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アイドルの日常

職業:アイドル

ここは、少し外れた町にある普通のバー。

あるマスターが、のんびりと、そしてひっそりと運営しています。

____________________

今回のお客様は、アイドルの隼翔(はやと)様。


さらりと艶のある金髪でマッシュと呼ばれる髪型を作っています。

少し鋭く尖っているように見える目にすっと筋の通る鼻。

パーカーを好む様で、いつも少し大きめの灰色や黒色のパーカーを着ています。ズボンは細く、長い脚にピタリと纏っています。

お仕事では、アイドルらしい煌びやかな衣装も着るようです。

アクセサリーは、控えめな銀のネックレスと指輪が一つ。


本日もご来店、誠にありがとうございます。

____________________

カランカラン…


[……]

[…いらっしゃいませ]


___東京某所。人の溢れる日本の大都会。そこから少し外れた場所に運営されているバー。


[いつもの]

[かしこまりました]


黒檀の木で覆われた店内。カウンターも少し色の薄い木でできている。綺麗に木目の入った薄橙色の酒やら飲み物が陳列されている棚。木材で囲まれたそのバーは、何とも言えない落ち着く雰囲気だ。


[モスカート・ダスティでございます]

[…どうも]


そっとカウンターに出された、"いつもの"。オレンジがかった照明が液体を照らす。来るのはいつも昼頃で、適当な空き時間があればここに来る。


ゴクッ…


[……]


穏やかなBGMが耳を澄ませば聞こえるほどの丁度いいボリュームで流れる、静かな店内。俺はこのバーの雰囲気が好きで、いつの間にか常連になっていた。そして、もう一つここが好きな理由がある。


[……マスター]

[はい、なんでしょう?]

[いつものと違うだろ。コレ]

[はい。少しお疲れに見えましたので、フルーティーさを足して作らせていただきました。作り直しましょうか?]


それが、このマスターだ。


[いや、いい。むしろ丁度いい]

[それは良かったです]


眼鏡を掛けた、柔らかいオーラを纏うマスターの彼女。初めて来た時から、俺の注文はあまり変わらない。2回同じ酒を注文した後の3回目から、俺の[いつもの]ができた。


[お忙しいのですか?]

[まぁ。それなりに]


普段と変わらないはずの俺の様子の違いにもすぐに気づいて、こうしてさらっと気遣いをする。長い髪を後ろで低めに一つに縛り、メイクも最小限。


[そうなんですか。そんな中いつもご来店頂き、ありがとうございます]

[…いや。こんなに小休憩に合う場所はない]


バーテンダーの定番スタイルである白シャツと黒ベスト。だが、かっちりし過ぎているわけでもなく、親しげで眼差しは優しい。顔やスタイルも整っていて、学生時代モテていそうだなぁとぼーっと考えたこともある。


[あまりご無理なさらないでくださいね]

[収入源が減るからか?]

[ふふっ、お任せします]

[否定しないのかよ]


今では軽く冗談を言い合えるようになった。俺の落ち着ける、数少ない場所の一つ。


カランカラン…


[いらっしゃいませ]

[いつものー、今日は甘め!]

[かしこまりました]


そこに、もう一人客がやってきた。


[お、隼翔。お前も来てたんだな。]

[…圭吾(けいご)か]

[最近会わなかったなー。忙しいのか?]

[まぁ。アルバムもうすぐだからな]

[おー、アルバムかぁ。やっぱ人気アイドルはちげーな!すっかりデカくなっちって!]


バシッ


そうして背中を叩かれる。加減を知らない圭吾の平手は普通に痛い。


[痛ぇよ。加減しろ]

[おぉ、すまんすまん!]


飄々としてるコイツとは、幼馴染。お互い違う道に進んだが、このバーで再会した。そこからは、ちょくちょくこうして会っている。


[モクテルでございます]

[お、フルーツじゃん]

[お友達同士で同じような味わいになっています。どうぞごゆっくり]


やはり気が利く奴だ。そろそろ戻ろうと思っていたが、もう少しいることにしよう。


[お前こそ、今出てるドラマの勢い凄いぞ]

[お?そうなのか?]

[あぁ。SNSのトレンドにも入ってる]

[おー!俺も結構デカくなったもんだな!]


そう言って得意気に鼻を鳴らす。普段のこうしておちゃらけている姿を見ると、とても俳優とは思えない。


[あ、そうだ。なぁマスター!]

[はい、どうされましたか?]

[隼翔のライブ映像見たか?この前言ってた奴!]

[ゲホッ!?]


何を言い出すかと思えば急にぶち込まれ、俺は思わず吹き出しそうになった。


[うおぉ、大丈夫か?]

