第114戦 VSアサシン
今から四十年ほど昔の話。
世界を見て回りたくなったセンターナ王国を担当する女神は、自らにかかった国を出られない結界をあっさりと解いて外に出る事にしたのだった。
百年前に生まれて、六十年間フィーラ村に隠れ潜み、馬鹿正直にこの国に対して恩恵を与えてきた女神。
それ自体は女神は嫌いではなかったが、それでもやはり飽きてきたのである。
女神は今まで、調子に乗って四方の隣国にまで己の恩恵を与えてきた。
何も無い作られただけの己という存在を満たす為、女神は自己顕示欲が強かった。
女神特有の目立ちたい、人々に感謝され信仰されたいという強い気持ちを持っていたが、同時に冥府の女神であった為に目立つのを嫌っていた。
この女神は真っ向からの愛情は不愉快だが、陰では愛されていたいという歪んだ気持ちを持っていたのだった。
女神は国を挙げての感謝など、嫌悪の対象であった。しかし穏やかで静かな感謝は求めていたのである。
ゆえに隣国にまで己の恩恵を与えていた女神。もちろんその裏には、感謝されたいという気持ちがあった。
しかし時が経つにつれて、その行為を失敗だったと思うようになる。
もしも逆の立場ならば、己の領域を侵されたと怒るだろうと女神は気付いたのであった。
だからといって今さら止めても、急に恩恵を失ってしまえばどんな反応が返ってくるかわかったものではない。
しかし六十年経った今でも隣国からの反応が無いため、女神は止めるに止めれない状況だった。
それらの打開も含め、彼女は世界中の守護神を見て回る事にしたのであった。
そして転移した遠くの国。
そこの人々は、飢えていた。
それを見た転移してきた女神は「ここの守護神は何をしている」と怒りながら、魔法で大量の食糧を人々に与えたのであった。
するとそこに空間を割って、悪魔が現れた。
悪魔は告げる。
「容易く物を、社会を作る集団に対して与えるのは、彼らの進歩を滞らせるので止めろ。それなら食料の取得手段を教えてやれ!」
女神は怒られたのであった。
それから四十年後の今、フィーラ村の外れの深夜。
秋風の吹く場所に、あの時と同じく女神と悪魔が向かい合っていた。
女神の名はラフター。かつてはヘカテーという名前を与えられた冥府の女神である。
そして悪魔にもまた、固有の名前があった。
しかし悪魔は名乗らない。名前にそこまでの価値を感じてはいなかったからである。
「魔王、か」
悪魔は、その言葉が誰に対して問われた言葉で、何を聞きたいのかを理解したうえで、答えた。
「わからない」
「……貴様の同僚ではないのか?」
眠たげな顔のラフターの問いかけに、二つの目玉の付いた黒い影は目を閉じた。
「同僚ではあろう、だが我ら、横の繋がりはほとんどない」
ラフターは眉を顰める。
「どういう意味だ?」
「言葉通りの意味だ。我らはかつてこの世界の創造者たる主より作り出され、人を導くように説かれた」
悪魔は一度言葉を切り、また続ける。
込められた感情の有無が、目前で聞いていたラフターにも理解できなかった。
「しかし我らは人を導けなかった。なぜなら我らは人がどうすれば幸福になるのか、さっぱりわからなかったからである」
「ああ、そうだったな」
知性をかつて求め蓄えたラフターは、その事を知っていた。知った上で理解できていなかった。
悪魔はラフターに答える。
「ゆえに我らは、遠く離れた星の人々が求める存在である神々、そのコピーたるお前達を作り出した。お前達ならば人々を導き、幸福にできると考えたからである」
「……そうだったな」
「しかし堕落はいけない。与えられるだけの人間は、何もしなくなる。我らはかつてその間違いを犯した事がある。それは導きでは無く停止である」
