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赤い稲妻
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赤い稲妻

新作第1話です。

 欧州某所。

 時刻は日没。

 落ちた太陽が地平線に吸い込まれる中砂埃が舞う荒野。

 強い朱色を最後の灯のように太陽が地面に伸ばす光を受けて荒野の岩場に隠すように建てられたコンクリート造りの平屋があった。

 その建物は窓らしい窓はほとんどなく、採光用の細い10㎝程スリットと同じく細い、幅30㎝程のすりガラスの窓が数個限られた部分にあるのみだった。

 壁のほとんどはコンクリートで塗り固められまるで鉄壁。

 外からの死線を拒絶するかのような作りだった。

 その建物の周囲には鉄骨や角材、大きなタイヤ、重機などがあった。

 見た目では山岳地の建築部材置き場だった。

 未開拓地での建築や、あるいは山越えをする送電線や送電線鉄塔の整備や新築などをする業者の仮置き場や事務所に見えないでもないだろう。

 しかし異質なのはその周囲にいる人間だった。

 皆荒野に溶けるような茶褐色迷彩のパーカーを着ている男たちが一定のルートを複数人歩き回っている。

 その皆が銃を握っている。

 小銃に、腰には拳銃。

 中には手榴弾を腰に巻いている者までいる。

 よく見ると建物の屋上には屋根に腹を着けている者までいる。

 もちろん寝ているのではなく、土嚢に狙撃銃を預けてそのスコープを覗いている。

 これを見て、業者の事務所だと考える者はあまりいないだろう。

 あまりにも異質だった。

 一定のルートで何往復も周回する武装した人間と屋根の上で狙撃銃を構えている人間。

 見た感じではその建物を守るために雇われた警備の人間だろう。

 しかし問題なのはその装備だ。

 統一感が一切なく、製造国も見るからに違う物だった。

 雇われたと一口に言っても、同じ場所から来た者ばかりではないのは明白だった。

 傭兵か、あるいは。

 そこまで堅牢に守られた建物。

 そこからはるか遠く2,000mより更に500m向こう側。

 大きくせり出した岩場、そこを更に数メートル進んである岩場、それも更に超えた岩場、直線状に交差するように並ぶ岩のその手前にある細い茂み。

 あの建物から真っ直ぐ見て岩と岩と岩がちょうど重ならない際どい線状に、男がいた。

「いた」と表現したがその姿は全く見えない。

 茂みの中で自身に泥と発破をかぶせている。

 泥をかぶせた事で匂いも建たれ、上から発破をかけることで自然な景色と同化している。

 目が良いだとか、そんなのでは到底見つけられない程に完璧な偽装。

 唯一彼の存在を世界に示す物があるとしたらわずか数センチだけはみ出た黒い金属。

 規則的に隙間が彫られたそれはまるで何かをそこから射出するかのよう。

 言わずもがな、狙撃銃の銃口だった。

 火で炙り煤で反射を抑えたその銃口は泥と酷似する。

 突き出ていても腐った枝くらいにしか見えない

 男は自身にかけた葉っぱの中で狙撃銃AWMを構えている。

 一般的な構えの伏せ撃ちだ。

 葉っぱで姿の見えない彼はしかし、リラックスしてさもそれが普通かのように、まるで日曜日の朝テレビを見ながらソファに横になっているかのような気楽さを見せる。

 つまり彼には戦意だとか殺意だとか、そういう物が一切感じられない。

 ただ普通の呼吸をしている。

 彼にとってはそれが普通なのだと証明するようだった。

 彼は一度小さく息を吸って、吐く。

 それを数度繰り返す。

 彼の呼吸に合わせて、肩に付けられた銃床ごと狙撃銃が微妙に動く。

 しかし彼は動じずにそのままゆっくりと呼吸を続けてる。

 一定の動きで銃が動く。

