その怪異、承ります
第一章 コックリさん
「コックリさん、コックリさん、どうぞお戻り下さい」
とお願いするが10円玉は「はい」に移動せず「いやだ」と動く。
何度お願いしてもコックリさんは帰ろうとしない。そしてついに、10円玉から手を離してしまった。
「う、うわぁ!!!!」
机に伏せていると女子高生のグループの会話が聞こえてきた。
「ねぇ今朝のニュース見た?」
「なにを?」
「ほら、コックリさん」
「コックリさん?あーみたみた」
「そうコックリさん、今日学校でやろうと思うんだよ」
「えーやめよーよ」
「でもさでもさ、ほら憧れの三邑先輩についてアドバイスくれるかもよ」
「そ、それは…ね」
やるかどうかはさておき本当にコックリさんなんているのか?と思いつつ女子高生のスカートの隙間が見えないかちらちら眺めていた。
おぉ、み、見えそ…
「なんか面白いもんでも見えんのか?」
俺がこの世で2番目に嫌いな男の声で不機嫌な顔をしつつ上げると、友達?の安藤が笑っていた。
「いや、別に」
「そうか、なら放課後遊ぼーぜ」
「なんで俺がって…」
教室を見渡してみると、男子のほとんどがいなかった。
そういえば今日のホームルームで感染症が流行ってるとか言ってるのを思い出した。
「な、お前が遊んでくれないと俺が一人になっちまうんだよ」
「他クラスのやつ誘えよ。お前サッカー部なんだから10人以上は友達できてるだろ?」
「うちの学校7人しかいないんだよ」
「7人しかいないサッカー部で何の練習してんだよ」
「べつに7人しかいなくても練習は出来る」
「それはそうかもだけど、だから他の6人がいるだろ?」
「俺以外全員彼女持ちのあいつらとは部活以外であんま関わりたくないんだよ」
こいつにもこいつの事情があるのか…
「はぁ、今回だけだぞ」
「よし、そうと決まれば今日はよろしくな。鬼童」
「てか、感染症が流行ってんのに遊んでも大丈夫がなのか?」
「ま、なんとかなるだろ」
そんな感じで決まったわけだが正直ダルい。
帰ったら美少女がいっぱい出てくる今期のアニメを見ようと思っていたのに…。
「じゃー行くか」
「どこに?」
「そりゃお前カラオケに決まってんだろ?」
女子無しに行きたくねぇーよと言いたいとこだが、ゲーセンと本屋以外普段外に出ない俺に遊ぶ場所を提案する気力はなかった。
安藤とカラオケに行ってみたが案外会話が弾んだ。有名な曲すら歌えないので結構マニアックなアニソンを歌ったのだが安藤が知っていて、びっくりした。
その後、意気投合し連絡先を交換して帰路についた。
その日は家に入ってそのまま寝た。
さて、あくる日学校の教室に入ると何やら異様な空気がした。
教室に入るまでは聞こえていたはずの声が聞こえない。それに誰もいないのだ。
ゴクリと生唾を飲み込み、一度周囲を見渡すと教室の中心にある机に何かが置かれている。
「まさか…な」
恐怖で足が震えているが、吸い寄せられるように気づけば中心にある机に向けて歩きはじめていた。
はっきりとソレが分かるようになるには時間がかからなかった。
A4ほどの紙に「はい」と「いいえ」が書かれ、その間に鳥居、その下に数字と五十音がかかれている。そして、その横に10円玉が添えられている。
「…ウソだろ。やれっていってるのか?」
無意識に言葉が吐かれたが誰も反応しない。
気づけば空が紫色に変わっており、まるで別世界にいるかのようだった。
実際、そうなのだろうが体が受け入れようとしなかった。
とりあえず教室から出ようとするが鍵がかかって開かなくなっている。
「やるにしても1人で出来ないだろ。聞きたいこともないし」
とりあえず座ろうと戻ろうと踵を返すと、ガンッ!と強い衝撃が起こったような音が教卓で鳴った。
すると、頭を押さえながら女の子が出てきた。
「やはり、危険なことはしない方が良いですね。反省です」
な、誰だ?この子は…
年相応ではない服装をしており、シャツの上にくたびれたトレンチコートを着てスラックスを履いている。
「えっと…あなたは?」
「あなたが選べられたのですか。なるほど、なるほど、ふーん」
俺に気づくとまじまじと顔を見てきた。
恥ずかしい。
頬が赤くなってるのに気づいたか単に興味がなくなったか分からないが、見るのをやめると教室の中心にある紙を指さしこういった。
「ではやりましょう。コックリさんを」
なんだこの子は怖くないのか?
