第1話にして説明がないのはデフォ
プロローグが終わったからってプロローグが終わると思いましたー?終わりません(๑•̀ㅂ•́)و✧
今日は8月の中旬。正午を30分くらい過ぎたところだろうか。この間までの巨大台風による雨が嘘のように晴れ渡り、天気がいい。夏休みももうすぐ終わる。そんな中、少しでも暑さから逃れるために近くの公園で涼んでいた。そこで、同じような理由でここへ来ていた幼馴染でもある真桜と駄弁っていた。
「暑いねぇ……私、溶けちゃいそう……アイスみたいに……」
「人間がアイスみたいに溶けるかよ……でも、あっちーな……」
「ねー……」
真桜は膝の上で寝始めた猫を撫でながらつぶやく。
「私は夏、嫌いかなー冬のがいいよー。着込めばいいだけだし、雪は綺麗だしー」
「そうか?俺は夏好きだけどなー、プールとか気持ちいいし」
静かだ。もともと、人通りが多いわけではないが、今日は特に少ない。聞こえるのは心地よい蝉の鳴き声くらいのものだ。
真桜の猫が唐突に起き、走り出す。その先は道路。真桜が慌てて追いかける。急ぐあまりに周りが見えていない。
嫌な感じがした。既視感、デジャヴを感じる。そのまま行かせちゃいけない。追いかけなければ。止めなければ。助けなければ!無意識にそう考えていた。そう考えさせられていた。俺は真桜を追いかけるために1歩遅れて走り出す。間に合え!そんな気持ちでいっぱいだった。
「っ!」
声にならない真桜の悲鳴。急に飛び出した真桜にむかって突っ込んできたのは貨物用の大型トラック。まただ。また、助けられない。そんな風に感じた。焦燥感が募る。何も出来ない。ーーそんなことは、ない!
真桜を救うために自分が犠牲になる決意をする。真桜のために走る。走る。限界を越えて。そして真桜を突き飛ばし、凄まじい衝撃が身体を襲う。痛いのかどうかはよくわからない。最後にちゃんと伝えられればよかったとそんな益体もないことを考える。そう、たった3言。だが大事なこと。好きだ、と。
そこから先の記憶は俺にはない。やってやったという誰に対するものかわからない満足感だけがただただあった。
ーーーーー
「暑いねぇ……私、溶けちゃいそう……アイスみたいに……」
「人間がアイスみたいに溶けるかよ……でも、あっちーな……」
「ねー……」
あまりの暑さに私もあいつもぐでーとなっている。あいつは日向ぼっこに来たらしい。私は猫の散歩。いつも通りの日課。猫の散歩にくると必ずあいついるんだけど妙な縁でもあるのかもね。
くだらないことを話していると膝の上で寝ていたにゃあが突然起き上がり走り出す。まずい、いつものパターンだ。ここであいつが猫を追いかけたらいつも通り。そう、いつも通り失敗する。何度失敗したかわからない。諦めかけたこともあった。でも、私は……!
あいつは私にたくさんのモノをくれた。私の白い世界に色を鮮やかに彩ってくれた。試して、試して、試して試して試して少しでも違う結果を……!遊具が壊れたせいの時もあった。コンクリートが降ってきたこともあった。ポールが倒れた時も、あった。彼がにゃあを追いかければまた助けられない。
そうだ!私が追いかければいいんだ!トラックが来ると分かっていれば走り抜ければきっと!私は全速力で走り出す。明日もあいつと笑って、くだらないことを話して、遊びたいから。変わらない日常を過ごしたいから。
「よしっ……!はぁはぁ」
「真桜!」
結果は、だめだった。また、あいつを救えなかった。なんでこういう時だけ男らしいかなぁ……。普段はかっこつけのヘタレの癖に……
まただ。笑われている。嘲られている。そう、愚か者だと嘲笑されている。嫌らしくあいつの見た目にする悪魔に。ごめん。ごめんね。また、助けられなかった。まだがんばるから。私は何度でも……。
だから、待ってて。