男としての決意。
どうして彼女…エリーナ・ノルウェルが僕に対して好きで居てくれているのかが不思議で仕方なかった……恋愛経験皆無の僕には【未知の領域】。
「5年前に助けてくれたのですよ。ノル様が…」
当時、私は病弱で定期的に苦しんでいた。そんなある日、王族恒例の舞踏会にわたくしも参加していました。
あまりの人の多さに気分を害して庭園に逃げ込んだのですが……酷くなってキツくなっていた時に常駐医師を連れて来て適切な対応をしてくれたお陰で今のわたくしがあります。
「そのお姿に一目惚れをしてしまいましたの。」
それからは奇跡みたいな事が起き、奇病と言われていた症状も消え、やっとの思いでノル様に見合う女性になったと思えば突然のノル様の【死】を聞いて絶望してしまいました。
「ですがッ!!」
ノル様が生きている事をレイチャード様に聞いて居ても立っても……慌てて来てしまいました。
「ずっと……お慕え申しておりました。」
「ですが、私も引く訳にはいかないのであれこれと策を用意しております!」
「策!!?」
「帝国は力を付けるべく、周辺諸国に強引に攻め込む口実を作りながら攻め初めています。」
「そんな事を……!?」
「はい…かなり被人道的な作戦を兵に敷いている様ですね。作戦指揮はノル様の兄レオン様だとか。」
(あの人ならやりかねないか……)
「このままにするとラスタード帝国が調子付いて大国にも進軍を開始するかもしれないってことか…」
「ご明察ですノル様!あと、もう一つだけ…この大森林も例外ではありません。この森を支配すれば自ずと他の国からは死角になりますので攻め易いと思いませんか?」
(間違えなく…最初の足がかりを付けるならばこのレドリア魔森林を攻略するのは必然…なら、この村も見つかるのは時間の問題ってことか。)
「そう……だね。森を侵攻する可能性はあるか…」
「もう一つ、私の家臣が掴んだ情報では帝国の貴族と王族に関してノル様が生きている事に気づいていません…これは好機だと私は考えております。」
「好機か…」
「私と結婚し、ノルティア王国をバックに付ければこの美しい村も発展して、やがては大きな大国を作ることも可能でしょう!」
「それは確かにそうなんだけど…エリーナのご両親を通さないといけないと僕は思うんだ……」
エリーナは少し考えて言葉を選ぶとノルに対して真っ直ぐに伝えた。
「ならば……明日、帰還する際にノル様も同行してもらうのは如何でしょうか?」
「かなり急……」
(だけど、エリーナの気持ちに応えたい。)
「急だけどエリーナに報いたい!
行こう…ノルウェル王国へ!」
こうして波乱のノルウェル王国への突然の訪問をすることになったノルはエリーナの馬車に乗る段取りを全員に伝えてその日を終えたのだった。