[ゲホッ、ゴホッ…原因が言うんじゃねーよ。つかなんだよ前言ってたやつって]

[この前ご来店された時に勧めていただいたのですよ。とても良いのでぜひ見てほしい、と]

[そうそう!いやぁ〜、かっこよかったからついな!]


何勝手に勧めてんだふざけんなとでも言いたくなったが、コイツは昔からそういう奴なのだ。それをよく知っている俺から出たのは、でかすぎるため息だけだった。


[はぁ〜…人のことについて勝手にベラベラ…]

[まーまーいーじゃねーか!減るもんでもねーし]

[そういうことじゃねーよ]

[仲がいいんですね。お二人]

[俺ら幼馴染だからな!]

[そうなんですか。だからかお二人の雰囲気が似ているなと思っていました]

[嬉しくないんだが]

[なんでだよ!?]


疲れるはずだが、不思議と無駄に入っていた力が抜ける。ここはそういう場所なのだ。


[…そろそろ行く。会計頼む]

[はい]


慣れた会計を終わらせ、店のドアを開ける。


[じゃーなー!]

[ありがとうございました]


元気な声と穏やかな声、2つの声を背に受けながら店を出た。


[……行くか]


少し長居してしまった分を取り戻すように、俺は少し早足に歩いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ガチャ…


[……]


事務所の練習室。そこには誰もいなかった。俺にとっては好都合だ。もっとも、わざわざ人気のない一番奥の練習室を好んで使うのは俺くらいだろうが。


[…3時か]


4時からはアルバムの録音をしなくてはならない。そう考えるとあまり時間がない。思った以上にバーで時間が過ぎていたようだ。


[さっさと終わらせるか…]


そこらに荷物を転がし、スピーカーで音楽をかける。次のライブが近く、ダンスの確認は念入りにしておく必要がある。1時間しかないが、声出しも少ししておこう。そんなことを考えながら練習していると、1時間はすぐに過ぎた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

録音中。その日は調子が良く、次々とOKが出された。


[隼翔、調子いいな。オッケー、終わっていいぞ]


プロデューサーのその声と同時にヘッドホンを外し、録音の確認をした。我ながら悪くない出来だ。


[満足したか?]

[…それなりには]

[なんだよそれ!]


グループメンバーとの会話は嫌いじゃない。面倒くさいと思うことがないわけではないが、何も考えなくていい。


[隼翔、今日は終わりだから帰っていいぞー]

[…分かりました]

[隼翔、またなー!]


それに軽く手を振り、外に出た。今日は少し遅くなった。もうすでに日は沈みきっていて、ビルの明かりや広告がなければ真っ暗だろう。帰路を辿りつつ、変装用の帽子を深く被り直した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ガチャ…


[…ただいま]

[おかえり、隼翔]


奥の方から返事がした。晩飯の匂いが玄関まで漂っている。


[今日は遅かったわね]

[アルバム。今日は録音だった]

[大変ねぇ]


そう言って料理に戻る母さん。あまり言う事ではないかもしれないが、俺の母さんは良い人だと思う。俺がアイドルになりたいと言った時もちゃんと話を聞いた上で否定しなかった。独り立ちも考えたが、東京生まれ東京育ちで実家も東京にある俺は事務所に通うのに不便がなかった為やめた。今はちゃんと一人で食っていける稼ぎができたが、最初のうちはそうもいかなかったからこうしてよかったと思う。


[アルバム、今回は買っていい?]

[無理。今回も]

[あら残念]


ファンはいいが、家族に聞かれるのはちょっとどころかかなり恥ずい。だが無理といえば買うのを辞めてくれているし、限度もわきまえているからあまり気にする事はない。


[あぁそうだ、来週お父さんが帰ってくるから]

[…へぇ。なんかご馳走出んのか?]

[奢ってくれるならいいわよ?]

[割り勘にしろ]


親父は普段海外で仕事をしていて、たまに帰ってくる。俺の家族は仲が良い。夫婦仲が良いのが一番の原因なんだろうが、特に家庭環境に不満を持ったことはない。何がきっかけで炎上するか分かったものじゃないし、そもそもあまり言う機会もないから言わないが。唯一嫌、というか面倒くさいと思うのは少し親バカな所だろうか。


[そうだ、隼翔最近気に入ってるお店があるんだって?]

[…は?何でそれ…]

[えすえぬえす?だったかしら?それに書いてあったわよ?]

[は?]


前言撤回。[少し]じゃない。[大分]親バカだった。


[何見てんだよ…]

[それは見たらダメなんて言われてないもの]

[仕事関係の奴は見んなって言ったぞ?]

[…あら?そうだったかしら?]

