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超短編

どこでも僕です。

作者: しおん


言い足りないことはたくさんある。でもそれがどうしたとでもいうように神は僕を地獄へと落としなさった。







三途の川を越え、大型バスでやって来たのは近未来都市、地獄。


近未来というのは、近い将来くる事になるという意味を込めてのものらしい。とりあえずパッと見は時代劇の風景そのもの。水戸のご老公さまとか居そうです。

でも、刀を持っている人はいない。危ないからね。でも、代わりと言ってはなんだけど、金棒を持っている鬼はいる。



いやーまいった。



まさか地獄にくる事になるとは思ってもいなかったからだ。


悲しからずや我が人生。

18年と短いものだったが、後悔は多分にある。せめて彼女が欲しかった。デートをしたかった。ファーストキスなんて大事にしておくんじゃなかった。もう、一生キスをする場面なんてやって来ないだろうし。


そして、美しいガイドさんに案内されるままに閻魔大王様の前に到着。僕の数倍はある長身と、僕の数十倍はあるお腹周り。

このお姿は奈良県でみた事があるぞ……そう、大仏様ですよ。閻魔様!


顔は穏やかではないですけどね。



閻魔大王様から告げられた罪は、人参を残してしまった事。

好き嫌いはやはり罪深いものみたいです。そんなにダメでしたか、人参さん。




え?


ピーマンならセーフ?




……不平等だっ!訴えてやる。

人参もピーマンも好き嫌いは、好き嫌い。平等に扱うべき案件のはずだ。




え、何?


ピーマンの方が好き嫌いする人が多いから、捌き切れなくて人参のみになった?




差別だ!差別だ!!

人参だけハブだと⁉ふざけるな。


アフガニスタン原産のセリ科人参属の二年草をきらってなにが悪い!


カロテンが豊富だからいけないのか⁉


根っこしか食べない癖に、その根すら食べないのが悪いのか⁉


く、くそっ、その人参カラーと味をなんとかしてくれさえすれば、食べれるんだ。品種改良を要求する!


地獄に落ちる理由が、人参嫌いってなんか腹立ってきた。

蟻踏んだとか、蜘蛛殺したとかじゃなくて、人参嫌いって……何だよ人参嫌いって、別に好き嫌いぐらいいーじゃねーかよぉ!


人間には越えられない壁があるんだ。

僕にとってそれは人参だったんだよ、仕方ないとおもって天国いかせろや。鬼どもめ。


心の中で悪態をついても変わらぬ判決に、自分でも知らないうちに舌打ちをしていた。

このぐらいさせてくれなきゃ、こっちはストレスでどうにかなりそうだ。この件に関係のない鬼どもには気の毒だが地獄の住人の連帯責任ということで、ストレスのはけ口にさせてもらうことにする。


「やぁ、おにさん」


知り合いにでも話しかけるような軽い口調で挨拶をする。相手の赤鬼は不審に思ったのか眉間にシワを寄せるが僕は何も気にしません。


「ちょっと殴られてください」


丁寧にお願いをして、返事を待つことなく赤鬼の顔面に右ストレートを繰り出す。


こんな事をされるとは思っていなかったのか赤鬼はよける事もなく、その鼻頭に僕の拳を食らうこととなった。




反省はしない。




ストレスを貯めることは健康的ではないはずだから、健康第一な僕にとって最大の敵とも言える。そう、鬼よりも。



怖い?

恐ろしい?


何をいう。

不健康のほうが恐ろしいだろうがっ!

人参何か食べなくても、他のもので補えば健康でいられるんだ!だから人参を食べる必要はなーい!!







話を聞いてくれなかった神様。今僕は地獄で生きています。


生きていた頃と変わらずに自分らしく、自由に日常を謳歌しています。

天国にいけなかったのは残念ですが、地獄もまあまあいいところだとおもいます。初日に殴った赤鬼はなぜか僕の子分となり、今では立派なパシリです。閻魔大王様とは飲み仲間になりました。


でもやっぱり極楽浄土を見てみたいので、天国への入国ビザを心待ちにしています。






読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] にん、人参( ̄□ ̄;)!! 冷蔵庫に黒ずんできた人参があるのを思い出しましたw 今日の晩御飯に入れねば……
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