青春だな
片山は未だ教室の隅に蹲っていた。蹲りながら少しずつ現実を受け入れる努力をしていた。一先ず分かったことを口に出して整理していく。
「ポニテ女子の名前は園崎凛、高校2年生。こいつには霊感が全くない。友達らしき女の相田春乃にも霊感無し。つーかこのクラスの奴らはみんな霊感無いな」
片山は頭を抱えた。せめて1人でも視える奴がいてくれたらこの状況を打開する手立てが見つかったかもしれないのに、と心の中で叫んだ。
「次の授業、化学室だっけ?」
呪縛主もとい園崎が相田に話しかけた、と思ったら早速教室を出ようとしていた。片山も急いで後を追う。おおかた、鎖に引っ張られることを想像したのだろう。
廊下を歩いていると、前方からチャラついた男子高生が歩いてきた。
「凛ちゃん、春乃ちゃん、おはよ」
チャラ男の挨拶は、語尾にハートマークが付いたような、なんとも腹立たしいものだった。
「あ、お、おはよ!」
―――おっ?
片山は察した。
―――園崎はこいつが好きなのか。
片山は不思議と心がほっこりした。だがその直後に、チャラ男に対して盛大な舌打ちをかました相田がどれだけ彼を嫌っているのかを察してしまい複雑な気持ちに苛まれた。
「いやーこれが青春ってやつか、若いねぇ」
謎のオヤジ臭いセリフを吐いて、急に悲しくなった。自分の人生には青春と呼べる何かがあったのだろうか、自分は一体いつどのように死んだのだろうか、自分は何者なんだろうか……。頭の中が疑問で一杯になる。
―――分からない分からない分からない分からない分からない
片山はまた、廊下の隅に蹲った。