けた。

(!? やはり罠が!?)

 釣られて、オーク達もその視線の先を追う。


 鉄斧を振りかざしバイオンがオークにとびかかった。

 目前から意識を外していたオークの一人は手持ちの斧で防ぎきれず、その一撃で頭を殴られ地面にひれ伏す。

 中央のオークがやられ、戸惑う左右のオーク。

 片方に鎖が飛び、その背中と腰に巻かれて無理やり引っ張られる。

 引き寄せられたオークが、もう一人のオークへと押し付けられた。


 ハンマーを振り上げようとしたオークが、押し付けられたオークに動きを止めた。

 二人が重なった、その背中をバイオンの拳が撃ち抜いた。

 ゲロを吹き出し、ダメージに気を失うオーク。

 抱きとめたオークは気絶した仲間を横に置いて、鉄仮面を見る。

 だが一歩遅く、その顔面へとバイオンの蹴りが飛び倒れる。こうして瞬く間に四人のオークが地面にひれ伏した。



「うおおおーーっっ!!」

 大剣を持った戦士長のオークが、味方を守るために叫びながら特攻する。

 バイオンはその攻撃を鉄斧で防ぐ、だが続いてのタックルで後ろに下げられ、距離を取らされる。

 松明の光で照らされたお互いが武器を構えた。


 オークの戦士長は今までの戦いからバイオンが単独でも強く、他人の力を必要としていない事から罠の可能性が低いと見た。

 自分の判断のミスを拭う為に、バイオンへの敵意を強める。

 睨まれたバイオンは、鉄仮面の奥で笑いながら鉄斧を構えた。


 二人が崖の合間、地面の松明の炎だけが照らす夜霧の中を交戦する。

 鉄斧と大剣がぶつかり鍔競り合いとなり、距離を取ってはバイオンの鎖がその頭を狙う。

 それも剣ではじきながら、オークの戦士長は焦る。



 オーク達は隠密行動中であり、金属音が鳴る鉄鎧よりも革の防具を選んできた。

 さらに倒れたオーク四人を戦士長は守らなければならなかった。

 鎖付きの鉄斧が飛んでくる、味方に当たらないように大剣で防いだ。


 オークの戦士長は焦る。部下を守らなければならない、相手が部下を攻撃してきたら殺される。

 鎧が自分が革で相手が鉄なのも、戦士長に不利を感じさせていた。

 自らの判断が間違った事が責任であると、自分を責めた。

 鎖を引っ張り鉄斧を回収、また中距離から鉄斧を投げるバイオン。戦士長は味方に当たらないように剣で弾く。その度に戦士長の手がしびれた。


 己が自責と戦士長としての責任。武装の差から長期戦を嫌った。何より少数であれ、部隊を任せられた隊長として、そのオークは部下を守る必要があった。


 オークの戦士長は、倒れた味方達の方向、自分の背後の地面に大剣を突き立てる。

 そして腰を落とし、両腕を広げた。




「あれは何しているんですか?」

 夜のフィーラ村。その外れの家。

 焚火を囲みながら椅子に座る、ラフターとドワーフ兄弟とプレゼン。

 大きな鏡にはバイオンとオーク戦士長の戦いが、映し出されていた。

 プレゼンは相手が武器を捨てた事に、首を傾げた。


 ドワーフの兄ガラールが答える。

「ありゃ、投げて来た鉄斧を素手で受け止めるつもりだ」

 その答えに、ますます首を傾げるプレゼン。

「何でですか? 受け止めそこなったら倒されますよ?」

「おそらく相手の武器で味方が倒れるのを防ぐためだろう」

 弟フィアラルが続けて答える。

「分の悪い賭けだが、このまま戦いが続けば味方がやられる。守りながら戦いきれない、故の挑発だ」

「バイオンさん、無視して他のオークを攻撃したり鉄斧で突撃したらいいじゃないですか?」

「だからこその分の悪い賭け、ここで自ら不利な状況を演じて、鉄斧の投擲を選ばせてんだよ」