[本気で忘れてんのかよ]


もしかしたら親父も見るかもしれない。帰ってきたら言っておこう。


[まぁまぁ、見ちゃったものはしょうがないんだし!で、どこなの?]

[…言わねぇと駄目な奴か?]

[お母さんも行きたいのよ!]


俺の反応的に本当だと思ったからか、母さんは目の色を変えた。


[…俺と関係がある事言わなければ…まぁ。あと俺が行く時間と被せなければ]

[完全に一人のただのお客さんとして行くってこと?]

[あぁ。…それなら、まぁ…。あと、行くのは1回な]


母さんは出来上がった夕食をテーブルに並べる。そして自分も食卓に座りながら手を合わせる。


[[いただきます]]


そうして晩飯を食う。今日のように遅い日は先に食ってもいいとは言うが、多分しないだろう。もうガキの年齢じゃないのに。


[というか、行く時間ってことは毎回同じ時間に行ってるの?常連さん?]

[常連…と言えば、常連か。一応そこの店主には覚えられてる]

[あら、そんなに?随分気に入ってるのねぇ]


母さんは謎にニコニコしている。そんなに気になるものなのだろうか。


[…あ、でもそっか。隼翔と関係がある事は言っちゃ駄目なんだものね]

[…何しようとしたんだよ]

[お礼の一つでも言おうかと…]

[いらねーよ。思いっきり関係あること前提じゃねーか]


不安はあるが、まぁ大丈夫だろう。


[せめて1回だけの縛りは無くしてくれない?]

[何回か言ってる内にボロ出そうだから無理]

[手厳しいわねぇ。いつなら行っていいの?]

[夜。仕事があるからほぼ行かね]


というかそもそもマスターは鋭いし、何か察するかもしれない。その思考に至った時にはもう既に一度行く許可をしてしまった後。今更言った所で流石に母さんも引かないだろうし、俺は諦めて気付かないようにと願った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

翌日。


[……]


何となく意識が浮き上がって目を覚ます。時計を見ると時刻は8時。今日は珍しく朝の内は予定がなく、久しぶりにゆっくりと寝た。いつもより遅めの時間になったが、その分疲れが取れた感覚がする。


[…起きるか]


急ぐ必要のない朝というのはいいものだが、逆にすることがなくて何をしたらいいかもよく分からない。ここ最近はライブやアルバムが重なって休暇が取れなかった。やる事が無限にあった状態から急に自由になると普段暇な時に何をしていたか忘れてしまう。


[外…出るか…]


平和な日常生活を送っている証拠の贅沢な悩みを持ちながら、俺は当てもなく外に出てみるのだった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ブー…


特に買いたい物もないが、とりあえず暇つぶしに適当な店に入った。雑貨屋に近いだろうか。エリアに分けていろんな物が置いてあった。それらをさらっと流し見していく。食料品や日用品、あるいは季節ものの商品やグッズ売り場…。


[……あ]


グッズ売り場を通った所で、よく見覚えのある商品が。そこには、俺のアクキーが置いてあった。


[……]


ここにも置いているのかなんて思いながら近づこうとする。…が、そこで大きな壁にぶち当たった。


[あ、待って!ここ!あるじゃん!]

[え!?ホント!?どれどれ!?]


女子2人組がアクキーの前で何やらキャーキャー言い始めてしまった。


[……]


流石にこの中に入るわけには行かない。


[ほら!隼翔のアクキーあるじゃん!しかもラスイチ!]

[よかった〜!見つけてくれてありがと〜!ホントマジ神!]

[……]


しかも俺のファンらしい。更に入れない。


[どこにも売ってなかったんだよねこれ!ネットも全部売り切れでさぁ〜…!]

[よかったじゃん!私は箱推しだし、この全員がいるやつにしよっと]


ファンを見つけて嬉しくない訳はない。だが、正直居心地は良くない。


[……帰るか]


それにバレると面倒すぎる。俺は若干逃げるようにその場から去ったのだった。


[…てかさ]

[どしたの〜?]

[今さっきまで横にいた男の人、めっちゃイケメンじゃなかった?]

[あ、それ思った!さっきチラッて目見えたんだけど、あれは絶対イケメン!てか、隼翔に似てたよ]

[えぇ!?見たかった〜…!]


