獣王国の姫とノル
以前、レイチャード殿から防衛も大事だと教わり、僕は魔獣や魔物が生息しているこのレドリアの森の外周部分のみを残していた。
今後、ラスタード帝国が他の国を攻める際に重要拠点になり得るこの森を攻略する目的で進行してくる可能性が僕の中で大きくなっていた。
そこで街を完成するにあたり、防壁を森の内側にぐるりと街を囲む様に建築を同時進行し、同じ時期に完成することができてホッする僕を見てルシアとエリーナが僕の横でそっと背中を支えた。
「本当にお疲れ様でしたノル様」
「私はルシアさんほど、側に居られなかったですが、ノルの努力は見てきました!
お疲れ様でした…そして、これからです!」
僕はきっと恵まれていると思う…最初は追放されてこの森に投げ出されて……死を覚悟したけど、なんとか頑張って今がある。
「うん…二人ともありがとう!」
会話をしている時だった…急に警報ブザーが鳴り始めたのだった。
ブーン…ブーン…ブーン。
ゲートを何かが通過したことを知らせる音が街中に3回鳴った。
「これは…人間の集団かな?」
(今日って受け入れは無かったよね?)
「あの…レイチャードさん、エリーナ。今日って移住者の受け入れは無かったよね?」
「はい、今日は街の創設記念ですので休みにしております。だから、受け入れは無いはずだが……」
「私の国も同じく受け入れは無しにして参りましたので違いますよ?」
となると……侵入者?それとも他国が攻めてきたのか?どちらにせよ全員を通すわけにはいかない。
「防衛システム起動…レベル1で様子見。」
門が自動で急に閉まる。半分は中に入られたけど、残りは外で足止めさせてもらおう!
「何が起きてるんだ?」
「今の音はいったい……」
住民の不安が募る中…再び僕はステージの上に登ると住民に向けて呼びかけた。
「今の警報は人間の侵入を知らせる物です!
半分ほどは侵入を防いでいますが、残り半分はおそらくこちらに向かっています。ですが、この街は僕が作った街です……なので、誰にも傷つけはさせません!だから…皆さんは家に入り、鍵を閉めておいてください。絶対に守りますから!」
そのこの言葉に不思議と住民は納得して家に戻ると鍵を閉めて閉じこもってもらった。
「さて…エリーナとレイチャード殿も避難を!」
「冒険者ギルドの方々は指示があるまで待機を!」
ちょうど家に住民を戻し終えると居住区に軍隊が足並みを揃えてこちらに向けて進行していた。
「ノル様…あの旗は獣王国の紋章です。」
「やっぱり…僕も見覚えがあるよ…けど、まさか獣王国が森に入るとは驚いたな…予想外だ。」
前列の馬車が停止すると中から一人の女性が姿を現すと周りの兵士が揃って声を上げた。
「「レベッカ様…ご到着!」」
どうして姫がこんな場所に……!?僕を見るなり、ニコッと笑うと近づいてきた。
二人は正面を向き合って対峙するのだった。
銀髪のストレートな髪を後ろで紫色のリボンできっちり締め、赤い瞳は吸い込まれそうなほどに綺麗だった。全体を見ても気品があり、エリーナとはまた違った雰囲気をしている。