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ネトゲ、始めました

完全に見切り発進。2万字も書けてません。

この現世にネトゲと名が付くものはいくらでもある。

日本国内だけでも数えきらないくらい数が多い。

パソコンやゲーム機がメインのMMORPGから、スマホアプリのソーシャルゲーム。

むしろ通信が出来ないゲームの方が少なくなってきているのではなかろうか。

これが海外にまで行けば、それはもういくらでもあるだろう。


日本在中のサラリーマン、小島文也はネトゲが好きというわけではない。

酒や遊びに興味を持たず、趣味といえばゲーム。主にオフラインのRPGを好む。

仕事熱心なわけでもない。残業も程々に切り上げ、適当に帰宅してゲームに勤しむ。そんなタイプの25歳社会人。


そんな彼が今からネトゲを始める理由は単純で、何気なく応募した新型パソコンのテスターに合格したからだ。

この新型パソコンは、聞いたこともないメーカーのパーツで構成された、良く言えば時代の先取り、悪く言えば得体の知れない欠陥品……かどうかをチェックするのが、テスターの役割ということになっている。

そしてこのパソコン、多種多様なゲームがプリインストール済みだったりする。何故そうなったかというのは、一応理由がある。


ゲームの規模にもよるが、パソコンでゲームが快適に動くかどうか、というのは割と重要なことだ。

特にスペックが未知数な性能であれば、どこからどこまで動作範囲の許容内か、きちんと確認されていないと商品にすらならない。

一応文也は有名どころのMMORPGのベンチマークから始めたが、これくらいはテスターじゃなくても開発側でやっているだろうと考えていた。一応テスターっぽいことをやっておこうと思っただけの話だ。

ベンチマークの結果は極めて良好。どれくらいの価格で売るのかまでは聞いていないが、このパソコンはテスター応募者にそのまま授与されると聞いている。

性能が未知数でも、タダでパソコンを貰えるなら上等だし、ベンチマークの結果を見ても、イマイチ理解が出来なかったカタログスペックは、最新型と同等か、それ以上になるだろうと思った。


「美味い話には裏がある。といっても、これは単純に喜んでいいんじゃないかなあ」


文也はニヤニヤしながらいくつかのネトゲを起動してはアカウントの作成を繰り返していた。

どれが面白いか、なんてことは考えず、とりあえず片っ端から初期設定だけしてしまおうと思ったのだ。

テスター用の報告書様式を見たところ、最低限これだけのタイトルはここまで進めて欲しい、という記載があった。その大半がメジャータイトルでレベル○○まで、という中身であった。

それすらも任意と書いてはあるが、人としてそれくらいの仁義は果たすべきだろうと思い、最初の面倒な作業を済ませてしまおうとした。

ネトゲには月額有料のものが多くあるが、幸いにしてゲーム内課金と呼ばれる、「一部有料」タイトルがほとんどだったため、懐にダメージが通ることはあるまいと考えた。


とりあえずアカウントの設定が完了したところで、文也は一つ息を吐く。

テスター期間は1ヶ月。社会人がネトゲをやりこむにはあまりにも短いが、あくまで動作確認と考えれば、それほどでもないだろう。

さしあたり、メジャーなタイトルからキャラクターメイキングを開始する。

この時点では、文也はあまりキャラクターメイキングに拘らない。

それほどネトゲに詳しいわけでもない文也だが、まずはお試しでキャラを作って、報告様式にある一定レベルまでの育成を行い、どんなゲームか把握してみる。そのうえで面白ければ、本命キャラを作ってみようと思っていた。

タイトルにもよるが、最初のキャラメイクの時点で最終的なキャラの性能が決まってしまうことも少なくない。

ゲームタイトルの攻略は自力が信条の文也にとって、効率は二の次。まずはやってみよう、という体当たり系ゲーマーだ。


「とはいっても、メジャーどころから始めると、ハマっちゃう可能性もあるんだよなあ」


必ずしもそうではないが、やはりメジャータイトルはシステムが洗練されていることが多く、快適なプレイが予想される。

他にもいるであろうテスターがメジャーどころに走るのは当然だろう、そう考えると、文也はむしろマイナータイトルを率先してやるべきかと思い始めた。


「マイナー=面白くない」の図式は成り立たない。

自分が面白いと感じられるゲームを発掘してみるのもいいかもしれない、文也はそう考えた。


「んじゃま、コレからいってみるかな」


プリインストールされていたタイトルの中から一つチョイスする。

そのゲームタイトルは「Road of Glorious」、アイコンには「RoG」と短縮された文字と王宮的な城が描かれている。

聞いたことのあるような、ないような。文也からすると、その程度の認識。

添付されていたマニュアルを軽く読んでみたが、書式ファイルにして僅か4ページ分。


君だけのキャラクターを作って、仲間と一緒に邪神を討伐しよう!