むしろこの状況を楽しんでるようにも見える。
そんなことを考えてる中でも彼女はわくわくしてる気持ちを我慢せずに椅子に座り、横に体を揺らして待っている。
「やるしかないか…」
向かい合うように最初座ったが、それじゃやりづらいと言われ仕方なく隣に座った。
普段女子にキモい視線を送ってる俺だが、そんなやましい感情は一切わかずにすんなりと座れた。
「そうだ。まずは自己紹介をしようかと思いますが、名前と言うのはつよい力を持っているので…うーん、ヨーコとでも名乗っておきましょうか」
偽名を使うなら俺も偽名を使おう。
うーん…そうだな、「田中晴喜です」
「では、田中君お互い自己紹介も済みましたし、やりましょうか」
鳥居が書かれているところに10円玉を置き、その上に指を置く。
「コックリさんの呼び方はわかりますか?」
「なんとなく?」
「では、せーの!」
「「コックリさん、コックリさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」と話しかる。
すると、10円玉がはいの位置のある方向へと動き始めた。
「成功、ですね」
まじで来たのか…。
「そうだ、田中君。何か聞きたいこととかあります?」
「いえ特に無いですけど」
「うーん…ホントはあまり良くないと思うんですが、この質問してみますか。コックリさん、コックリさん、この学校に今いる生徒の数を教えてください」
すると10円玉が動き始めた。
数字の3、次にに、最後にんと移動して止まった。
「3人のようですね」
「3人?って今ここにいるのは2人ですけど」
「もう1人何処かにいるのか、はたまたコックリさんを入れての3人なのか曖昧ですね。まぁ、そんなことは今はどうでも良いんですが」
「「コックリさん、コックリさん、鳥居にお戻りください」」
10円玉が鳥居の位置にまで戻る。
その後いくつかなにか意図があるのか分からないが、校長の名前や、校歌、学校であった面白い話的な話を聞いた。
コックリさんは以外と話が上手く思わず聞き入ってしまっていたが、そろそろ指がキツくなってきたので、ヨーコに話しかける。
「あの、ヨーコ。そろそろキツい」
「そうですか、ではそろそろちゃんと質問しますか」
これまでの質問はただ聞きたかっただけなのか。
「コックリさん、コックリさん、あなたの正体は何ですか?」
10円玉がゆっくりと動き出し指し示したのは「だ・ま・れ」の3文字。
「こ、これは…」
窓が割れ破片が風に揺られ飛び散る。
この人は風に揺られていると画になるなと思っていると、寒気を感じた。
「そろそろ出てきてほしいのですが…この10円玉を離すと私達が不利になりますので、絶対に離さないでくださいね」
「で、でも、先ほどから強い力で手が離されそうなんですけど!!」
「ご・ろ゙・ず!!」
「田中君きます!」
「は、はいっ!?」
どこからともなく教室の半分が埋まるほどの大きな狐が現れた。
蛍光灯が割れ一気に暗くなる。
「こ、れが…」
「コックリさんだったものです」
「それって…」
「詳しい説明は後です。今はこの怪異を元の状態に戻すために手伝ってください」
無茶言うなよ。こんなデカい怪物どうやって。
「それでは…」
ゴソゴソと下のポケットから何か札のような物を取り出すとなにかを唱え始めた。
それと同時に狐の化物が襲いかかろうとしたが止まった。
「人にあらず、人に禍害を及ぼすものよ。今日私、水無瀬彩陽が受け止めましょう」
空気が変わる
さぁさぁさぁ廻るこの世に生まれた魂たちよ。お戻りなさい。そして我、門柳龍法のもたらす讃歌の一つとなれ!!」
静止した狐の化物は札の中へと吸収されていった。
その光景をみたのを最後に意識が遠のいた。
次に目を開けた時保健室に俺はいた。
「ん、…」
体をゆっくりと起こし、カーテンを開けると保健室の先生、中野がいた。
「鬼童君調子はどう?」
「えーと…大丈夫、です」
「そう、ちゃんと水無瀬さんにお礼を言っとくのよ」
「水無瀬?」
「水無瀬さんよ、あなたの学年の一個上の」
あの女が俺の一個上?いや、そんなことより
「分かりました。出来ればクラスも教えていただけると嬉しいのですが、」
高まる期待を胸に保健室を後にした。
さて、一応クラスを教えてもらったが彼女は俺を保健室に連れてきた後に早退したと。
不思議な経験だったが、俺にとってこの日は忘れなれない一日となった。
第一章 コックリさん 終わり
普段は未来 昇という名義で書いてます。
よろしくお願いします。
それではまた次の章でお会いしましょう。