そんな会話は、もうすでにその場を去った俺には聞こえていなかった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ガヤガヤ…ブーン…コツコツ…


[……はぁ]


外に出てきたはいいはずだが、やはりここは少し苦手だ。高いビルが並びすぎて大して見えない青空の下を、数え切れないほどの人間と機械が行き交っている。


[……頭痛ぇ]


少し人酔いしたのだろうか。生まれた時からこの環境が近くにあったとは言え、やはり慣れない。ろくに休めそうな場所もない。


[……]


その時浮かんだ、一つの選択肢。今の時刻は10時前。普段はもっと後の昼頃に行くが、今日は早く行ってもいいだろうか。


[…行く、か……]


基本的に俺は予定になかったり、いつもの違う行動はしない。…が、今日は少し例外にしよう。普段なかなかしないことだからか、謎の心配と緊張があった。でも、心は軽い。行く先のことについて考えると、自然と笑みが溢れてくる。


[不思議だな。あそこ]

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

カランカラン…


[……]


少しだけ緊張を滲ませながら、いつもの扉を開ける。そうすると、目が合った。


[…いらっしゃいませ]


そこには、いつもと変わらないマスターがいた。


[……]


昼頃に来る俺が朝に来ても、特に驚いていないように見える。俺の謎の心配は杞憂だったようで、ひとまず安堵する。


[…いつもの]

[かしこまりました]


いつものを頼み、いつものカウンターに座る。何も考えずにぼーっとする。マスターの動きが目に入り。店内に流れる曲が耳に入り。木と若干のアルコールの匂いが鼻に入り。ここでは、いつ来ても変わらない風景が広がっている。


[モスカート・ダスティでございます]

[…どうも]


目の前にある[いつもの]。安心感のある。俺がどんなに忙しくても、逆に暇であっても、ここは変わらないまま。


[…今日は珍しいですね。普段はもう少し遅い昼ごろにいらっしゃることが多いですが]

[あぁ、今日は午前中だけ暇でな]

[なるほど。だからいつにも増して変装のグッズが…]

[……]


そう言われてさっきの女子2人組のことを思い出し、つい言葉に詰まる。そんな反応を見せてしまえば、鋭いマスターに自分からバラしているようなものだ。


[何かあったのですか?]

[さっき、ちょっとな]

[…身バレでもしましたか?]

[笑えねー事言うんじゃねーよ]

[冗談が過ぎましたか]


マスターはそう言って小さく笑う。実際、本当に身バレでもしたものなら笑い事じゃないのだが。


[よければお話していただけませんか?]

[…そんな面白いもんでもねーぞ]

[はい、大丈夫ですよ。今はほかのお客様をいませんから]


確かに、今バーの中にいるのは俺とマスターだけだ。というか、そうじゃなかったら変装グッズなんて言葉は使わないだろう。


[…さっきも言ったけど、今日は午前中暇でよ。することもなかったから適当に店に入ったんだ]

[はい]

[そしたらグッズ売り場に俺のグループのグッズがあったんだよ]

[へぇ、グッズが…]

[あぁ。そこに、俺のファンがいてな…。ちょっと手に取ってみようと思ってたんだが、その中に入る訳にも行かないし、居心地悪くて]

[なるほど]


マスターは人の話を聞くのが上手い。適度に相槌を打ちながら、こちらが話しやすい状況を作ってくれる。


[というか、グッズを出していたんですね。知りませんでした]

[まぁ、ちょくちょく。最近増えてきたな]

[凄いですね。人気がないと、そんなもの出せないのでしょう?]

[そうだな…。本当、人気が出てよかったよ]


今でこそ安定した固定ファンが多くいるが、活動を始めたばかりの頃はライブなんてできないし、配信の同接数は二桁も行かないこともあった。中々に大変だったが、今はこうしてグッズも販売できるようになった。


[…てか、マスターは?]

[?私ですか?]

[あぁ。ココやる前は何してたんだ?]

[そうですね…。企業秘密、といったところでしょうか]

[へぇ、教えてくれないのか?]

[そうなりますね、すみません。けど、意外だとは思いますよ]


驚いた。仕事ができない、というわけでもないだろうし、ある程度どこに行ってもやっていけそうなものだが。


[お友達の方にはカメラマンと言われましたよ]

[…いや、マスターなら撮る側じゃなく映る側だろ]

[お客様だと思いますよ、どっちかと言うと。そっくりそのまま返させていただきます]

[それはそうだな]


そうして2人で軽く笑う。


[というか、マスターは酒とか飲まないのか?]

[私は提供する側ですので]

[苦手とかじゃなくて?]

[そういうわけではありませんよ]

[まぁ、俺の勝手なイメージか。バーテンダーが酒飲んでんの。朝から酔いながらやってても仕事になるか分かんねーし]

[バーテンダーはお客様とお話する事も仕事の一つですからね]

[仕事以前に喋るの好きそうだけどな]

[ふふ、バレましたか]


そうやって話している内に、だんだん仕事の時間が近づいてきた。時刻は11時半。そろそろ向かわなければ遅刻しそうだ。


[会計頼む]

[はい]


さて、これからは仕事だ。ココに来たおかげで気分は上々。今ならいいパフォーマンスができそうだ。


[ありがとうございました]


そうして軽く頭を下げながら言ったマスターに見送られながら、俺は仕事に向かった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ガチャ…


[お、来たか]

[隼翔遅刻ギリッギリだぞー!]

