第10話 風の子、突破する
試合開始の合図。
それと同時に三発の火の玉。
通常、魔法の発動には時間が掛かる。
精霊との意思疎通に時間が掛かるためだ。
発動が早いということはそれだけで優秀な魔法使いであることがわかる。
しかし、火の玉も当らなければ意味はない。
素早い移動でそれを回避する。
続けて距離を詰めるべく思い切り前に踏み込む!
そこに炎の壁が出現する。
「立派な壁だろう?炎だって防御になるのさ!」
なるほど。
これが魔法使いでありながら一人で戦える理由のようだ。
通常の炎の壁は近づく相手との間に1枚板のようなものが出現するだけ。
しかし、炎は彼女の周りを囲むようにして並んでいた。
これではスキを突くことは難しい。
「それじゃあ終わらせるよ!」
彼女は頭上に炎を集め始める。
急速に集まってできたそれは疑似メテオとでも呼べる大きな塊。
会場ごと吹き飛ばせば必中だろうとでも言いたいのか。
こうなれば奥の手を使うしかない。
物理的に炎の壁が突破できないなら、魔法で壊すしかない。
前に駆けると同時に風の渦をイメージする。
前方に向ける渦は突破するために特化した形。
精霊が集まってできたそれを炎の壁に突き刺す。
出来た穴を僕が通り、全速力の攻撃。
「行くよ!!」
勢いよく彼女は吹き飛び、壁にぶつかる。
「何故...どうして炎の壁が突破できたの...?」
僕は答える。
「僕はこれでも魔法使いなんでね。」