ラフターはその言葉に対して反論はしなかった、それ自体は理解できたからである。
「それで、横の繋がりが無いとは?」
「言葉通りの意味だが?」
本来、聞きたかった事を聞き直したラフターだったが、しかし悪魔からの返事は変わらない。
「他の悪魔が何をやっているのか知らない。もしかしたら協力して動いている者もいるかもしれないが我には分からない」
「同じ魔界に棲んでいるのにか?」
「違う」
二つの目玉は、その目を細めて横に振る。
「悪魔の数だけ魔界がある。なにせそれぞれが己で世界を作ったのだからな」
「ちなみに我が魔界は機械の生産を主にしている。主にネジやドライバーなどの製品を、万を超える我が魔界の工場で作り上げて組み立て、そして人に提供する。悪魔が渡しているなどと人に理解されない様に隠れてだ」
「……ほう?」
「将来的には、人間にこれらを作る工場をこの星に建設してもらう事が我が望みである。……しかし百年、いくつかの工場はようやく人の手でこの星に建てられたが、予定よりはるかに人間の進歩が遅い!?」
悪魔は、夜の闇に浮かぶ暗黒は、その目で漆黒の魔女を睨む。
「やはり、魔法の存在が、科学の進歩を損なっているのではないか?」
ラフターはそれに対して動じず、見つめ返した。
「なら殺すか?」
十一月の冷たい秋風が、二人の間を吹きすさぶ。
たった数秒の、しかし長き間、二人は緊張感の中にいた。
「……必要無い」
悪魔は目を閉じた。
「まだ百年、結論を出すには早すぎる」
悪魔は空間を裂いて、己の作り出した魔界へと帰って行く。
「待て、話はまだ終わっていないぞ!」
ラフターは手を伸ばし、魔法を使用して悪魔の動きを止めようとした。
しかし悪魔は見えない壁を生み出し、魔法の干渉を止めたのだった。
「魔王に関しては我は知らぬ。しかし我ら悪魔の中の誰かであろう。だが我はそれを止める事も、止める手伝いをするつもりもない。なぜなら魔王の破壊行為が、人の幸福につながるかもしれないからな」
フィーラ村外れ、五軒の家が並ぶ場所。
草原を風が吹き草を揺らす。
悪魔は過ぎ去り、その場にはただ一人の魔女が立っていた。
眠たげな目を見開き、漆黒の魔女は夜空を見上げる。
「貴様らでは無理だ、悪魔よ。なぜならお前達は痛みも苦しみも知らない、理解できない。そんなお前達に幸福な世界は作れない」
魔女はこの世界に対して、吐き捨てるように告げる。
「私が世界の全てを統治する。お前ら悪魔も排除してな」
ラフターは振り向き、自らの家へと戻って行ったのであった。
十一月十五日、夜のエウトス王国。
篝火の焚かれた街の端にある兵営から、一人の男が出てきた。
「じゃあ、後の夜回りを頼んだぞ」
「はっ、隊長、お疲れさまでした!」
「おう」
少しばかり疲労感を刻んだ顔の中年の男性。彼はこの国の兵隊長である。先ほどまで国指定の軽鎧を着ていたが、現在は自前の簡素な布の服を着ていた。
戦争の匂いが、一気に強くなったエウトス。
五か月前のオークとの戦争でも困難を極めたが、今度は大国であるカントラルが相手である。
次々と訪れる脅威にこの国の者達は恐怖し、他国に逃げ出す者も珍しくはなかった。
「もっとも、国内に兵士を派遣するのもままならず、重要地点だけを見張るので精一杯の今の状況。モンスターや野盗に襲われずに他国に逃げ切れるかどうか……」
夜の賑わいを感じるが、以前よりも活気を失ったエウトス城下町。
先の事を考える程、兵隊長は気を重くする。
「……しかし、悪い事ばかりではない。ようやくこの国の守護神様が重い腰を上げたらしいな」
昨日の昼、エウトスとカントラルの属国サボーダネイトの間の国境に、長大なる鉄の壁が突如現れた。
カントラル軍よりこの地を守るそれは、もはや守護神の仕事だとしか考えられなかった。