[…間に合ったからセーフだろ]


今日はライブのダンスの確認だ。全員揃ってやるのは少し久しぶりで、相変わらず部屋は騒がしかった。


[じゃあ、揃ったし行くか]

[おう!]

[……]


練習はした。ある程度はできるだろう。俺は置いたカバンから水を持ってメンバーと練習室に向かった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[ワン、ツー、スリー、ハイッ!]


音楽に合わせられたプロデューサーの掛け声とともに、俺達は練習を進めていた。


[…う〜ん、一回止めようか。ちょっと来てくれる?]

[はい]


他のメンバーがプロデューサーに捕まっている間に、俺は一人で振りの確認をする。大まかな形は頭に入った。後は体に馴染むまでそれを繰り返せばいい。


[隼翔すげーなぁ…俺もうクタクタなんだけど…]

[筋トレちゃんとしてんのか?]

[当たり前だろして…!……ないかも]

[当たり前まで言っといてそれかよ]


俺は特に才能があるわけでもないし、ついていくためには努力するしかない。特に体力は絶対に落としたくない。


[筋トレやるか?]

[大丈夫です!隼翔の筋トレマジできついんでっ!!!]

[そこまで嫌か?]


首をブンブンと横に振って何故か敬語で割と本気で否定された。毎日やって量を少しずつ増やしていけば、そこまで難しいことでもないが。


[よ〜し!もう一回行こうか!]

[[[[[はい!]]]]]


それよりも、今はメンバーが揃っているからこそできることをしなければ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[よし!いい感じだね〜!今日は終わり!]


プロデューサーのその一言で、今日の練習は終わった。


[つ…疲れたぁ〜…]

[いやぁ〜腹減ったわ。今日どっか行く?]


確かに今日はいつもよりハードで、俺も結構疲れた。


[行こうぜ!肉食いたい!]

[お、いいじゃん]

[焼肉行こうぜ]

[…俺は帰r]

[隼翔も行くよな?]

[いや、俺は…]

[行く、よな?]


と、すごく笑顔で言われる。


[隼翔も行くのか!全員で行くの結構久しぶりじゃね?]


と、さらに無邪気な追撃が入る。


[……]


その断れない空気に負け、俺はメンバーと焼肉に行くことになった。決して嫌な訳では無い。だが、いつもより疲れたから帰ってゆっくりしたかった俺の顔は多分いつも以上に無だっただろう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[じゃーなー!]

[あぁ、また]


食べ終わった後はその場でメンバーと別れ、俺は帰路を辿る。遠慮するなと言われほぼ強制的に肉を口にぶち込んでいった為、割としんどい。


[…ここまで食わされたり飲まされたりしなきゃ、楽しいんだがな……]

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ガチャ…


[…ただいま]


普段帰ってくる[おかえり]がない。母さんはいないようだ。


[……ん?]


リビングのテーブルの上に、何かが置いてある。


[……隼翔の言ってた店行ってくるから、晩御飯はこれ食べといてね…か]


ラップのかかったお盆の上に、そう書かれた付箋が貼ってあった。


[もう行ったのか。…早くないか?]


まさか昨日の今日で行くとは思っていなかったが、被らなかったから良しとする。恐らくレンチンか少し火をかけるかして温めて食えということだろう。


[…連絡した頃には作り終わってたのか…?だとしたら大分早いな…]


一応夕食を食べに行くことは連絡しておいたのだが、遅かったようだ。どれだけ楽しみにしてたんだよと心の中でツッコミつつ、今日はハードな練習で疲れた。付箋に明日食べると書いてお盆ごと冷蔵庫にぶち込む。


[……めんどくせー…]


そんな気持ちを持ちながらシャワーを浴び、そのまま布団にダイブして意識を落とした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

数日後。


ピーンポーン…


[開けてくれる?]

[あぁ]


ガチャ…


[…よ、久しぶり。ただいま]

[…おかえり、親父]


今日は親父が帰ってくる日。今日は1日休みを取らされた。別にいいと言ったのだが、メンバーがせっかく帰ってくる1日くらい休めと割と本気で怒られた。そんな感じで半ば強制的に取った休みは……


[アルバムかぁ!いいなぁ…!お前も大きくなったなぁ…!]

