手紙の内容。
―エリーナの手紙―
突然のお手紙を出した無礼をどうかお許し頂ければ幸いでございます。
ノル・ラスタード様は以前、舞踏会で何度かお会いした事…覚えていらっしゃしゃるでしょうか?
昔話はいずれ直接、お会いして話すとしましょう。
本題です。グレイス様より、ラスタード帝国の話は以前より伺っておりました。
最初の報告を受けた時…ノル様がレドリア魔森林へ追放されたと聞き、気がおかしくなってしまいました。
あの……魔獣や魔物が生息する森でたった一人。
それから間もなくして『生きている』と聞いた時は直ぐにでも会いに行きたかったのですが、両親を説得するのに時間が掛かりまして……この度、ようやく許可が降り、明日の昼頃に伺う運びになりました事を文面にて早めにお伝えした次第です。
では、明日を楽しみにしております。
エリーナ・ノルウェル。
「……えっ!?」
「ちょ……と待って下さい……明日って?」
言いにくそうにレイチャード殿は口を開いた。
「明日……ですね。」
「急過ぎますよーッ!!」
大国の姫君を迎えれる準備などしていない……
それに姫君が来るならば護衛だけでも相当な人数がラスタード帝国の隣の境界線に侵入してくる。
ラスタード帝国だってバカじゃない。
急に他国……それも大国が姫君が来るとなると……
ゔぅ……間違いなく侵攻してきたって勘繰るのは仕方ないだろうね……どうしよう。
「どうして王国の姫君が僕に会いに来るんだろ?」
「「えっ……!?」」
皆んなの反応がおかしいけど…
今はそれどこでは無い。相手は僕と同い年だが、王子の位を剥奪された僕が会って良いのだろうか?
「あの……ノル様のお洋服を調達しないとです」
ルシアも急に姫君が来ると言うので驚きを隠せないようだ。
「そうだな…お願いできる?他にもお菓子とか食事の準備とか……フレアも協力をお願いします!」
「あぁ……」
フレアはチラッと横目でルシアを見てこれは断れる雰囲気でないと気付いたのか諦めた様子だった。
「えっと……了解です。」
「ありがとうフレア。」
「貸しイチって事で!」
(まぁ、ルシアさんに貸を作るのも悪くない。)
僕はノルウェル王国とレドリア魔森林の距離を考えていた。
実はノルウェル王国領土とラスタード帝国の領土を挟む形でレドリア魔森林が広がっている。
ノルウェル領土側から森を抜けることが予想された為、急ピッチで一カ所だけ通り抜けできるように整地したり、他の事も含めてバタバタと準備を進めて、なんとか当日を迎えたのだった。