第一話 伝説よりヘビ
一日中、眺めたい——
少女の「それ」に対する想いだった。
いや、想いというよりは愛なのかもしれない。なんせ、少女の熱愛は「それ」だけにしか向いていない。
「それ」はゆらゆらと動き、「シャー」と威嚇する。そして少女の気分をますます上げる。つまり、少女にとっては可愛いと認識しているようだ。
その少女も、可憐な容姿をしているのが事実。長い黒髪を三つ編みにし、ちょっとした特徴のように碧い目が印象に残る。顔立ちも整っていて、誰もが見ても「お人形さんみたい」と言えるだろう。……本人は一切、思っていないが。
街角で「それ」を見る少女はつぶやく。
「ドラゴンもこの子のように小さかったら、可愛いんだろうなぁ」
今、自分の頭上に飛んでいるドラゴンは、返事をするように羽を鳴らした。
少し、昔話をしよう。
昔、レティリーヤ王国は、小さい面積ながらも農業、工業とも栄えていた。実のところ、大国よりも栄えていたとも言える。だからなのか。移民が年々増えてきた。レティリーヤ王国としては、元々少なかった国民を増やすことが出来て万歳。しかも働く人も増えて、ますます発展する予定だった。そう、予定だった。
悲しいことに、世界的な飢饉が起こった。世界は震えた。こんなにも大規模な飢饉は初めてだからだ。各国は焦りつつ、冷静に対応した。レティリーヤ王国も例外ではない。しかし、だ。
レティリーヤ王国は人口が本来は少なかった。レティリーヤ人の優しい性格とも言えるが、争いはほとんどなかった。すると、どうしても「ルール」はいらなくなるのだ。もちろん、「法律」はある。税を納めようね、とか。学校には行こうね、とか。まあ、そんなものである。
法律がままならないのに、移民が増えた。イコール社会が乱れるとしか言えない。お偉いさんは、未来のことばかりに気をとらえられて、目先のことには気づかなかった、ということになる。移民が増えてから、すでに人々は争いをし始めていた。そして飢饉が起きた。尚更、争いは避けられない状態になった。
そこで、レティリーヤの人々は空にいるドラゴンに助けを求めた。他の国も大変な中、助けを呼ぶのは誰にも出来なかった。
ドラゴンは助けに応じた。一つの代償とともに。
「ほえ〜。初めてちゃんとしたバージョンを読みましたけど、長いですね。この伝説」
「フィディ!伝説じゃなくて、本当の話だよ。ほら、実際にドラゴンはこの国にいるじゃないか」
フィディと呼ばれた少女は、図書館の窓を見上げる。空は青くて晴れ晴れしていた。
「でも、ですよ。この話はうんと昔の時代に書かれたじゃないですか。ですから、伝説では?」
フィディは隣にいる少女に、確認するように尋ねる。
「フィディ……。あなたは、ドラゴンを見たことがないの?『事実だと確信がある伝説』と言ってくれるなら私、怒らないよ?」
ゴキゴキと音を鳴らしながら、少女は拳を握る。なぜ、そんなに伝説か事実にこだわるのだろう、とフィディは思った。
「ふーん、そうですか。ねえ、ネリー。わたし、ネリーがおすすめしたこの本を読みましたから、わたしが読みたい本を読んでもいいですよね?よね?」
ネリーは一瞬、眉をひそめたが、諦めた顔になった。
「……ええ、どうぞ。どうせヘビのことなんでしょう。フィディは本当にヘビが好きね」
ネリーが話している最中に、本を読み始めるフィディ。
学園の宿題をしに図書館に来たのよ。本を読むために来ていない!というネリーの思いは伝わることもなく、フィディは本の世界に没頭した。
フィディ・スリートクはヘビだけが好きだ。
ヘビ以外、興味がない女の子だ。
そこだけを見ると変人なのだが、実際は成績が優秀な羨ましい存在である。
おまけに可愛い、とネリーは吐き出すようにつぶやく。そして、変人度が低かったら、フィディはもっと友達ができたのかな、と考え、深いため息をつく。本当にヘビのどこがいいのだろうとネリーは、言葉にしたくなったが言っても、何も変わらないので口にはしなかった。
先程の伝説(史実)通り、この国にはドラゴンがいる。元は、空界にいたドラゴン。なんやかんやあったらしい。
当たり前のようにドラゴンがいるこの国で、「ドラゴン使い」というものが存在する。なぜか、子供達には憧れの職業だそう。ネリーも表に出したことはないが、内心憧れている。
そんなネリーは、フィディも一緒にドラゴン使いを目指そう、と変人に声をかけるが
「いいえ!たとえネリーのお願いだとしてもわたしは、ヘビ一択ですから!」
本人は至って普通の女の子だと思っているらしい。
作者、ヘビの知識が全くありません。
フィディの方が詳しく知っています。すごい!
これから勉強します。




