ノルウェル王国へ!
次の日の朝…もちろん自分の部屋で僕が目を覚ましはずなのだが……目の前にはエリーナが隣で眠っていた。
その寝顔を見ているだけで癒されてしまう…ん?
「癒されてどうするんだーッ!!」
(あまりの驚きについ叫んで……)
慌てて彼女に視線を落とすとエリーナは微笑みながらこちらを覗き込んでいた。
「おはようございますノル様♡」
「おはようございます……じゃないですよ!」
「未来の旦那様と一夜を共に過ごすの……初めての経験でしたわ!」
「それは誤解を生みますから!」
「えっ……」
「エッ……!?何かあったの……?」
「なんちゃって♪
まだ、何もないのでご安心下さい!」
(ビックリした……)
何かあったならこの婚姻の報告は無しになりかねないところだったかもと思うと…ブルブル。
「さて、夫婦ごっこも済んだ事ですし…早速ですが、我が国…ノルウェルに向かうと致しましょうか!」
「少し待って!エリーナや他の方に朝食をご馳走させて欲しい。そうしないと……」
僕はルシアが昨夜に仕込んでいた料理が無駄になる事を恐れていた。
言葉や態度では出ないけど……何となく落ち込んでるように思えて嫌なんだよね。ルシアにはいつでも笑ってて欲しい。
「ねぇ……ノル様……今、他の女性のことを……」
(顔に出てた?ルシアの事は考えたけど……)
「僕のメイドのルシアが朝食の準備をしていると思って考えてしまった。すまない!」
エリーナは一瞬だけ驚いた表情を見せるとクスッと笑って僕を見つめた。
「まさか…素直にお話しされるなんて…フフッ♪」
「エッ!?ダメだったかな…大事な人には誠実で有りたいとは思っているけど上手くいかないな。」
自分では全く気にせずに言った言葉だったけど、後になって恥ずかしい事を口走っていることに彼女の様子を見て気づいたのだった。
「あっ……えっと……そう言うことだから!」
(……ってどう言うことなんだよ!)
頭の中で一人ツッコミをする始末……。
「あの……嬉しいです。」
それからは少し悪い意味で気不味いのでは無く、良い意味で気不味い雰囲気になっていた。
(良い意味の気不味さってなんだよ!!)
ルシアが作ってくれた朝食を済ませると成人前と言う事もあり、レイチャード殿に僕の身元の証明する役回りを任せる事になった。
―少し前―
「ノル様…王との謁見ですが、私がノル様の身元保証人として同行しても宜しいでしょうか?」
「そんな面倒な役回り……本当に良いのですか?」
「もちろん!エリーナ姫との結婚を進める為ならばこの、レイチャードをお使い下さい!」
「ありがとうございます!お力をお借りします。」
◇◇◇
そんなこともあり、僕とレイチャード殿がこの村の代表としてノルウェル軍とエリーナ姫と共に王都ノルウェルに向かうのだった。
道中は緊張していたからか…いつもは馬車に少し揺られたくらいでは酔わないけど、僕は過去にないレベルで……モロに酔っていた。
「大丈夫ですかノル様?!」
「ゔぅ…まさか酔うとは面目ないです。ヴッ…!」
「回復士はいませんか?」
エリーナは馬車を止めると回復士を探し始めると直ぐに見つかった。
「ハイ!エリーナ様…ケガをされたのすか!?」
「いぇ、私ではなく……彼を…ノル様の馬車酔いを治療して欲しいのですわ。」
「かしこまりました…しかし、酔いとなると緩和くらいにしか効果が無く、完治までは……」
「それでしたら私がスキルでサポートします!」
「私のスキル…強化は対象の能力を底上げしてくれるのできっとお役に立てるはず…。」
そこからはエリーナが回復士を強化して回復士は僕の馬車酔いに全力の魔法を使ってバッチリ治療してもらった。
「二人ともありがとう…助かりました♪」
「お役に立てて光栄です!」
「ノル様の役に立てて良かったですわ♪」
まさかエリーナのスキルが『強化』だとは思っても見なかった…兄がエリーナについて探りを入れていたのはコレを持っているからって事だな。
帝国は武力国家だ…戦争に使える才能は機能が停止するまで使い潰していると聞く。
そんな所にエリーナを渡す訳には絶対にいかなくなったぞ!
「暫くは馬車の中で私のお膝をお使いになってお休みになりませんか?」
(それは……膝枕という……世の男性が恋焦がれるシュチュレーションを体験してしまうのか!?)
結局、僕は彼女の行為に甘えて膝枕というものを体験することができた。
気付けば僕はエリーナの膝の中で眠りに落ちていた……。
「…ましたよ?」
「……着きましたよ?」
「ノル様!着きました!」
「わっ!……エリーナ!?」
エリーナに起こされた時にはすでに王都内の街並みの中を通って真っ直ぐに見える王城へと向かっていた。
「ありがとうエリーナ!
起こしてもらって助かった……。」
「どう致しましてですわ!」
街並みは帝国ラスタードと違い、活気に満ち溢れていた。
町の様子を見てこの国が幸福かが分かる。皆んなは笑顔って事が一番重要だと僕は思っている。
「ノル様、我が国ノルウェルへようこそ!」
僕は王都ノルウェルへと入国を果たしたのだった。