[言い過ぎだろ]

[いやいや!息子がこれだったらもう一生の自慢だな!]

[言うな]


半分良いし半分悪かった。俺と親父は正反対と言ってもいい性格をしている。相変わらず騒がしいが、親父なりの家族愛を感じる。騒がしいのが苦手な俺にとっては悪い事。だが、昔からずっとこうだからか最近は親父が騒がしくても家が嫌じゃなくなった。なにより、母さんと親父が仲良く話している所を見ると安心する。


[というか、なんでアルバムとか買っちゃ駄目なんだ?そもそも、仕事に関するのは一切見るなって酷くないか?俺だって一ファンだぞ!]

[見たことない奴がファンってなんだよ]

[だから見たいんだろ?]

[…無理。仕事は…違うから]


仕事に関して悪い印象を持ってないことはいいしありがたい。けど、そんなにガチでファンになられると今以上にうるさくなりそうで面倒くさい。あと単純に恥ずいから見せたくない。


[まぁ私とお父さんは隼翔が嫌って言うならしないけど…。いつ解禁されるかは聞いときたいわね!]

[一生しねーよ]

[そこまで言われると思ってなかった…お父さんは悲しいぞ]

[知るか]


そうして騒がしくもなんだかんだ楽しい一日を過ごした。休みを取れって言ってくれたメンバーには感謝しておこうと、珍しく俺は思ったのだった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[[[いただきます]]]


夕食時。日は完全に落ち、外は真っ暗になった。最近、日が落ちるのが早くなったのを感じる。


[そうだ、お父さん?すっごくいいお店があるんだけど…]

[あぁ、あれか?隼翔が書いてたやつか?]

[それで通じるのやめろ]


というか母さんも親父に勧めるか普通?とは言っても普通が通じない親なのは既に理解しているから半ば諦めている。親父も、普段行かない時間に一回のみならいいだろう。


[あれなぁ〜…俺も行っていいか?てか、母さん行ったのか?]

[えぇ、そりゃもうとてもいいバーだったわ〜…!また行きたいんだけど、駄目?]

[無理]

[残念だわ〜…]


もう一度行きたくなる気持ちは十分すぎるほどにわかるが、流石に母さんなら気を抜いた瞬間にボロが出そうだ。そのあたりは信用していない。


[俺も一回なら行っていいのか?]

[……時間帯によるけどな]

[よし!]

[そんなに喜ぶか?]


お勧めされた店に行きたくなる気持ちを飛び越えている気がする。親父はそう聞くと食事の手を止めた。


[何言ってんだ。隼翔が気に入った店なんだろ?行ってみたいに決まってる]

[…理由それだけか?]

[それが父さんと母さんから見た最大の理由なんだよ]

[……よく分かんねーな]


本気でよくわからない顔をしていると、母さんと親父は目を合わせて笑った。


[最近の隼翔、楽しそうじゃない。なんだか、肩の重荷が下りたっていうか…余裕ができたっていうか…]

[今までそんな行きつけの場所なんてできてなかっただろ。隼翔にとって大切な場所なら、俺達にとっても大切な場所だ]

[……そういうもんか]


きっと、今の俺には理解できない。他人は他人だ。興味を持ったとしても、自分に何か変化がなければ時間の無駄になるだけ。結局は、良い方に転ぼうが悪い方に転ぼうが、時間はどんどん過ぎていく。その間にライバル達は練習し、事務所での会議は行われる。必ず、時間は一定の間隔で過ぎ、その間に何かが変わり続けている。誰かの大切な場所まで大切にしてやれるほど、俺はきっと器用じゃない。


[……羨ましいな]


目の前にいる2人にも聞こえない声でそう溢れた。母さんと親父は家族、メンバーはメンバー、ファンは俺達、みたいに。…じゃあ、俺は?大切にしてもらってばっかりで、自分では何もできていないんじゃないか?自分を取り巻く環境で精一杯で、他人にまで手が回らない。自分を大切にできなければ、他人のことを大切にはできない。


[…どうしたの?ぼーっとして…]

[……別に]

[……そう?]


多分、母さんはずっと昔から察している。親父もそう。触れないでいてくれるのは、とてもありがたい。…これは、俺の問題だ。相談したいと思うことはある。けど…


[母さん、おかわりくれ!]

[おかわり?ん〜…冷凍にしようとしてたんだけど…ま、いいか]

[よし!言ってみるもんだな!]


2人はとても、幸せそうだ。


[……]


そんな2人の顔を、沈んだ顔にしたくはない。


[……隼翔]

[なんだ?]

[辛いことも、苦しいことも…あるんでしょう?]