エウトスにもかつて、守護神が確かにいた。
二十年前までは、毎年当たり前のように豊作であり、病死や事故死は無く、モンスターなどの心配も無かった。
おかげでエウトスの進歩が他国よりも遅れたが、さすがにそれに文句を言うのは筋違いである。
だが二十年前、唐突に神の恩恵はこの国より無くなったのである。
誰も神の姿を知らない。何か問題があったのかと国中を探し回ったが、結局何も見つからない。
見つけたのは、見ているだけで不快感のある不気味な犬だったが、あれが国を守り続けた神様のはずが無いと国の者達は判断していた。
神より見捨てられたこの国。その日以来、日々生存の為に尽力し耐え忍ばねば生きていけない状況であった。
そして苦難は続き、今はカントラルに攻められている。
「だが神の守りは現れた。もはやこの国が侵略される事はあるまい、……きっと」
なぜ今まで神が姿を見せなかったのか、それは理解できない。それでも兵隊長は楽観的に考えていた。考えようとしていた。
そうやって希望でも持っていないと、やっていられない状況だった。
兵隊長の男は、とりあえず麦酒でも飲みに行こうと酒場へと向かった。
その途中の夜道、家々が並ぶ人気の無い場所。
「……はぁい、お兄さん?」
陰に隠れていた一人の女が、兵隊長に話しかけてきた。
艶のある長い髪、化粧で飾られた顔、媚びるような微笑、大きな胸とその胸元を開けた服装。
(娼婦か)
兵隊長は、その姿を目踏みして即座にその女性の正体を理解する。
(俺の立場を知った上でか? しかし今は私服であるし、そもそもこちらの道に行くのはたまにだ。先回りは出来ないだろうし、たまたまだな……)
香水の匂いに彩られた女は、男に警戒心を与えない歩行速度で、ゆっくりと近寄りて話しかける。
「ねぇ、貴方? 今夜は一緒にどうかしら?」
女の合図でもあるウインクに兵隊長は悩む。だがしばらくして、考える事を止めた。
(まあ、どうせ、明日は、休みだしなぁ。こいつも乗り気であるし、問題は無いだろう)
独身でもあり、想定される金額の支払いを考えて余裕がある。
それ以上に女の顔に、それ以上にその肉体に、男は情欲を刺激されて目を離せなかった。
女の媚態に唾を飲み込み、男は己に言い訳しながら、女と共に夜の宿へと向かったのだった。
香水の匂いが充満する宿の一室。
ベッドには虚ろな目をした男が、ぼそぼそと言葉を放っていた。
その男は先ほどの兵隊長であり、たくさんのお酒を飲まされてアルコール臭を漂わせる。
その横でさきほど男を連れ込んだ女が、話を聞きながら不満な顔をしていた。
「……駄目ね」
軍の状況や、城の内部の情報を記憶しながらも、女は口を尖らせる。
「守護神に関する情報は無いわね。やっぱり城の上位の者を誘わないといけないわねぇ……?」
目的の情報が無い事に少し落ち込む女。
「……もういいわ。この隊長さんには後で階段から転んで死んでもらいましょう」
女は虚ろな兵隊長にかけていた魔法を解いた。
男はそのままベッドに倒れて、眠った。
「目ぼしい情報は、もうないわねぇ。一度カントラルに戻ってエクプレネス様に会いに行こうかしら?」
娼婦の恰好をした彼女。
彼女はカントラル王国から訪れた諜報員であり、魔法を使って情報を集めていた。昼の間に兵隊長を確認し、出ていくその夜道を先回りして待ち伏せしていたのであった。
「そもそも戦争が行き当たりばったりなのよ。もう少し事前に相手国に混じり込んで、裏から混乱させておかないと、力押しで嫌ねえ」
現在のカントラルに対する愚痴を言いながら、女はベッドの男を始末しようと立ち上がった。
女は部屋の外、通路に人の気配を感じた。
「……!?」
女は驚く、何故ならその気配が唐突に生まれたからである。
(気が抜けて見落としていた?)
