逃走
*逃走*
俺は今、必死に逃げている。
後ろからはやつ等が追ってくる。
俺はすでにふらふらだというのにやつ等にはまだ余裕があるようだった。
くそっ、こんなことなら普段から運動をしとけばよかった。
上からは太陽が俺の体をじりじりと焼き、足元の草は俺の足にからむ。
コンディションは最悪だ。
しかし、やつ等にはそんなもの関係ないようで俺との距離を詰めてくる。
このままでは捕まってしまう。
やつ等はもう、すぐ後ろに来ていた。俺もここまでか……。
すぐ隣で音がした。
一緒に走ってきた田沼が転んだ音だった。
やつ等が、その隙を見逃すわけもない。
田沼はやつらに捕まってしまった。俺は悔しい思いでいっぱいになった。
だが、皮肉にもそのおかげで俺はやつ等から逃げれたのだった。
近くの木の裏へと身を潜める。
疲労と緊張で心臓は鼓動が聞こえるほどに大きく鳴っていた。息も切れ、動くことさえままならなくなってしまった。
今は、田沼のおかげでやつ等の追走を振り切れたが次は捕まってしまう。どうしたら良いのだろう。
必死に考えるが解決策が見つからない。
近くで足音がした。緊張が高まる。俺は動くわけにも行かずその場で息を潜めることにした。
心臓の鼓動がさっきよりも大きく鳴っている。
足音はしだいに遠くなっていく。
助かった。
一息つきたいところだったが、また足音が聞こえてきた。不意をつかれ、慌ててしまった。
がさっ。
音を出してしまった。
もうだめだ。
しかし、近づいてきたのはやつ等ではなかった。
「おい、大丈夫か」
話しかけてきたのは山田だった。俺があまりにもぐったりしているから心配して声をかけてくれたのだろう。
「ここら辺りはほとんど敵だらけだ。移動するにもやつ等は俺達より足が速い」
山田の言うとおり周りを見れば仲間の姿はなく、やつらに取り囲まれたと言ってもよかった。
「だが、ひとつだけ生き延びる方法がある」
俺にはその方法が分かる。今度は俺が仲間を助ける番だ。
「俺が行く」
台詞を山田に取られてしまった。
山田は俺を木の陰へと押し込みやつ等の元へと走り去ってしまった。
俺はまた味方を犠牲にして生き延びたのだ。
ここにはもう、やつ等はいない。体力も回復した。
今度は俺が犠牲になる番だ。
山田たちが捕まっている牢屋に向かって全速力で走る。
牢屋となっている場所まで二十数メートルだ。
幸いやつ等は俺には気づいていないようだった。
なんとかしてタッチできれば。
「おい、助けに来ているぞ」
やつ等の内の一人が叫んだ。
目の前に数人が立ちふさがる。
俺は大きく左に曲がり追走を逃れようとした。
目の前には牢屋があるあとはタッチするだけだ。
しかし、あと数メートルという所で警察に捕まってしまった。
「終了。警察の勝利だ」
こうして俺たちのレクリエーションは終わった。
「たまには、ドロケイもいいなあ」
俺たちは三人で話しながら家路についた。
終わり
最後まで読んでいただきありがとうございます。
補足として「ドロケイ」は地方によって「ケイドロ」など呼び名が変わりますが、作者の地方では「ドロケイ」と呼ぶのでこうしています。
感想をいただければ幸いです。