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パンデモニウムの門 〜愛と憎しみの旋律が重なる時〜

「……ここが、ジェイド。すべての終わりで、始まりの場所。」


マリアは飛空船の舳先に立ち、眼下に広がる巨大な渦を見つめていた。 雲海が不自然にねじ曲がり、その中心には漆黒の穴が開いている。そこから漏れ出すのは、この世界の物理法則を無視した「黒い旋律」だ。


「マリア、計器が真っ赤よ! このままじゃ船体がもたない!」 ネリーが叫び、必死に舵を引く。ネリーもまた、かつての孤独を捨て、必死に魔力を供給していた。


だが、その時。


空が裂けた。 次元の壁を突き破り、二つの巨大な影が舞い降りる。


蒼い光を放つアルテママリア。 そして、それを追う漆黒の巨躯、アルテマ『TheEND』。


「フリオニール……!?」 マリアが息を呑む。コクピットに座るフリオニールの瞳は、まだ記憶の混濁に揺れていた。だが、彼は叫ぶ。


「マリア! 船を下げろ! ここからは、俺たちの『家族』の問題だ!」


背後から迫るフリオニールの冷笑が、通信回線に割り込む。 『兄さん。まだその女を守るつもりかい? この門を開くには、純粋な絶望の波が必要なんだ。君が死ねば、最高のパンデモニウム同調が完成する。』


その頃、地上のアルテア。 メイン炉が焼き切れ、暗闇に包まれた店内。レイラは血の滲む拳を握り、動かなくなった端末を睨みつけていた。


「エリナ、予備電源は!?」 「ダメよ、完全に焼き付いてる。……でも、一つだけ方法があるわ。生体魔力。私たちが直接、回路に触れて『波』を流すのよ!」


エリナの言葉に、マリアが静かに頷いた。 「……オレの命、少しだけ貸してあげるわ。あの子たちの未来に、一杯の紅茶を淹れるくらいの時間は稼げるでしょ?」


三人は、火花散るメインフレームに手を触れた。 肉体を焼く激痛。だが、地上の底から、空の果てまで、目に見えない光の糸が伸びていく。


「届け……! フリオニール、マリア、みんな!!」


空の上。 フリオニールの胸の刻印が、地上の祈りと共鳴して爆発的な光を放った。 失われていた記憶の断片が、走馬灯のように駆け巡る。 マリアの笑顔、レイラの不器用な優しさ、ネリーと飲んだスープの味、そして――弟とピアノを弾いた、あの日の旋律。


「……思い出した。俺が、本当に救いたかったのは――世界なんかじゃない。お前だ、フリオニール!」


アルテママリアの翼が白銀から黄金へと変化する。 「詩篇最終章――『約束の地ノ調べ』!」


黄金の光が漆黒のTheENDを包み込み、そのままジェイドの門へと突っ込んだ。 爆発。 光の渦。 そして、世界を包んでいた「黒いノイズ」が、一瞬にして静寂へと変わった。


……


静寂の中、マリアたちの飛空船は、門の向こう側に広がる「真実の空」へと滑り込んでいく。 そこには、地上の戦争も、帝国の支配も届かない、どこまでも透き通った青い世界があった。


「……勝ったのね、私たち。」 マリアが涙を拭い、隣に横たわるボロボロのアルテマを見つめた。 コクピットから這い出してきたフリオニールは、空を見上げ、静かに笑った。


「ああ。……地上のマリアたちにも、この空を見せてやりたいな。」


物語の序章が終わり、真実のパンデモニウムを巡る旅が、今、ここから始まる。

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