ルドルフの謝罪とギルドの移転。
「エリーナはルシアの所に行ったのかな?」
黙って何処かへ行ってしまったから推測にはなるんだけど、料理を教わりにキッチンに向かったと僕は考えていた。
一人になると体調が完全じゃないが良く分かる。再び眠気に襲われて段々と目蓋に重さが伝わる。
「また…眠気……これは……抗えない……かも。」
目を閉じてどのくらい経っただろう…鼻に飛び込んでくる美味そうな香りにゆっくりと目が開く。
同時にお腹の音が辺りに響き渡ると女性陣が僕を見て笑っているのが見えた。
「あれ?二人とも…いつの間にか寝てたみたい」
「はい、ノル様は私がルシアさんの元に行った後に寝てしまわれたのかもしれませんわ」
「そうかも。」
「急に眠気が来たんだけど、無理だったよ。」
「ノル様…」
ルシアは僕の顔を見るなり、少し申し訳なさもあるのか、ちょっとモジモジしていた。
「ルシアは悪くないからね!」
「え……?」
「僕がこうなったのが、自分のせいとか思っているんじゃないの?」
「それは……」
「この話はお終い!」
「もし、自分のせいって悔やむならずっと側で支えてくれると嬉しい」
(……あれ?何か言い方がおかしかったかな?)
「はい……私はこれから先の生涯をノル様に捧げてまいります!」
(ちょっと…恥ずかしい……)
「ドンドンドン…」
「すまねぇ!ルドルフだが……お邪魔するぞ?」
やっと笑顔になっていたルシアが再び固まってしまった。
「どうぞ。」
「ルシアもいるな。」
「はい……」
「ルシアよ…すまなかった!」
「ノル殿が一喝してくれたお陰で誤りに気付けた」
「ずっとノル殿の横で一人で支えて来たことを聞かされた……頑張っていたのに勝って知らずに決めつけて罵倒したこと……謝りたい。」
ルドルフさんは曲がったことが嫌いなだけの気の良いオジサンだというのは話してて分かった。
まぁ、ルドルフさんに僕がルシアをリスペクトしていたって話を聞かせたからね!
「いえ、私はルドルフ師匠に言われたからでは無くて…ノル様に何かが起こるのが怖いのです。」
「大丈夫なのに…心配し過ぎだからね!」
「良い主を手に入れたな…ルシア。」
「ハイ!最高のご主人様です。」
ルドルフさんは僕に大事が話があると重々しい空気を出しながら話し出した。
「ラスタード帝国がな…他国との共和協定を破棄したのだ。つまり、戦争をいつでも仕掛けるって話になるんだが……ノル殿のオヤジは何を考えておるんだ!?」
ルドルフさんの意見もごもっともだし、あの親子が何をしたいのか……僕も知りたい。
「僕も知りたいな…」
「帝国いた時からあんな感じだったし……」
「ワシは帝国の冒険者ギルドを撤退させる」
「そこでお願いがあるんじゃが……」
ギルドの撤退をするのは正しい…もし、ギルドが残った場合、戦争のコマにされかねないだろうし、たぶん…あの二人は頭数に組み入れてるはずだ。
「つまり…僕の場所に来たのは……」
「ギルドの移転先をココにしたいのだ!」
「それには条件があります。」
「条件か?聞こう……」
「ルシアに対しての暴言禁止!」
(ビクビクしてるのは…見たくない)
「ギルドでノルティアの防衛をお願いします!」
「それは構わないぞ!」
「なら、僕が中心地にギルド支部を建てるよ!」
「イイのか!?」
ギルドくらいの建物は僕も初めてだし、練習にもちょうど良さそうだ。
明日、チャレンジしてみるかな……。
「明日、建てるから見に来てよ!」
「明日……って流石に明日は無理だろ?」
ルドルフは明日になってノルの偉大さに驚愕することになるのだった。