女はベッドの男を放っておいて、気配を殺して扉に近づく。
扉に耳を当てるが、気配が動かない。女は確認の為に、ゆっくりと扉を少しだけ開き、そこから顔を覗かせた。
誰もいない暗い通路。ランプの明かりが薄暗く光る。
音もたてずに扉をゆっくりと開き、その通路へと視線を女は送った。
扉が強く外側から開かれる。
先ほどまで姿が無かった全身鎧の大男が、通路に立っていた。
「!?」
もたれかかっていた扉が急に開き、女はびくりと体を震わせる。
その女の顔面に、大きな男に鉄のガントレットに包まれた左拳が飛び込んできた。
「っなあ!?」
女は間一髪その攻撃を避ける。
部屋の中に戻ると、そのまま窓ガラスを突き破って外へと飛び出した。
男は部屋を粉砕しながら、女を追いかける。
大男の体当たりで、容易く粉砕される窓周囲の宿の壁。飛び散る木片とガラス片。夜の町の石の通路に転がる女は、追いかけてきた巨漢に驚きの顔を向ける。
夜の町中、鋼鉄鎧の鉄仮面の大男と、みだらな格好の女が向かい合った。
驚きと怒りが混じった感情が、女の顔を歪ませる。
「お前は!?」
「死ね」
大男バイオンの右腕が振るわれて、その度に鎖が鳴り響いた。
女は素早く下がり避けながら、手を向けてバイオンに対し魔法を放つ。
バイオンの視界が歪み、地面が渦を巻く。
幻惑がバイオンの頭を狂わせる。
しかしバイオンの腕に巻かれた、惑いを封じる紐がそれをすぐに解除した。
バイオンの連続の拳、女は跳び下がりながら毒塗りの針を顔の隙間に三本飛ばす。
しかし夜の闇に紛れた黒塗りの針を、バイオンはあっさりと認識して首を動かし兜で防いだ。
腰布から抜き取ったトマホークをバイオンは振り回し、側にある家の壁を刻み、街路樹を破壊する。
しゃがみ、転がり、女は避けた。
バイオンはダガーを投げつける。
肩にかけていた布を振りかぶり、そのダガーを女は弾かんとした。
しかしダガーの威力は想定を上回り、女のむき出しの腕に傷をつけた。
「っこのぉ!?」
地面に落ちた枯葉をまき散らし、姿隠しの魔法で女は姿を消した。
『左の通路に逃げ込んだぞ』
フィーラ村にいるラフターが、バイオンの脳内に声をかける。
バイオンが飛び掛かり、トマホークを叩きつけた。
女は冷や汗を掻きながら、眼前に振り下ろされた刃物を横に跳んで避けた。
「速ええな、おい?」
攻撃をことごとく避け続ける標的の女。鉄仮面の奥でバイオンは、不快ながらも笑みをこぼす。
女は全身に汗を掻き、服と髪を乱しながら、バイオンを睨んだ。
「こっちの攻撃が全然効かないし、どうやら、このままじゃ逃げられない様ね。あんまり手の内晒したくないのだけれど」
女は魔法を発動する。
女の体が三人に分裂した。
そして三人は別々の方角へと逃げ出す。
バイオンはすぐにトマホークを投げて、その一人の背中を刺し貫いた。
魔法で作り上げた偽物の肉体が、そのまま消滅する。
「ちぃっ!?」
バイオンは直感でもう片方の女へと向かって走り出す。
女は家の壁を素早くよじ登り、屋根裏へと飛び乗った。
屋根の上を走る女を見上げながら、バイオンは家の間の通り道を走り、そして左腕のガントレットを女に向ける。
飛んでくる火や氷の魔法弾、女はそれを避けつつ逃亡する。
しかし突如、反転して家から飛び降りた。
「なに!?」
町中を追いかけてきたバイオンの元へと女は走る。
拳を振りぬくバイオンだが、女は身を低くして巨漢に特攻する。
そして女は、持っていた爆弾で自爆した。
町中で起こる大きな光と煙、そして爆音。
家の明かりが次々と灯り、人々の騒ぎ声が鳴り響いた。
爆破の衝撃により石の地面に亀裂が走り、近くの壁が破片によって傷つき、ガラス窓にヒビが入る。
