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警視庁特殊犯罪対策室  作者: 伊野 暁悠
3/4

3年B組 自己紹介

教頭が帰った後、私は敦に怒られた。

教頭先生に対してどんだけ酷い態度だったかを。

私はそれを無視した。

「ねぇ、敦。」

「なんだ?まだ怒らないといけないのか?」

敦の背後に仁王が見えるのはたぶん幻覚だなぁ。

「で?なんだよ。」

「明日の自己紹介だけ行ってそれ以降は学校行かないことにした。」

私は敦にこれでもかというくらいの譲歩のつもりだったが、敦は「マジか・・・。」としか言わなかった。

「優、お前、それで最大の譲歩なのか・・・。」

敦が譲歩に気付いてくれたが、呆れられていた。

まぁ、仕方ない。

オッサンから学校へ行けと言われて編入が決まった学校に、自己紹介だけして、それ以降は行かないなんて敦が言えるわけがない。

「私は敦に引きずられたら少しは学校に行こうとは思ったりもするが、あの地獄の集団生活は強制されるより、普通でいる方が何倍も窮屈だからな。だから学校は嫌なんだ。」

敦に言った。

「わかったから・・・。明日の事はした二人で考えよう。今日は疲れただろ。風呂入って、ご飯食べて寝よう。風呂は沸かしてあるし、優の着替えは今ないから、僕の着替えを渡すから。」


敦が台所で料理をしている。

私は、湯船に浸かった。

あたたかい。

血の温もりではなく、本来の人としてのあたたかさかもしれん。

血の海にいるのではなくお湯の中にいる。

その感じが新鮮だった。

今まで、血の海で生活してきたのだから。



風呂から上がった後、敦の手料理で腹を満たし、私の部屋にベッドがないからと言って敦の部屋のベッドで二人で寝た。

私はソファで寝ると言ったが、敦は許してくれなかった。

半ば強引にベットで寝ることが決まった。

最初は寝まいとベッドから脱走するのを繰り返していたが、その都度その都度、敦に捕まり、最終的には抱き枕状態で寝る羽目になった。

まぁ、寝たけど。最終的には。


「起きろ。優。」

敦の声が遠くで聞こえる。

カーテンを開ける音と陽の光が目に飛び込んできたのは同時着だった。

目を開けると、敦の顔がゼロ距離であった。

「おいこら。近すぎるんじゃないのか?このままキスでもしてやろうか?」

敦は「変な事言うな」と言って、私の額にデコピンしてきた。

「そっちが先にしたんだろうが。」

起こしてくれたのにはありがたいが、今のはだめだろ。心の中で吃驚し過ぎて目は覚めたけど。

私じゃなかったら大問題になってたかもしれんぞ。

そんな事関係ないけど。

「やっぱり、優は今どきの女子じゃないな。」

今どきって何だ今どきって。

「今どき?何それ。そんな言葉あったんだ。」

私は敦の目の前で寝間着から普段着に着替えながら言った。

「ほら、危機感と共に羞恥心がない。本当にお前女子か?」

前の職場の環境じゃ羞恥心と危機感なんて失うのが速い。

女子という概念は捨てざるを得なかったんだぞ。

なのに、今更・・・。

女子だの羞恥心だの危機感だのを求められても無理があるってもんだ。

「危機感と羞恥心云々は資料を見てくれ。今更取り戻せなんぞ無理があるわ。」

「まぁ、殺しの世界に浸ってる時間が普通の生活をしていた時間よりも長かったのは理解しているし解っているつもりだったが、思春期真っ最中のお前が僕の目の前で裸に近い格好になることがどれくらい恥ずかしいことなのか考えたこともないだろうな。」


