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フレンドが出来ました

本当にどうすればいいのか分からない。

チュートリアルで詰むとかありえんだろうと、いくつか手段を試みたが、最後の魔法のような攻撃の対処が分からず、文也は苦戦した。

だがMMOならではの救いの手が差し伸べられたことにより、ひとまず最初の戦闘を終えることが出来た。

それからのイベントもあったが、あまり頭に残らなかった。


『あるあるなんだよねー。特に片手剣スタートの場合って』

『知りませんでした。本当にありがとうございます』


無事最初の戦闘を終えた文也は、ようやく自由に動けるようになったことに安堵していた。

4回目の戦闘中に、『そこの人、もしかして初心者?』というチャット文が流れたことに気付き、操作に四苦八苦しながら、『そうです』と返答したところ、最初の戦闘でやるべきことを教えてくれた。

何でも初期装備のままスタート地点で立ち尽くしているところを見て、最初の戦闘で苦戦しているのではないかと思ったらしい。


『片手剣はまだマシといえばそうなんだけどね。短剣とかだともっと苦労するらしいよ』


プレイヤー名に「ラヴLO!」とある。

見た目は可愛らしい女の子タイプになっているが、リアルの性別は分からない。

LOが何のことかは文也はスルーすることにした。少なくともMOMの往来でする話ではない。


『でもほんと助かりました。いきなり詰んだかと思いました』


「ラヴLO!」曰く、最初の戦闘はキャラメイク次第で難易度が変わるが、基本的にやることは変わりない。

モンスターを倒すと「スラッシュI」か「ライトバリアI」を必ず習得するため、最後の魔法「グレートエッジ」に合わせてそのスキルを使用する。

ちなみに職人タイプだと、最後の「グレートエッジ」は姫が防いでくれる。


というのが正攻法になると文也に教えてくれた。

文也は「見切りI」を使って回避するものだと思っており、攻略法の一つにはなるものの、回避できるかどうかは運次第になる。

実際「見切りI」を初戦で覚えるプレイヤーも多く、それで突破したケースもある。


マジックユーザーであれば、ライトバリアという名前からして割とすぐ察しがつくプレイヤーが多いそうだが、スラッシュは「攻撃スキル」ではなく、「受け流しスキル」ということに気付かない人が多いのだという。

また、スラッシュ自体は「汎用武器スキル」と呼べるもので、どんな武器でも使えるスキルである代わりに、武器ごとに使用するタイミングが異なる。

両手武器である槍や大剣の場合、通常攻撃やスキルのウェイト時間が長い分、リーチが長いためスラッシュのタイミングが取りやすく設定されている。

片手武器である片手剣や短剣はその逆で、通常攻撃やスキルのウェイト時間が短いが、リーチが短くスラッシュのタイミングが取りにくいという。


納得行くような行かないような理由を説明されたものの、チュートリアルで一発勝負というのはどうなんだ、というのが文也の感想になる。

4回目の戦闘のラストでスラッシュの発動タイミングが合わずにやり直し、5回目にてようやくチュートリアルを終えることが出来た。

5回に及ぶチュートリアルにより、ステータスの上昇及び、他に2つスキルを入手したものの……。


「せめてスキルに説明くらい付けてくれよ……」


という愚痴の一つや二つ、出てくるのは当然だろう。

それからしばらく、ネタバレにならない程度の会話をした文也は、このゲームの説明不足を嘆くばかりだった。

「ラヴLO!」は久しぶりの初心者が珍しいらしく、「RoG」のいくつかの仕様を説明してくれたが、文也は知りすぎるのも面白くない気がして、適度な時間で切り上げることにした。


『そろそろ寝る時間です』

『そっかー。良かったらフレンド登録しない?今更新規さんって珍しいし』

『はい、お願いします』


ピロリと音がして、メールアイコンが点灯した。

文也はそれをクリックすると、『ラヴLO!からフレンド登録依頼がなされました』というメッセージが表示され、YESとNOの選択肢が出現している。

当然YESをクリックすると、システムウィンドウの中にあった「フレンド」のボタンが白黒から色つきに変化したのが分かった。


『なるべくネタバレなしで行きたいんで、そこら辺はお願いします』


チャット文に文也がそう入力すると、「ラヴLO!」のキャラの上に笑顔の感情マークが点灯した。

それはどうやるんだろうと文也は思ったが、まだそこまでゲームに慣れていない。おいおいで構わないだろう。


『らじゃー!何かあったらメッセちょーだいね!』

『はい。その際はよろしくお願いします』

『固いねー。もっと楽に楽に』


そう言われても、オフラインゲームしかやったことのない文也は、どうすればいいのか分からない。

ゲームの中とはいえ、初対面なのだ。丁寧に答えるのが筋。社会人としては、まっとうな判断と言えるだろう。


『こういうゲームって初めてなので、すみません』

『そうなんだ?それで「RoG」ってレアというか、玄人というか……ま、気軽に何でも聞いてね!』

『分かりました。おやすみなさい』

『おやすー』


慣れないチャットからは伝わりにくいが、文也にとって初めてのMMOであり、初めての知り合いが出来たことで、テンションが上がっていた。

だが、時間も24時を回ろうとしている。明日も仕事の勤め人は、そろそろ寝た方がいい時間である。

もっと若い頃は徹夜でゲームをすることも少なくなかったが、25歳という年齢と社会経験は、そこまでゲームに気力が沸くものでもない。

理不尽なチュートリアルの繰り返しに疲れたということもある。


「今日はここまでだな。いやーしかし、攻略サイトとか見る気はないけど、プレイヤー情報は必須かなぁ……」


そこまで独り言を呟いた時点で、思ったより「RoG」にハマりそうなことに気付く。

ラヴLO、『ラヴでいいよ!』ということから、ラヴと略すが、他のプレイヤーから聞いた説明を思い出しても、やり込み要素はかなり大きいようだ。

それにラヴもかなり長期に渡りプレイしているらしいが、未だに手を付けられない領域があると言っていた。


文也がとりあえず気になったのは、初期ステータスの振り方についてだ。

尖らせた方が良かったのではないかと疑問だったのだが、ラヴの回答は「誤差レベル」というものだった。

キャラは育てようと思えばいくらでも育てられるし、結局それほど差は出ない。

才能関係についても、スキルを覚えやすい、覚えにくい程度であり、序盤にちょっと差が出る程度。


この回答に満足した文也は、敢えてキャラの再作成を行う必要はないと判断した。

ラヴはMMOプレイヤーとして回答したため、文也の感覚との齟齬があったことは、この時点で両者とも気付いていない。

ストーリークエストを終えるまでがチュートリアル。

そんな感覚を持つMMOプレイヤーは、決して少なくはない。

文也にとって残念なことに、ラヴはいわゆる「廃人」プレイヤーに近いのだ。


「いやいや、他にも色々タイトルあるしな……明日は帰ってから他のメジャーどころで行ってみるか」


文也はログアウトボタンを押すと、20秒ほどの待ち時間の後に、「RoG」のロゴが一瞬出てはゲームが閉じられるのを確認した。

そのままパソコンをシャットダウンして、今日の活動はこれまでにする。

その後、軽くシャワーを浴び、ベッドで横になった文也は、不思議な夢を見ることになる。

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