無能者の烙印。
「どうしたのだ…レイバレよ?」
父上は初めて見るレイバレの動揺に思わず、体を乗り出してレイバレに問いかける。
「それが……」
「何じゃ?言うてみよ!」
気不味そうにレイバレはギフト付与師の使命を果たすべく、ノルのギフトについて語り出した。
「ノル様は……【建築】と呼ばれるギフトでしたのじゃ…これは神の意思……つまり、神はノル様を王たる器では無いと判断されておりまする。」
レイバレの発言に一同が沈黙に沈む……
沈黙を破ったのは皇帝ザリオンの一言だった。
「この者…ノルを国外追放処分とし、未到の大地であるレドリアの魔森林に捨てて来い!」
(親の発言とは到底思えないなコイツ……)
「ハッ!」
『捨てて来い』はストレートに表現するとレドリアの奥地で殺して来いって事になる。
(ここは演技をするべきか……)
「父上〜どうかお許しを……父上!」
「見苦しいぞノル。」
「そうですよノル。父に意見とは無礼者!」
ノルの家族は……どうして誰も弁護しないんだ。
父、母、兄が全てに拒絶される感覚…これはオレが白夜の記憶が無い純粋なノルならば耐えれないだろうな。
それからオレは城兵に寄って馬車に乗せられ、追放先のレドリア魔森林へと向かった。
馬車の中…城兵が三人同席している内の一人が沈黙を破る……
「ノル様……本当に申し訳ございません。」
「もうノル様じゃないよ?」
「私達、城兵は貴方様に感謝しているのです。」
以前、兵士達の兵舎を訪れた際に剣や防具がボロボロになっているのを見て財政大臣を数日間ほど掛けて頼み倒して兵士の士気向上の為にノルは武器屋と財政大臣を落とした。
結果として従来よりも強い兵士が増えた。
「あの時…掛け合ったのがノル様だと聞きました。我々の死亡率も下がりました。」
「それは皆さんがスゴイんですよ。でも、そう言ってもらえると嬉しいです!」
「ノル様を殺す様に指示を受けていますが、我々は貴方様を殺せません……だから森で下ろしたら逃亡して下さい。」
真剣な表情で逃げる事を薦める兵士は少し震えていた。兵士の立場で皇帝に反逆するのだから無理もないだろう。
「ありがとう。貴方の優しさに感謝します。」
「ソロソロ着きます!お早くご準備を……」
「分かった。」
「あと、ノル様のお側にどうしても…と先に待っております!」
『お側に』……ってことはオレに付き添ってくれるのだろうか?一体どんな人だろう。
「一箇所だけですが魔除けの護符が貼った木があるのでそちらに向かって下さい。ご武運を。」
「ありがとう。あなた方もお元気で。」
オレはその待ち人が居るであろう護符が貼られた木へと向かうのだった。