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幕間③

 「とうっちゃーくっ!☆」


 瞳子は勢いそのまま、慣性そのままに地上に着陸する。


 そして、その勢いを踵で削り相殺。着地に落ち着く。


 「着いたよ。英雄!」


 ……だが、英雄は応じない。なぜなら、瞳子の病院からの飛び降り。からの飛行。さらに、追い打ちをかけるような着地の衝撃で、英雄は完全に気を失っていたからだ。


 「英雄!  起きて!!☆」


 瞳子は気絶した英雄に構うことなく、両肩を掴み、激しく揺らす。


 「……っ。」


 「英雄!!」


 瞳子の激しい気付けによって目覚めた英雄は、霞む目で辺りを見渡す。徐々に網膜が光を取り込むのに慣れ、景色が鮮明になっていく。


 「着いた……、のか?」


 「着いたよ。君のかつての故郷に。」


 瞳子は英雄を見つめ、そう告げる。


 そこはかつての大都会。の面影もない、なにもない、ただ凪のような静かな闇が広がっている。


 破壊し尽くされたかつての大都会は、以前はそびえ立っていたであろう建物のコンクリートや平静に舗装されていただろう道路のアスファルトの残骸が無秩序に散らばっており、風が吹くと、"あらゆるもの"が含有された砂埃が英雄を襲う。


 (……考えたくないな。)


 英雄は腕で顔を覆い、砂埃を耐える。当たり前だが、風を遮る建物がないので、そのままの風がダイレクトに吹く。さらに飛ばされてきた諸々が体にぶつかる。英雄は軽度の痛みと重度の不快感に耐え凌ぐため、歯を食いしばる。


 次第に風が吹き止むと、その暴力的な砂埃も威力を弱め、再び凪のような静寂が訪れる。


 「いやいやぁ〜☆ 嘘みたいだよね。あの東京がこんな廃墟になるなんてね。」


 瞳子は後ろで手を組み、英雄の横に歩き立つ。瞳子は先ほどの暴風を意に介していないのか、その様相が乱された形跡はない。しかし、そんな疑問もすぐに消え去った。なぜなら、


 「にしても、星が綺麗だね☆」


 星を見上げる瞳子の横顔に英雄もつられて、空を見上げる。


 見上げた空は、かつての東京では見られなかった満点の星々に彩られていた。


 「……星が綺麗だ。」


 消えない街明かりと林立する高層ビルのせいで、東京では決して見ることができなかった満点の星々に目も思考も奪われた英雄は思わず、そう漏らした。


 「……。」


 「……なんだよ。」


 「……いやぁ。英雄ってそんな表情するんだね☆」


 「そんな表情ってどんな表情だよ。」


 英雄は言いながら、瞳子から顔を背ける。


 「えっ、恥ずかしがってんの☆ 恥ずかしいの英雄☆」


 「……うるさいな、見んなよ。」

 

 英雄は、瞳子からの煽りという追撃を避けるべく、距離をとる。瞳子はそれでも煽っていたが、英雄は聞こえないふりに徹していた。そして英雄に瞳子の煽りが届かなくなる頃。







 「……さて、始めるか。」


 瞳子は、その手の平を空を彩る満天の星々に掲げ、唱える。


 「龍技ドラゴンズ・サイン!」





 

 「なんだよ。めちゃくちゃ煽りやがって。」英雄は、荒廃した東京を文句を垂れながら一人歩く。しかし、英雄は町明かりの消えない東京で過ごしてきたため、あれほどの星々を見たことがなかった。そのため、英雄の目に映ったそれは、彼にとって、鮮明で魅力的で、心奪われるものだった。


 英雄は、足を止め、星を眺める。瞳子と離れ過ぎないように、しかし、耳障りな煽りが最小限になる距離感で、英雄はこのひと時に没頭する。


 「……っ!!」急な地鳴りが英雄を襲う。振り返ると天を仰ぐ瞳子の足元を中心に光が広がっていく。その光がやがて英雄に到達し、目が眩む。そして、光が落ち着いたときには、その光を纏う"紋章"は地平にまで到達していた。


 「この力を使うには、龍素が満ちるこのスポットと星明りが必要だった。ここだけが向こうとつながる唯一の場所だからね☆」


 「瞳子!」いつのまにか隣にいた瞳子に対し、超常的現状を創り出した瞳子に対し、英雄は圧倒されるしかなかった。


 「君もいずれ使う力だからね。いちいち驚いてると気が持たないよ。私の世界では、この力がベーシックなんだよ。」


 「……俺も使えるのか?」


 「使えるとも! もう私とも契約してるしさ。前提的なことは後で話すとして、本題に移るよ。」


 瞳子は、話を切り上げ、唱える。


 「龍技ドラゴンズ・サイン 天獄門!!」


 そのとき、立つのが困難になるほど地面が大きく揺れる。英雄は地面に這いつくばり、対照的に、飄々と立つ瞳子が引き起こす奇跡を見届ける。……はずだったが、あまりの揺れのため、英雄は目を瞑り、必死にこらえていたため、それは叶えられなかった。


 ようやく揺れが収まり、目を開けると、目の前には、ただひたすらに巨大な扉があった。その扉は荘厳さと神聖さをもつ、まるで神話の時代のものであるかのような装飾が施された巨大な扉だった。


 「行くよ 英雄!!」瞳子は英雄の手を取り、半ば強引に駆け出す。未だ情緒の追い付かない英雄は一端思考を放棄して、瞳子の走りを合わせる。


 瞳子が「開門☆」と唱えると同時に、扉が開き、中から漏れた光が二人を包み込む。そして、地上でも空中でもなく、ましてや海中でもない無重力が二人を包む。


 「……ここはもう君の世界なのか。扉の先なのか。」


 「ん~、厳密にいうと、扉の中だね。さてどこにたたき出されるかな☆☆」


 瞳子は意味深なことをいうと、光が晴れ、夜の暗闇が訪れると同時に、一気に重力が全身に襲う。


 「まあ、そうだよねー☆」


 「そうだよね、じゃねぇぇぇよぉぉぉぉ!!!」


 二人は、はるか空のかなた、雲よりも高い場所から、落下する。

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