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デジャブ
片山は眠っていた。どうやら廊下の隅に蹲ってそのまま眠っていたらしい。窓から差し込む橙の光が片山の目を醒ました。
「そういえばもう放課後か?あいつは帰ったのかな」
ここであることに気が付く。そう、呪縛主と共に行動をする必要は実はなかったのではないか、と。
「要するにそういうことだとな!?実際今この場に園崎凛はいない!でも俺は引っ張られない!よっしゃー!俺は自由だー!」
誰もいない廊下で一人大きくガッツポーズを決めた。片山は正式に呪縛から解放された訳では無いが、自由を得られたことを全力で喜んだ。
「さてと、そんじゃあまた適当に浮遊生活を再開しうおあ!?」
片山は言葉の途中で短い悲鳴をあげた。まるで今朝のような、戸惑いに満ち溢れたようなそんな悲鳴を。
「ちょ、待て待て待っ」
身体が宙に浮き、いきなり後方へと引っ張られ、校内をものすごい速度で振り回され、辿り着いた先は、呪縛主の真後ろだった。
どうやら園崎はちょうど今校舎を出たらしい。自分の後ろで男が絶望しているとも知らず、家に向かって足を進めた。
「ははっ、デジャブ……」
片山はよろよろと園崎の後を追った。