分身による自爆特攻を受けたバイオン。
「ちぃ!」
爆弾は金属片等が入っておらず、爆発力もそこまでではない小さな爆弾。一般の人間なら爆発の圧で倒れるが、防御で固めたバイオンにはそこまででもない。
多少よろめくだけでダメージは薄い。しかし標的に逃げられたと思い、巨漢は舌打ちした。
「動かないで」
女の声に、バイオンは振り向く。逃げられたと思い込んでいた為、少し驚いてしまう。
さきほどまで静寂だった夜、何が起こったのかと騒ぎ立つ町角。
女はバイオンより少し離れた場所で、小さな子供をその手に掴んでいた。
その子供に対しナイフを突きつけていた。
「大男と、そして元国王アジニス。久しぶりね」
バイオンのその後ろにいる、背中に背負われた鉄籠の中の少年。今は仮面を被り布で包まれた少年が、呟くように答えた。
「暗殺騎士団の副隊長、コンフュス」
「ええ、元国王?」
クスリと女は笑う。手の中の子供にナイフを向ける。
子供は怯えて、涙目で声を殺していた。
人々の声が聞こえ始める場所で、女はゆっくりと口を開く。
「時間も無いわ。あなた達に聞きたい事があるの?」
バイオンは気にせず突撃した。
「な!?」
女は慌てて、子供をバイオンの下へと突き飛ばす。
子供は魔法で作られた幻の存在。ラフターは分かっていたので、バイオンの行動を止めなかった。
そのまま幻覚の子供はバイオンへと飛び掛かり、触れた瞬間持っていた爆弾で爆発した。
しかしその爆発は二度目。予期していたバイオンはその衝撃を耐えきり、煙を振り払い女に殴りかかった。
上へと跳び、その攻撃を避ける女。
しかしそのパンチは威力弱めのジャブ。追撃のアッパーが女を襲う。
拳が女を突き上げる。上空へと吹っ飛んで、女は家の屋根へと落ちた。
屋根を破壊して、倒れ込む女。見るからに大きなダメージを受けており、屋根の上で仰向けになって倒れている。
「動くな!」
その横に、茶髪の女魔法使いが立っていた。
少女の名前はフレンデ。銀色の髪の剣士トラトの、相棒の魔法使いである。
騒ぎに飛んできたフレンデ。一応は味方であろうバイオンが戦う相手であり、スパイが確実にいるだろうと以前から思っていた彼女は、女の正体を何となく理解していた。
見下ろす少女。女はそれを見上げてため息をついた後に、少女を無視して声をあげる。
「エクプレネス様のお気に入りのアジニス、そしてエクプレネス様を傷つけた大男。……お前らはいずれ私が殺す!」
屋根の上の女が爆発した。
横にいたフレンデは魔法のバリアを瞬時に張り、その攻撃を防いだ。
敵の気配の無くなった、町中。
侵入者であった女の本体はどこにも気配が無く、どうやら逃げられたのだとバイオン達は理解した。
「おい、ラフター」
『地面に下水道への道がある。お前では狭くて通れない』
「そうかよ」
逃げられた事に敗北感を受けた巨漢は、それ以上喋らずにその場を立ち去り、トマホークとダガーを回収しに行った。
「全く」
家の屋根の上から、周囲を見渡すフレンデ。
夜の町は三度の爆発により、無茶苦茶になっており、野次馬や兵士達が集まってきていた。
「どうするのよ、あんたたち、これは……っていない!?」
標的に逃げられたバイオン達はさっさとフィーラ村に戻った。
兵隊たちから話を聞かれたフレンデは、ただバイオン達を恨めしそうに思いながら、カントラルの者の侵入を告げたのだった。
下水道から逃げた女が一人、息を吐く。
「許すものか」
女コンフュスは姿を崩す。
そこにいたのは醜い顔の男だった。
「我が主、エクプレネス様を傷つけたお前をな!」
バイオンは今回も特に無し!