[……]


隠し通せるとは微塵も思っていない。特に驚きはなかった。だから今2人は、笑顔でいてくれている。


[隼翔、お前は抱え込みすぎなんだ。頼れる奴に頼れ]

[…これは、俺の問題だから。関係ない奴を巻き込むわけには…]

[関係なくない。俺達も、お前の友達もいるじゃないか。…一人じゃないんだ]

[……]


そうなれば、また大切にできなくなるじゃないか。また面倒をかけてしまうじゃないか。…でも、親父はきっとそれを分かった上で言っている。そうでなければ、いつも明るい親父がそんなに悲しい顔で笑わない。


[……今の隼翔には、もう一人いるんじゃない?]

[…もう一人…?]

[お話するのも、仕事みたいよ]

[……]


そう言って、母さんは夕食の食器を片付けた。親父はまだ知らないはずなのに、珍しく目を見開いた俺を見て納得したように頷いた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[カットー!午前一旦終わり、昼休憩ねー!]


今日はアルバムの撮影。練習の成果が出たのか、スムーズに進んで長めの昼休憩が取れることになった。


[結構時間できたなー、飯どーする?]

[どっか食い行くか?]

[悪い、俺は行く所がある]

[お、そうか]

[じゃあ適当にコンビニでも寄るかー。あ、食い終わったらゲーセン行こうぜ!]

[あり!ちょっと遊ぶか!]

[帽子とマスクちゃんとしなよ]

[わーってるって!]


長めの昼休憩。これなら十分だろう。と、俺かそう考えながら足早に撮影スタジオを後にした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

カランカラン…


[…いらっしゃいませ]


どこに居ても人の声が聞こえる外。その煩わしい声は、ここにはない。


[…いつもの]

[かしこまりました]


いつもの店。いつもの席。いつものマスター。


[モスカート・ダスティでございます]


そして、俺の"いつもの"。


[……]


あぁ、落ち着く。張り詰めていた頭と心の緊張が和らぐ。


[お客様]

[……あ?]

[お疲れですか?]


俺は思わず動きをピタリと止めた。それを見たマスターが、グラスを拭きながら眼鏡越しに柔らかく視線を送る。


[……ふっ]


思わず笑みが溢れた。


[確かに…疲れてるかもな]

[…そうですか。何かあったのですか?]

[分かってんだろ、そんくらい]

[これはこれは、失礼しました]


つい反射的にきつく当たってしまっても、軽く笑って流してくれる。


[…ちょっと、いいか?]

[お客様のお時間が許す限りであれば]


母さん、ありがとう。やっと、誰かに話せる。


[時間ってさ…止められると思うか?]

[時間を止める…ですか?]

[…なんか、俺にもよく分かんねぇんだよな]

[ふむ…]


不可能だ。そんな事、誰でも分かる。それでも、マスターは馬鹿にしない。顎に手を当てて、考え込む仕草をした。


[過ぎる時間を止めることは出来ませんが…人と人との時間は、止まるものではありませんか?]

[…は?どういうことだ?]

[お客様には、偶にここでご一緒されるお友達の方がおりますよね]

[あぁ、圭吾の事か]

[どれくらいの期間の付き合いなのですか?]

[付き合いか…言ってもここで再会するまでは離れてたが…。小学校入る前から、中学校までは一緒だった]


ほぼ正反対の性格の俺と圭吾。不思議と意気投合し、仲良くやってはいた。が、お互いに夢ができ、高校からはそれぞれ違う進路を歩んだ。


[お二人は、どんな生活を送っていたのですか?]

[どんな…?]

[はい。日常のことでも、少し特別なことでも…]

[そうだな…。お互いにあった出来事を話したりとか…。偶に圭吾が予想できない事をしたりとか…]

[そうですか]

[…何だ?どういう事だ?]


理由もなくこんなことを聞くとは思えない。一体何を……


[私も知っていますよ。その事は]

[……は?]


俺は固まってしまった。知っている?俺達の学生の頃の日常を?同級生にも、ましてや先輩にも後輩にも、マスターに当てはまる奴は一人もいない。


[どういう事だ?学生時代の俺達を知ってるってことか?]

[いいえ、知りませんよ。同じ学校なんだかわけでもありませんし]

[はぁ?じゃあ何で知ってるって…]

[お互いに仕事の近状を話し、お友達の方が突拍子も無くお客様の予想の付かない行動をする。私は、見たことがありますよ。バー(ここ)で、最近]

[……!]


そうだ。最近ここに来たとき、圭吾と会った。お互いに仕事の話をした。圭吾のいつもの予想のつかない行動があった。


[お二人のご関係は、昔と何ら変わっていないように、私は感じます]

[……]

[私なりの、一つの考えに過ぎませんが…。お二人の時間は、学生の時から進むことなく止まっているのではないですか?]