 AMWに装備されたスコープから見える景色もそれに呼応して動いているはず。

 彼はしかしそれを止めもせず呼吸を続ける。

 銃口からまっすぐ伸びた射線上にはあの建物の採光用のスリット。

 わずか10㎝ほどのそれをこの距離で見たらいくらスコープ越しでも点以下にしか見えないだろう。

 彼はしかし、銃口をそこに向けていた。

 口を開かず、身動きせず、あるのは呼吸のたびに微動する背中だけ。

 それもきっと意識しないと発見できないだけのものだった。

 その時、敷地内を巡回している武装した男に話しかけるスーツの男がいた。

 武装した男はそれに頷き返す。スーツの男は煙草に火をつけて手をひらひらとして男をあしらうようにする。

 スーツの男はそのまま建物の扉を開いて中に入っていく。

 偽装した男の所から聞こえるか聞こえないか程度にカチッという音がした。

 スーツの男が中に入ってから少し。

 偽装した男はやはり呼吸だけをしている。

 呼吸は止めない。

 変わらずただスコープを覗いている。

 少しだけ呼吸のペースが変わる。

 大きく、というか一般的な呼吸に変わった。

 呼応してAWMも動きの幅が増える。

 しかし彼はそれを変えることなく続ける。

 銃口は変わらずあの10㎝のスリットに合わせられている。

 そこを基準に呼吸をするたびに上に、下にと動く。

 スリットに影が入る。

 誰かがそこにいる。

 スリットの先の部屋の中に誰かが入ったのだろう。

 銃口が上に下にと動く。

 上に。

 下に。

 上に。

 下に。

 スリットにその銃口が戻るその一瞬。

 速く、しかし真っ直ぐに正確に、彼は引き金を引いた。

 衝撃波となって銃声が響き、彼の周囲の偽装を微かに動かす。

 偽装の隙間から初速850m/sで射出された.338弾は狂うことなく3つの岩場を通り過ぎて10㎝幅のスリットに吸い込まれていく。

 スリットの壁面に掠ることもなく、内部に侵入した.338弾。

 それと引き換えにするようにスリットの一部に赤い液体が数滴飛んだのが見えた。

 周囲が慌しくなった。

 弾丸が通過する際、遅れてやってくる銃声と、通過する弾丸が発する衝撃音が彼らの正確な認知を食わせ、銃声の位置を探りにくくしていた。

 彼らは方向こそ間違わなかったが少しずれた所に迎撃射撃を始めた。

 故に彼は焦ることなくスコープを覗き続ける。

 2分ほどしてバンが勢いよく走り、建物のすぐ横に付けた。

 それと同時に扉からあのスーツの男を脇に抱えた迷彩服を着た男が現れた。

 スーツの男は頭を半分吹き飛ばして血を垂れ流していた。

 確実に即死だった。

 バンに乗せられる男を確認し、彼は偽装から立ち上がってその姿を露わにした。

 白い髪。

 長めの髪の髪を垂れ流して左顔を隠すようにした男。後ろ手にポニーテールのようにしたその髪が風になびいて一瞬見えた左頬には十字の太い、大きな裂傷痕があった。

 その裂傷痕は正に脈を打つ心臓のように血液の流れを表すように赤く点滅している。

 彼は左手に持ったAWMのストック部分を脇に挟むようにしてからボルトをゆっくりと左手で引く。右手で開かれたボルト部分を抑えて放出される空薬莢を転がすことなく受け止めて懐へ入れる


「ターゲットダウン」


 男はかすれた声で言う。

 華奢で、細い体躯を灰色のパーカーのような服で包み、その上から偽装を施している。

 細く、しかし妙に、大きな存在感を発揮するその姿で、呟いて、彼は開かれたボルトを戻した。

 そのまま彼は流れる砂埃の中に消えていった。

最近はずっと執筆が出来ていませんでしたし日本語も使うのも久しぶりですのできっと拙い部分も多いです。

お気づきになられた点ありましたらご指摘願えますと幸いです。

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