 髭の多いドワーフが、ドワーフの鉄斧と鉄盾を売った金で、酒場から買って来た酒を飲みながら、戦いを観戦する。

「さあバイオン、この挑発をどうする?」

 楽しみながら見るドワーフ兄弟。

 その横で眠たそうな目でラフターが、鏡を見ていた。




 鉄仮面の奥で、バイオンはにやりと笑った。

 右手の鎖をほどき、そして自らの鉄斧を、自分の後方に捨てた。さらに鉄仮面も脱ぎ捨てる。

 唖然とする敵オーク。

 そしてその意味する事が分かり、青筋をこめかみに浮かべて憤慨した。




 武器を捨てたバイオンの行動に、驚く赤い魔法少女とドワーフ兄弟。

「あれは、相手が武器を捨てたから、正々堂々と自分も武器を捨てたんですか?」

「違う!」

 プレゼンの質問を、ドワーフ兄弟は驚きの顔で否定した。

「あれは……馬鹿にしている!? 相手の味方を守るための決死の行動を、その程度誰でもできると、馬鹿にしている!」

「えげつねえ!?」 


 鏡の映像では怒ったオーク戦士長と、晒されたいかつい顔で笑うバイオンが、それぞれ同じ速度で互いに歩み寄った。

 そしてお互いが目前となった瞬間。

 互いの右ストレートが、相手の顔面をぶち抜いた。




 崖の間、夜の霧、倒れた四人のオーク、照らすは地面に落ちた二つの松明。

 そんな中、二人の巨体の男が殴りあった。


 顔面に何度も拳が入り、口の中が切れて血反吐が飛び、歯が折れる。

 腹の一撃で胃液がこぼれ、回し蹴りで体勢を崩し、しかしすぐに立ち直り蹴り返す。

 お互いの攻撃が入るたびに、反撃で殴り飛ばす。

 互いの筋肉の軋みが、殴る裂帛の音だけが崖の間に響いた。


 お互いがお互いの掌を合わせて、両手それぞれで力いっぱい握り合い、さらに額を押し付け合い、力比べをする。

 互いに手を握り潰さんばかりに力を籠め、頭を中心に相手を地面に押し込もうとした。



 オークの戦士長は背負うものがあった。

 部下の四人のオークはもちろん。

 自分達の仲間を助ける為にも、城への奇襲を成功させねばならない。

 戦士としての誇りがあり、戦いの矜持があった。


 対してバーバリアンのバイオンには何もない。

 感情だけで動いているだけの蛮族である。

 オーク達を襲ったのも、たまたま出会ったからに過ぎない。

 信念を持った戦士に比べて、あまりにも下衆であった。


 しかし、そのうえで。

 バイオンはオークの戦士長に押し勝っていた。


 心の強さは現実の強さを、さらに強くする。

 だがそれは力の上乗せでしかなく、絶対の強さではない。

 感情を足して、なおオークはバイオンに勝てなかった、それだけである。


 歯が軋まんばかりに力を籠めるオーク。しかし背中が徐々に地面に近づく。

 そして力負けし、オークは地面に倒された。

 そのままバイオンの拳が離れ、そのオークの岩のような顔を上からぶちのめしたのだった。






 気絶した五人のオークを無視し、ハンマーや斧や大剣を鎖で自分の体に縛り付けて奪っていくバイオン。

 当初の目的である守護神の下へと、松明を持って歩いていく。


『そうだ、そっちの岩壁の先だ』

 耳元に届くラフターの声。それに先導されたバイオン。

 岩に隠れていた小さな洞穴、そこを這って進むと地下への穴があった。


 奥に進むと巨大な洞窟に繋がる。バイオンは松明を手に進んでいく。

 神の位置が大雑把にわかると言うラフターの指示の声を聞いて、バーバリアンは血まみれの顔のまま洞窟探索していた。

「ここに守護神がいるのか?」

 金属の音を立てながら、すたすたと歩くバイオン。

 それを鏡越しに見守るラフター達。




 すぐに行き止まりに着く。

 そこには一匹の犬がいた。

「また犬か? こいつが守護神か?」