[……俺達の、時間が…]


止まってる?脳内で、その言葉について思考が回る。


[……昔の、まま…]


身長が大きくなった。精神が落ち着いた。酒も飲めるようになった。違う仕事に就いた。それでも、俺達はここでもう一度会って…何も変わっていない。


[変わらないものは、意外に近くに静かにあったものなのかもしれませんね]

[…それも、そうだな…]


そう。圭吾だけじゃない。親父も母さんも、昔からずっと変わらずに俺を見守ってくれる。デビューしてからずっと一緒にいるメンバーも。俺についてきてくれるファンも。


[……]


頭では、そうやって分かっているはず。それなのに、心の中の靄が消えない。


[ですが…やはり、時間はどう足掻いても止まってはくれませんから]

[そう、なんだよな…]


結局は、俺がビビって変わらないでいてほしいだけ。今ある幸せを、手放したくないだけ。


[お客様は…時間が過ぎることが、怖いのですか?]

[…怖い…?まぁ…]


すぐには答えられず、俯いて曖昧な返事をする。麦わら色をした温かみを感じる酒に、自分の顔が薄く映る。そこには、どこか頼りない顔をしている自分がいた。


[そうですか。幸せでいらっしゃるのですね]

[……そうだな…特に仕事ならなおさら、大変な事も多い]


アイドルの世界は厳しい。星の数ほどいるライバルの中を必死で生き延びなければならないし、売れるまでの保証が何一つない。


[そうですか]

[けど…]


俺のその一言に、マスターはグラスから視線を外してこちらを見据える。次の言葉を、まるで分かっているかのような。


[今の生活は…悪くねぇ]


沢山の人と、沢山の時間を共にして。自分の時間と一緒に、長く過ごせば長く過ごした分だけ、特別じゃなくなって。


[…そうですか]


今日も何かが変わっていく。その内側の心の中に、止まった時間があるまま。


[…ありがとな]

[…ありがとう、ですか…?私は特に何もしていませんが…]

[仕事か?]

[そうとも言います]

[否定しろよ]

[お客様のよく知る人物に、お話する事も仕事のうちだと伝えましたので]

[……は?いや、待て…!]

[やはり、そうでしたか。お客様とよく似た、綺麗な顔立ちのお客様でしたよ]

[…クッソ、腹立つ…!許可なんか出すんじゃ無かった…!]

[許可制だったのですか?]

[一回ならいいかとか思った俺が馬鹿だっただけだよ。親父にも来んなって釘刺しとかねぇと…]

[ご来店心よりお待ちしておりますとお伝えください]

[誰が言うかよ]

[残念です]

[そりゃ悪かったな。…なんか変なこと教えてねぇだろうな…?]

[あぁ、どうやら子供がいるようでして。自慢の息子だと、何度も何度も仰っていました]

[……]

[努力してるのをずっと見守っていて、成長したと感じた…と、とても嬉しそうに]

[……もういい、やめろ]

[あと、まだ幼い時に遊園地に行って、観覧車に乗った時…]

[はぁっ!?おい!その話はやめろ!]

[これはこれは、失礼しました]

[マジかよ弱み握られたみたいになってんじゃねーか…!]

[ご来店お待ちしておりますと、お二人にお伝えください]

[だから誰が言うかってんだ!]

[冗談ですよ]

[どっからどこまでが冗談なんだよ…]

[……お客様]

[あ?]

[気分は、どうでしょうか?]

[!!]

[なんだか、今日はご来店された時…顔が俯いていたように感じまして]

[……超能力でも持ってんのか…]

[ただのバーのマスターです]

[そうかよ。……気分は、そこそこだな]

[そうですか。良かったです]

[…相変わらず居心地良いな、ここは]

[ありがとうございます]


そうして、目が合うと二人共ふっと自然に溢れた笑みを交わした。

あとがき


最後まで読んでいただき、誠にありごとうございました!さ今回は記念すべき第一回目ですね。楽しんでいただけましたでしょうか?初回ということで、まだ右も左もわからないぺーぺーですが、どうか見捨てずによろしくお願い致します!


さて、今回はアイドルの日常ということで、アイドルの方って普段どんな感じで過ごしてるんだろうと考えながら書きました。もちろん私はアイドルでもなんでもないですし、おかしいと思う点は多々あるとは思いますが…。練習とか撮影とか、私達が見るより前にも後にも努力があるんだろうなぁと、書きながら考えたりしちゃいました。


初回ということで少しあとがきが長くなってしまいましたが、最後の最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!また次回、お会いできることを楽しみにしております!


零_ZERO_

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