ご対面
「たーだいまー!!」
玄関の扉が開くと同時に、女性のやけにテンションの高い帰宅の挨拶が響いた。片山は飛び起きた。視界に映ったのは、園崎の両親と思われる女性と男性。
「あのっ!俺っ!怪しい者ではありません!」
急いで立ち上がり、大声で叫んだ。先ほどの母親と思われる女性の挨拶に負けない程の声量で。しかしそれは意味を成さなかった。
「ちょっとぉー凛も瑠衣も起きてないのぉー?」
女性は片山を完全に無視して家の奥へ入って行った。両親との対面は、片山による一方的なものとなった。
「まあまあ母さん。もう真夜中だし2人とも寝てるよ。それよりご近所迷惑だからあんまり大声出さないでね」
「わーかったわよ。もうあたし寝るー。おやすみ」
やはりこの2人は園崎の両親で間違いないらしい。母親は、きちんとした見た目とは裏腹に自由奔放な性格のようだ。そして父親は、優しそうな見た目の通り物腰の柔らかい人だ。
「……両親も霊感ゼロ、か。まあ、生活はしやすい、かな」
片山は苦笑いをしつつ、園崎の両親にしばらくお世話になりますと年を送った。霊感ゼロのこの家庭に、その念が通じることはまずないだろうが。
「明日は改めて学校内をうろついてみっかなー。もしかしたら学年に霊感ある奴いるかもしんねーし!」
片山は明るい声色で独り言を呟いた。そして少しわくわくしながら玄関で二度目の眠りについた。