 バイオンは松明を持って近づいた。

 その犬の姿に、さきほどまで先導していたラフターが絶句した。


 それは長い毛のそこそこ大きな犬だった。

 黒い体で毛のせいで目と口が隠れている。しかしただの犬だった。

 ただその犬は、黒い霧を少量出しながら、自分の尻尾を追ってぐるぐる回っていた。

 ただひたすらぐるぐる回っていた。


『バイオン、帰れ!』

 ラフターが命令する。

「ああ?」

『創造神め、一体何を基準に守護神を選んでいるんだ? ただの怪物じゃないか!?』

「怪物?」

 バイオンはもう一度、黒い犬を見る。

 松明に照らされた黒い犬は、未だにぐるぐる回っている。

「ただの犬じゃねえか?」

『四凶のコントン……』

「は?」

『バイオン、お前が善人でなくて良かったな。そいつは会話なんてできない、早く帰れ』

「なんだよ」

 ラフターの命令に愚痴りながら、バイオンはその空間から消えた。

 バイオンがいなくなって一匹になってからも、洞窟の中で黒い犬はぐるぐる回っていた。






 エウトスの城に、夜襲を仕掛けたオークの軍団。

 だがその先頭を進んでいた、軍団長が倒れる。


 倒したのは銀の髪の少年剣士。

 団長が倒れ、恐慌状態になったオーク達は四散して逃げ出した。

 追い打ちをかけるエウトスの人間の兵士達。

 オークを追い払った事で勝鬨を上げ、兵士達は武器を掲げて喜んだ。




 エウトス城に戻った少年剣士は、一人与えられた部屋で項垂れていた。

 ただ自分の手を見て考えていた。

「なに黄昏ているの、トラト?」

「……フレンデ」

 魔法使いの恰好をした茶髪の勝気な顔の少女が、少年に声をかける。

「相手のオーク団長を無傷で倒して大金星じゃん。王様も喜んでいたよ、勇者トラトって!」

 笑顔のフレンデ、しかしトラトは落ち込んだ顔のままだった。

 悩んだ顔のまま、相棒である少女に少年は相談する。

「ねえ、フレンデ。戦わないといけないのかな?」

「トラト?」

「戦争なんかしないで、オーク達と話し合いで解決できなかったのかな?」


 その言葉に厳しい顔で、フレンデは叱った。

「バカ言わないの! 戦わなきゃ、みんな死んでたよ!」

「でも」

「でもじゃない、トラトは優しすぎる! そんなので村の仇を打てると思ってるの? 私達は魔王を倒すんだから!」



 トラトとフレンデは幼馴染であり、共に同じ村で過ごした。

 だがそこに魔族達が攻撃を仕掛けて来たのである。

 幼いトラトとフレンデは、両親が命懸けで守ってくれたおかげで助かった。

 育った二人は魔族に、そしてそれの上に立つ魔王を倒すべく、その居城を探す為の旅に出たのである。今回は攻められている城を見つけ、苦しんでいる戦えない人々を無視できず、トラトはエウトスの国に助力したのだった。


「トラト、心を鬼にしなくちゃ、魔王を倒せないよ!」

 フレンデの言葉に、しかしトラトは首を振る。

「ごめんフレンデ、分かっているんだ。でも……」

「……トラトは優しすぎるよ」

「……ごめん」


 二人だけの部屋の中で、ただ静寂だけが流れる。

 外から、祝勝会で浮かれる、騒がしい人々の声だけが響いた。



バイオンは視線誘導を覚えた!


オーク:妖精・邪霊の一種。ベオウルフに出る怪物オーク・ナス、海の怪物オルカ、オーガのどれかが元ネタ? 豚顔にするかしないかで悩んだ。ウィキペディア見たけど、日本だけではないのか豚顔。

渾沌こんとん:中国神話の四凶の一体。全身を毛で覆われた黒く大きな犬。悪人に媚びて、善人を食らう。

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