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エリーナと看病

「ル…ル……ルシアーーーーーッ!!?」


 僕は汗だくになりながらルシアを叫びながら飛び起きた。しかし、何の夢かは具体的には分からなかったが、とにかく怖い夢だったようだ。


「もう…私という妻が居ると言うのに……」

「ノル様ったら他の女性の名を呼ぶなんてね…」


 ゾクッ……として横を振り向くと不機嫌そうな顔をしながらジッと見つめるエリーナが居た。


「え……エリーナ!?」

「どうしてここに?」


 彼女は僕が熱が上がっているのを察して水タオルで頭を冷やしてくれていたようで、ずっと看病をしてくれていた事にお礼を伝えた。


「すまない。」

「看病してくれてたんでしょ?エリーナのお陰でずいぶんと楽になったよ…ありがとう!」


「もう…ズルいなぁ!」

「ルシアさんの事は本人から聞いたから気にしてないですし、"妻"なので当然ですわ!」


 妻…ちょっとその響きにドキドキってしちゃうけど、こんなにも優しくて真が強い女性が妻になってくれたのは素直に嬉しい♪


「ありがとう♪」

「ても、到着って明日じゃなかったっけ?」


 実は僕らがノルウェルを出立する時にエリーナも一緒にノルティアに帰還予定だったんだけど、急にトラブルが起きて三日後に着くようにするって話になっていた。


「今日はその三日目の昼過ぎですよ?」

「二日間ほど眠っていたようでしたので心配しましておりました。」


 通りでさっきからお腹が空いているのか……

グゥーっと鳴るお腹の音に僕は早々にエリーナに恥ずかしい姿を見せてしまったのだった。


「うふふ♡」

「大きな音はどちらから聞こえてくるのかしら〜」


 エリーナはあの結婚式から進化していた。こんなにもからかい上手になるなんて…僕は将来……頭が上がらなそう…。


「からかい上手なエリーナもカワイイね!」


 僕の言葉に反応したエリーナは顔を真っ赤にしながら僕の肩の辺りを軽く叩く。


「もぅ…ホント、平然と言っちゃうとこですよ…」

「反省しなさい♡」


「お腹空いてるはずだと思い、ルシアさんに昼食をお願いしていますよ!」

「来たらゆっくり食べてくださいね!」


「エリーナ、ありがとう♪」

「すごく助かる…腹ペコでまた、倒れそう……」


「いゃいゃ…復活したのに倒れるのは無しです!」

「それなら私…お料理をルシアさんに習ってみようかな♪」


 エリーナの料理……妻の手料理は男として食べでみたい!

 この世界の貴族社会において妻が作ることは無く、基本的にはメイドが料理や家事を行う。

 赤ちゃんだって乳母が育てたり、教育を行う。


「エリーナが頑張って作ってくれるなら嬉しい!」

「そうですか!?」

「変じゃないですか?」

「変じゃないよ♪僕はステキだと思います!」

 

 エリーナは無言で走り出すと部屋から飛び出していってしまい、僕は一人ポツンと取り残されてしまった。


『何か気に触ること言ったかな……』


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