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私の世界と君の世界②

 「そう、私の世界と君の世界は間違いなく、まぎれもなく並行世界ではあるけれど、その性質はまるで対照的なんだ☆ 最初に言ったよね。私の世界と君の世界は無数に広がる並行世界の両極端なんだって。」


 天眼は、仮初が食べようとしていたバナナをさも当たり前かのように食べながら、説明を続ける。


 「世界の分岐点になる、いわゆる世界のターニングポイントの結末がまるで正反対の私と君の世界は、並行世界というよりも、君のいう異世界の方が概念が近い。 言い得て妙だね☆」


 天眼は説明しながら、あっという間にバナナを食べ終わる。 彼女はリンゴ、バナナを食べてもまだお腹が空いているのか、バスケットのバナナの房から、また一本、二本もぎとる。 バナナ二本食いか? と思ったが、二本目は仮初少年の分の様で、天眼は彼にバナナを投げつける。


 野球部の仮初は難なくキャッチし、またありがたくいただくとする。 彼は上下関係の厳しい野球部に長く属していたため、人が話しているときは、礼儀として物を食べながら聞かないというモラルを持っていた。 だが、天眼の場合、悠長にしていたら食べられてしまうので、遠慮なく食べてしまおう。 なんなら、天眼も食べながら説明しているし、そう彼は思い立った。


 仮初は早速、剥いたバナナを口に運び、咀嚼しする。 久々の食べ物の甘味に感動を覚えつつ、それを味わい飲み込む。 一呼吸置いた後、「性質が違うって、どんな感じに違うんですか?」と天眼の説明で抱いた疑問を投じた。 この時初めて、彼は自らの疑問を天眼が答える前に口に出すことができた。


 「君の世界に伝わる龍。 あれは架空の存在――そう言われてるよね?」


 天眼は軽くバナナをかじる。


 「でも、それは違う。 私の世界では、龍は人間を圧倒し、支配したんだよ。」


 天眼も本日、二度目のバナナを仮初よりもおいしそうに食べながら、そう話す。


 「龍が世界を支配?!」 俺の疑問に答えた天眼のそのまさかの発言に驚愕し、再び疑問を投げかける。


 「龍って、神話とか伝説とかに登場するあの龍ですよね?! 架空の生き物じゃないんですか!??」


 俺は畳み掛けるように、疑問を投げかける。 疑問を投球する。 さっきまで、バナナで感じていた久々の甘味が口内を埋め尽くしていたが、その感動を忘れる。 それほど天眼の話は衝撃的だった。


 「君の世界に伝わる架空の生物の龍。 それは、古の時代、人間によって滅ぼされたらしいね。でも、私の世界は、人間によって龍が討伐されなかった世界。 言い換えれば、人間が龍に敗けた世界なんだよ。」


 天眼はバナナを咀嚼しながら、どこから出したのか古い文献を器用にも人差し指で回しながら説明する。


 「本当に龍はいたんですか……。」


 俺は自分の常識が次々覆される奇妙な感覚に戸惑いながら、天眼にその存在の有無を再度確認する。


 「龍は本当にこの世界にも存在していたよ☆ でも、長きにわたる歴史の中でその存在を訝しめられたんだろうね。 なんせ、現代の科学でも解明できないような龍の秘術を使うんだから。」


 天眼は古い文献を回しながら、宙に置くようにそれを投げる。 宙に投げ出された文献は刹那の光とともにその存在を晦ます。 こんな感じに、ね☆ と流れるように物理法則を無視する天眼の動作に唖然とする。しかし、そんな仮初少年を無視し、天眼は説明を続ける。


 「私の世界では、この力を竜技(ドラゴンズ・サイン)と呼ばれている。 君の世界でいう科学。 言うなれば、アニメや漫画の魔法に成り代わる人間の力さ☆」


 その時には、天眼は本日二本目のバナナを完食していた。

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