敦は半ばあきれ状態。

無理もない。

《普通》という感覚がどれほど私とは無縁だったのかが生活していくうえで分かるだろうからな。

「総合学科には制服はないから私服で登校できるぞ。」

総合学科みは制服がないらしい・・・。

それは良かった。

制服があると言われてたら校長に「制服廃止!」と直談判に行く予定だったからなぁ。

いらん労力を使わずに済みそうだ。

「学校へ行く用意は完璧か?ご飯食べるぞ。」

「今日の朝ご飯何?」

「パンとスープ。」

忙しい朝なら仕方ないだろうな。しかも、只今午前五時半である。

めっちゃ眠たい。

何でそんなに早起きしなくちゃならんのだ。

「教師の出勤時間は午前六時から七時の間だ。」

マジか。私の仕事の時間より早いじゃないか。

いやいや、もう仕事はしてないからわからないけど。

今の私の仕事は殺し屋じゃなくて学生だった。

「早く出ろ。遅れる。」

敦が急かす。私は靴をもって家から出た。

マンションの廊下から飛び降りてショートカットしようとすると、

「正規のルートで行け。後、ちゃんと靴を履け。」

怒られてしまった。

まぁ、それもそうだ。

私は裸足で冬の寒い中、疾走しようとしてた。

そりゃ敦という教師が怒るのも無理はない。

急げって言われたから言う通りにしたのに。

怒られるのは馴れないとむちゃくちゃ歯がゆい。

「敦、今日は何時に帰れる。」

「今日は十五時半くらいかな。一緒に帰るのか?」

「じゃないと家は入れないだろ。鍵は敦が持ってるからな。」

「了解。じゃあ、教室で待っといて。黒板に数式書いて暇をつぶしてるのもいいぞ。」

「わかった。」

「じゃ、それで。今日はお前のクラスにつく。明日からは助っ人を用意してあるからその人を頼るように。」

「わかった。」


私は敦から少し離れて歩く。

すると、女子生徒が敦に挨拶をしていく。

「あ、小久保先生、おはよう。」

敦は返した。

「あぁ、おはよう。」

その生徒は挨拶をしたあと、下駄箱へと入っていった。

「今の何年生?」

「今の子は三年生。あれは、B組かな。佐々木の入るクラスの人。仲良くしなよ。下には見るな絶対に。あと、殺す価値があるものとしても見るな。わかったか。」

「何回も言うな。耳にタコができる。」

私と敦は職員玄関から入った。

敦は先に体育館へ行き、私は校長、教頭と一緒に体育館へ行った。

途中、校長先生が緊張はしてないかと聞いてきたが、私は緊張していません。と答えると、やっぱり、メンタル強いね。と言われた。


体育館に入った。

校長が壇上に上がっていく。私はその後ろをついて行った。

壇上に上がる前、ふと後ろを振り向いた。

二百人は普通に超える数の生徒がこちらを見ていた。

「今日からこの学校に通う生徒を紹介します。編入生です。佐々木優さんです。皆仲良くしてください。」

拍手がまばらだった。

私はそんなに歓迎されてない。そう思った。


「佐々木さん、私は安田実加です。今日からあなたの担任になります。宜しくね。」

そう言って手を差し出して来た女性。私のクラスの担任なのか。

これは、握り返しておこう。

「よろしく。安田先生。」

先生に促されて教室へ入った。すると、一斉に目が向けられた。


「先生、その子がこのクラスに入る子?」

髪の毛が茶色の女子が質問してきた。

先生がそう。と答える。

「じゃあ、質問タイムにしてもいいですよね?全校集会で名前聞いたし。」

と言った生徒もいたので、先生が質問タイムにしますと言った瞬間、クラスで拍手喝さいが起きた。

「新田です。よろしく。佐々木さん。」

早速質問が始まる。

「よろしくです。何でしょうか。」

「出身はどこですか?」

「京都です。」

次の人。と先生が言った。

「中野です。好きな人はいますか。」

「いません。」

次。

「古瀬です。この学校に来た理由は?」

「近場に学校は無いかと役所で聴いたところ、この学校があると聞いてたので手続きをして学校に入りました。」

次。

「杉本です。好きなタイプはありますか。」

「好きなタイプは一つだけならあります。高身長です。」

この質問の後に教室のドアが開いて、小久保先生が入ってきた。

何人かの生徒が後ろを振り返ってキャッキャキャッキャ言った。猿かよお前ら。

次。

「水嶋です。身長と体重を教えてください。」

結構デリケートなとこと突っついてくる。

「身長175センチ。体重43キロ」

細っ。と誰かが小さい声でつぶやいた。

次。

「武藤です。女子と男子どちらが好きですか。」

「女子も好きですが、男子の方がどちらかと言えば好きですね。」

次。

「本田です。好きな事、趣味を教えてください。」

「趣味は本の収集とゲームです。主にテレビゲームにはまっています。」

次。

「小寺です。このクラスの中で誰が好みですか?正直に言ってください。あと、できればラインを教えてください。」

「このクラスで、ですか。正直でいいんですね。えーと。本田さんの後ろ、水嶋さんの前の方。後、後ろに突っ立ってる敦が好みですね。その二人の中からどちらかを選べと言われたら敦の方を選びますね。ラインはスマホを持ってないので教えることは出来ません。」

次。

「山口です。好きな教科・嫌いな教科を教えてください。」

「好きな教科も嫌いな教科もありません。」

次。

「谷口です。資格は何を持っていますか。」

「資格は、漢検・英検・数検共に一級を持っています。」

次。

「はいはいそこまで。もう時間がないから質問はまた今度にしましょう。じゃあ、号令して。」

「起立。礼。ありがとうございました。」

めっちゃしんどかった・・・。

なんで質問攻めにされなきゃいけないんだよ・・・。

誰もいいとは一言も言ってないぞ。



何かの気配を感じ取ったので後ろを見ると敦がそこに立っていた。

「優、こんなとこで何してるんだ。ここは職員室の前だぞ。何か探してるのか?」

心配そうな顔だ。

「敦。」

私はしんどくなったので保健室はどこだと尋ねると「一緒に行くか」と言われた。


保健室の前まで来て、そのまま部屋に入ろうとドアに手をかけたその時、

「靴脱げ、靴。」

と敦に注意されてしまった。


ここで靴脱ぐのか・・・。

全部土足で来てたから分からなかった。

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