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百万ギルの少女と、空から届く鼓動(リズム)

「青春……。そんなの、この空の下にはもう残ってないと思ってた」


空中聖域フィン王国の下層、学舎ガテア。 マリア(17歳)は、古びた手帳を見つめて溜息をついた。 2年前、憧れだった幼馴染のフリオニールが、ディストの暴走事故で行方不明になってから、彼女の時間は止まったままだ。


だが昨日、路地裏の喫茶店『アルテア』で、彼女は「ありえないもの」を見た。 店主のマリアと、無愛想な女騎士レイラ。彼女たちが大切に守っていたのは、2年前のあの日、フリオニールが身につけていたはずの竜騎士の紋章だった。


「……あいつは、生きてる。あそこにいた女たちの目は、確信してた」


マリアは決意した。 母が消息を絶ち、フリオニールが消えた場所――最上層の『パンデモニウム』へ行く。 「学院を抜け出して、空へ行くわ。……フリオニールを、連れ戻すために」


親友のヒルダに背中を押され、彼女は駅へ向かう。 だが、その足がすくんだ。空への切符は、平民の女子高生にはあまりに高額すぎた。


「……無理だよ、私一人じゃ」


その時だった。 前方を行く一人の銀髪の少女――ネリーが、鞄から封筒を落とした。 「あ、待って!」 拾い上げたマリアは、その重さに目を見開く。中には十万ギルもの金貨。


翌日、持ち主を探し当てたマリアに、ネリーは無機質に、だがどこか切実な瞳で言った。 「それは、旅の資金。……パンデモニウムで、私を呼んでいる『声』があるの。あなたにも聞こえるでしょう? 『フリオニール』という、あの懐かしいリズムが」


マリアの心臓が跳ねた。 「……あなたも、あいつを知っているの?」


二人の少女の運命が重なった瞬間、地上の喫茶店『アルテア』でも異変が起きていた。


「レイラ、アルテマの出力が安定しないわ。……まるで、誰かが上から呼んでいるみたい」 店主のマリアが、カウンターの下に隠した大型兵器を見つめて呟く。


「……ああ。空の上で、何かが目覚めようとしている」 レイラは無言で銃を整備し、窓の外――はるか上空のフィン王国を見上げた。 「あの少女マリアたちが動き出したか。……フリオニール。貴様、死んでいても女を惹きつける力だけは一人前だな」


地上の喫茶店で牙を研ぐ「最強の女たち(元カノと女騎士)」。 そして、何も知らずに空を目指す「もう一人のマリア」。


その頃、最上層のコックピットで目覚めたばかりのフリオニールは、胸の奥に走る奇妙な「熱」を感じていた。 それは、自分を呼ぶ複数の女性たちの執念――。


「……誰だ? 俺を呼ぶのは……。一人じゃない、もっと大勢の……」


覚醒した英雄を巡り、地上と空、過去と未来が激突する。 マリアとネリーは、パルムの港で『パンデモニウム』への乗船チケット――運命の切符を手にしようとしていた。

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