ステータス上げ放題!君はどこまでも強くなれる!

得られるスキルは無限大!組み合わせて君だけのオリジナルスキルを手に入れろ!

作れるアイテムに制限なし!モンスターのドロップや採集で、オリジナルアイテムを作り上げろ!


二頭身の可愛い系キャラクターが、戦士や神官など、それらしい服装をして盛り上げてはいるものの、内容はこれだけである。


「操作方法とか、そういうのが見たかったんだが……」


マイナータイトルというか、アレなゲームにありがちな「オリジナル」の多用を見て、早くも別のタイトルにしようかと考えたが、この程度で最初から躊躇しても仕方がないと割り切ることにした。

面白くなければ報告書様式の数値に従って、上げた時点でやめればいい話だ、と思ったのだが……。


「ん?キャラクター作成のみ?」


改めて報告書様式を見ると、チュートリアルまで、という内容も結構多い。

ただし、「RoG」には「キャラクター作成まで」と書いてある。

せめてチュートリアルくらいやらないと、テストしたとはいえないだろうに、と文也は不思議に思う。


「まぁいいか、どうせキャラを作ったらそのまま始めるわけだし」


文也はそう思い、早速IDとパスワードを入力する。

そういえばこのタイトルのアカウント取ったっけ?と疑問に感じることもあったが、すんなり認証されたらしく、最初に警告文が出てくる。

変わり種のIDとパスワードを使う文也は、滅多なことではID認証に弾かれることはない。


『RoDの世界ではキャラクターの削除が出来ません。新規作成の際には元からいるキャラクターのステータスを初期化する必要があります』


どうやら複数のキャラを使うことは出来ないらしい。

ステータスの初期化が可能なら、やり直しても問題はないだろうと思い、さっさと次に進むことにする。


「さてと、キャラメイクしますかね……」


まずはやってみようと言いつつ、キャラクターメイキングというのは、文也にとってワクワクするもので、やり込む気がなくても力が入るものであった。

とはいっても、それほど時間がかかる内容ではなかった。

名前・性別を決めて、二頭身キャラのパターンからいくつかパーツを選び、最後に「補正値」というステータスの割り振りをする。


名前は「エース」。文也の作成するキャラは、とりあえずこの名前にすることが多い。

性別は「男」。グラフィックの変化などを考えると女も悪くないが、やはり思い入れしやすいのは同性だ。

見た目は「銀髪逆立ち」の髪型をした頭にして、右腕に「剣」を持たせておいた。そもそも変えられるのは髪型のベースと色くらいなもので、他には何か武器を持つ、という程度だった。


その「補正値」を振る画面で、文也は考え込んでいた。


「ヘルプすらねえから何が何だか分からんな……」


《残り補正値 100》


HP 20 +0

MP 4 +0

ST 100 +0

STR 10 +0

DEX 8 +0

VIT 12 +0

INT 6 +0

MND 8 +0

LUC 8 +0


武芸の才能 C +0

魔法の才能 E +0

職人の才能 E +0


初期ステータスにボーナスポイントを振る感じだろうか?

この初期ステータスを見ると、どうも剣士とかそういった類のものに見える。

となると、先ほど選んだ「剣」が反映されているのだろうか?

試しに画面を戻してみようと思ったが……戻れない。


「最後までやって確認画面から戻る感じ?面倒だなあ」


まあそれならそれで、と適当に考える。

単純にボーナスポイントを振るだけなら、一点突破でガン振りした方が、結果的に良キャラを作りやすい。

だが「才能」というところにも補正値は振れることを考えると、補正値を振ればその分上がりやすい、という可能性もある。


「ざっくり振ってみるか。おっと、才能に振れる補正値は5刻みなんだな。最大はAか?うーん……」


悩んだ結果、職人に関係しそうな才能を斬り捨て、一応魔法も考慮に入れつつ、武芸を重視したステ振りをすることにした。


《残り補正値 0》


HP 20 +15

MP 4 +5

ST 100 +5

STR 10 +20

DEX 8 +10

VIT 12 +10

INT 6 +5

MND 8 +5

LUC 8 +5


武芸の才能 A +10

魔法の才能 C +10

職人の才能 E +0


「才能」の欄はポイントを振れば変化したが、他のパラメータと思しき数値は変化しなかった。

文也としてはもっと尖ったステ振りをしたかったのだが、生憎このゲームは不親切だ。

プレイしてみて、気に入らなかったら初期化でいいか、という軽い気持ちで、完了のボタンをクリックする。

最後の確認画面になったら、他の武器の場合のステータスなども見てみたかった文也だが、どこまでも不親切なこのゲームは、そのままゲームに突入するらしく、オープニングムービーが流れ始めた。


彼の不思議な体験は、ここから始まった。


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