捕食種
捕食種討伐
「森里機より司令室、指定攻撃圏内にあと30秒で到達 ザッ!」
「司令、各チーム 攻撃圏内に到着します。残り28秒」
「各チーム共、攻撃圏内入射10秒前にレーザー誘導標準機を謝出せよ」
「森里隊 了解 ・・ 釘城隊 了解 ・・ 孤之柄隊 了解 ・・ 斎藤隊 了解 ・・ 有沙隊了解 ・・」
「司令、各チーム準備完了しました」
司令はそんな部下たちの声を通信機越しに聞きながら、正面のスクリーンを見つめた。
「幸運をたのむ・・・」小さくそう言うと、右手をギュッと握りしめた。
「レーザー誘導標準機射出10秒前・・・ 3.2.1.発射」
「森里より各機へ、次いで号令により一斉にミサイルを射出する」
「田崎、了解」
「前田、了解」
「越宮、了解」
「犬飼、了解」
「3.2.1.発射」
「各機散開して退避!」 森里体調の声がレシーバーから響く。
ミサイルは、静かに機体から離れると、数秒して轟音を立てながら目標へ向かって突き進んでいった。
森里隊各機は、散開しながら空へ空へ高く軌道を変化させそして、登っていった。
別の隊も同様に散開しながら、空へと登っていく、高度を示す計器がどんどんその高度を表示していく、操縦桿を握る手も震えてくる。
これ以上接近してはいけないと示す接近限界線、その限界線ギリギリを音速を超えるスピードで緊急ターンしている為、そこにかかってくるGはとんでもないものだった。
そのときである、後方から閃光が光ったかと思うと、森里隊の機影が轟音と共に消えた。
そして更に後方に見えるのは、次々と墜落していく釘城隊のジェット機だった。
そして、その閃光は、各隊をめがけて更に2派3派と発射されてきたのである。
旋回中は身動きが取れない、このままでは格好の餌食になってしまう。
そう悟った釘城隊長は、緊急通信回線で各隊に一方的に通信を行った。
「各隊できるだけ加速して高度を保て、通常飛行に戻ったらとにかく全力で基地を目指せ!」
Gのかかる状態でその言葉は発するのは非常に困難であったが、それでも隊長らしくそれを言い切ると、スロットを開け気を失いそうになる意識の中、自動操縦モードのスイッチを押した。
そして、気を失ったのである。
コンピューターが釘城の生命状態を判断、蘇生を試みていた。医療用酸素をマスクから注入し、胸に貼られた電極シートが心臓マッサージを始める。
「は!」と気がつくと、視界がぼんやりしている。まだ頭が安定しない。ふらふらとする中、気がついたのは、ジェット機が通常飛行に戻っていた事だった。釘城はヘルメットをコックピットの左右に叩きつけると、必死に正気に戻ろうを努力した。そして、釘城は必死にアフターバーナーのスロットを一気に全開にすると、速度はマッハ7に達していた。
この状態で旋回運動をするのは命に関わる、とにかく直線で逃げる他ない。
仲間のジェット機が次々と空中分解をしながら落ちていく、釘城は「くそ!ここまでは届かないんじゃなかったのかよ!」とセリフを吐き捨て、そして必死で操縦桿を握った。
司令室
・・・・・・日本海沖 経度134.373 緯度39.808 海上自衛隊、空母 海鳥・・・・・・
「レーザー誘導標準機着弾しました」
「本体ミサイル着弾まであと10、9、8、・・・」
「各隊の消息途絶、危険警戒ラインを突破するまでステルス解除できません。予想到達時間あと40秒」
「ミサイル着弾確認」
「高高度偵察用飛行船からの映像入ります」
モニターに映像が回ってきた。爆発時の凄まじい煙と熱で詳しくは見えない。沖坂唯司令は息を止めそして、手前のモニターに目を凝らした。
「レーザー 照射 物体の3D映像を確認します」
「計測開始 ・・・・ だめです! 動いています」
「メーザー反射ミサイルを発射!敵の目を塞げ!」
唯司令はそう支持を出すと、椅子に腰掛けた。
「敵座標向けてステルスミサイル 全25門発射」
「マッハ20到達まであと20秒 ・・・10秒」
「目標到達予想まであと3,2,1,爆破!」
25発のミサイルが爆発すると、空気中に銀色の煙のようなものが飛散した。敵の放つマイクロ波や様々な波長の電磁波を乱反射させるための物質が空中にばらまかれたのだ。
「各隊ステルスを解除、レーダーにて機影を確認・・・・残存数・・・8・・・8機です」
艦内にざわめきが広がった。今回の作戦では全員帰投を確信していただけに、25機中残存が8機というのは衝撃的な数だった。
沖坂唯司令は艦長の方を向くと、「全員の着艦指示をおねがいします」と艦長に告げた。
「よし、全員の着艦許可を了解する。直ちに救護班、消防班は甲板へ急げ、緊急着陸に備えてネットを準備、各員急げ!」
「消防班、救護班は甲板へ、緊急着陸に備えてネットを準備してください」
その時、無線が入ってきた。 「至急、至急 狐之柄隊 識別番号0013 田宮 エンジンが片方機能していません、緊急着艦おねがいします」
「了解、識別番号0013緊急着艦を許可する」
「識別番号0013機、緊急着艦、消防隊、救護班待機、ネットを1番から4番まで広げてください」
田宮の機体がふらふらしながら、空母へ向かってきた。エンジンからは煙を吹いている。
なんとか体制を保っていられるのが精一杯と言った感じだ。
「進入角度よし、出来る限り減速して、滑走路へ着陸してください。緊急ネットを開放しています」
「田宮 了解」
田宮のジェット機が、甲板の上を滑るように通過していく、1番ネット、2番ネット、そして3番ネットでようやく止まった。そして、消防隊や救護隊が駆けつけ、消火やパイロットの救護を始めた。
「各機被害状況をデータ送信、着艦の順番を決めます。」
「了解、データを送信する」
「至急、至急、データ送信が出来ません。操舵機が破損した模様、コンピューターも甚大な被害有り、識別番号0018・・・ザッ! ッザー! 」
「レーダーで確認、0018、0018応答してください」
「ダメ・・・脱出・・・洋上で救出願います ザッ! ッザー」
「司令レーターから0018の機影が消えました」
「直ちに洋上での救出作戦を展開しろ」と沖坂唯司令は救出班の編成を支持した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無事に帰還できた機数5機、エンジンなどが故障した機体2機そして、洋上で爆発し脱出した機体1機 合計8人が生還できた。
そして、全員が帰還した後、死亡した17人の葬儀がしめやかに行われた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・