第3話 風の子、吹き飛ぶ
僕と先生は襲われた。
先生の方は手を後ろで縛られ、黒服の人がこっちへ近づいてくる。
とっさに後ろに下がろうとするが、相手の方が早い。
僕も捕まってしまう。
手足を縛られ、いつのまにか近くにあった馬車へと詰め込まれた。
雨の中、馬車が走る。
僕たちはこれからどうなってしまうんだろう。
どこか遠くへ運ばれて、一生おにいちゃんにも会えないのだろうか。
そう思うと涙があふれた。
これから一生会えないなんて嫌だ。
お父さんもお母さんも悲しむ。悲しませるのも嫌だ。
こんな風に離れ離れになるのは嫌だ。
僕の力があれば。
黒服を吹き飛ばすほどの力があれば、先生を助けて家に帰れるのに。
そう思った。
すると風が吹いた。
とても強い風。
雨も強く、嵐になったのだろうか。
風の渦が近くに迫っていた。
「ふざけんな!せっかく上手くいってんだ。荒らしなんかに台無しにされてたまるかよ!」
黒服は必至で馬車を走らせる。
だけど風の渦はどんどん近づいてくる。
まるで僕たちが乗せられた馬車を追いかけるように。
さらに渦の勢いは増す。圧倒的な力で森の木々が薙ぎ倒されていく。
ついには馬車に追いつき、そして。
吹き飛ばした。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
そして俺も吹き飛んだ。
でも、黒服も吹き飛んだ。
僕たちは助かった。