表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その68 マイマイナンバーカード絶対法施行後…

作者: 天城冴

豪雨のせいで、自宅に閉じ込められたデジタル庁大臣ゴウノ氏と、秘書。ジコウ党とその周辺が優先的に救助するマイマイナンバーカードの隠れたシステムにより、助けが来ることを期待していたのだが…

雨が降っていた。

6月末のニホン国では梅雨も終わりに近づいていたが、台風いや、それ以上の豪雨に難治も見舞われ、各地で被害がでていた。

首都トンキョーでさえ、あちこちで河川の氾濫、マンホールからも水があふれ、各地の道路が冠水。官公庁が集中するカスンガセキや、世襲政治家たちの都内の住居ですら、被害をまぬかれることはできなかった。

「なぜ、外部と連絡が取れないんだ!」

イラついた様子で、秘書に怒鳴るのは、デジタル庁ゴウノ大臣。

都内の一等地にある自宅の窓から見る景色は晴れた日には見晴らし良く、いかにも権力者が好みそうな眺めだが、今はたたきつけるような雨に、1メートル先すらみえない。しかも高所のためか、雨が激しい。

「だ、大臣落ち着いてください。わ、私ももう三日以上ここから出られませんし」

「ああ、そうだな。なんで、うちがこんなことになったんだ。どうしてこんなに雨が」

「そ、その線状降水帯とかが、首都上空に発生して、その長時間居座るといいますか。低気圧がニホン国各所で、その移動というか消滅を阻んでいるとか、一昨日のラジオでいって」

「それで、停電だのなんだので、ここに缶詰めか」

「は、はい。各種システムがダウンしてまして。本来なら国の重要人物は真っ先に救助されるようになっているんですが…。こ、これは国民には知らされておりませんが…」

「ああ、マイマイナンバーの隠れシステムとか言うモノだな。まあ、あのシステムはフジンツウだのの利権だけじゃなく、我々世襲政治家やそれに従う人間たちを医療、災害救助、他から優先的に助けるようにプログラムがあるというからな。私もよくわからないんだが」

「(わからないくせにSNSで大口叩くんですから)…漏電かなにかで一時的にシステムが遮断されていますが、復旧されれば…」

“ダメだよ、死んでるもんアンタがた”

不意に子供の声がした。

「え?」

「何?」

“だから、カード情報ではもう死亡になってるの、ゴウノさんも、秘書さんも”

「だ、誰だ。う、うちの子供の声じゃないはず…」

ゴウノ大臣と秘書は灯りの消えた薄暗い部屋の中を見回すが、彼ら以外に人のいる気配はない。

「なんなんだ、どうして私たちが死んでるなんて、デマが」

“デマじゃないよ、ほら見てみなよ”

パチ

突然、スマートフォンの電源が入った。

「お、おいスマホが勝手に、マイマイナンバーシステムにログインしたぞ!」

震える手でスマートフォンを見るゴウノ大臣。

「わ、私もです。…ええ!こ、この建物が水であふれ、全員死亡。マイマイナンバーカードでは、私はすでに死んでいる…」

目を見開き、食い入るように液晶画面を見る秘書。

“ほらね。カード情報では死んでいるんだから、死んだんだよ”

「そんな馬鹿な、我々はちゃんと、生きてるのに!」

“だって、カードの情報が絶対なんでしょう?誤情報、ご登録が多すぎて、国民がそっぽを向きだしたしたら、無理やりカードの登録と情報が正しいって法律作っちゃって”

“ほーんと、ひっどいよねえ。さすが傲慢で、卑屈で卑劣っていわれたジコウ党世襲政治家だわ”

また、別の声が加わった。

「う、うるさい!わ、私は卑屈でも卑劣でも…」

“エゴサーチして批判はブロック。耳のイターイ忠告は聞かない、ダメになったら怒鳴り散らすくせに。で、周りの意見も聞かないで、強引にあんな法律通して”

“まあ、首相とか、おんなじ与党の議員とかも同じ穴のムジナだよね。あ、似非野党のメイジの党とかのバーバとオドギタナイとかいう議員モドキたちもさ”

あざ笑うような声に

「なんなんだ、いったい、お前らは」

怒鳴り散らすゴウノ大臣。だが、その声は震えていた。

“またキレてるよ、思慮が浅いし、短気だし、どうしようもないねえ”

“だから、無茶苦茶やっちゃうんだよ。登録したカードの情報が誤りでもカードのが正しいことにするなんて。名前も、住所も、職歴もだよ、それに…”

“医療カルテもね”

ギクッとしたような秘書。

「そ、その、か、カルテに若干の誤情報が含まれたとは」

“若干ってちょっと、とかだよねえ。そんなもんじゃなかったよ。効かない、かえって悪化するような薬どれだけのまされたのかな、死んじゃうまで”

“あ、事故に遭ったのに、事故じゃないことにされたりねえ。事故ったのが与党のお偉いさんの子供だとかで。軽傷ってことで、ろくに医者にも連れってもらえなくて…ちゃんと治療してくれれば、助かったのかなあ”

と、怒りを含んだような子供たちの声。

「ま、まさか…」

青ざめるゴウノ大臣。

「ひいいいい、ご、ごめんなさいいいい」

秘書は頭を抱えて床にうずくまる。

「な、何を謝ってるんだ、ワ、私たちは悪くないんだ、全部システムが」

弁解するゴウノ大臣。

“その欠陥システムを無理やり運用したのはアンタたちだよね”

“そーそー全部ジコウ党とそのお仲間のせいだよね”

身勝手な理屈を一蹴して声たちは続ける。

“だからさ、カードを書き換えちゃったんだよ、ほら、私たち幽霊だから”

“システムに侵入なんて、簡単。で、政府の世襲の奴らとか、お仲間の芸人とか似非学者とかあ、そういうの、みーんな、首都、それぞれのセキュリティがスゴイ、ゼータクなお家で死んだことにしちゃった”

「まさか、助けがこないのは」

顔を上げた秘書がつぶやくように言ったのを

“そう、みんな死んでるの。カード情報ではね”

“アンタたちだけが助かるようなプログラムってのがあって、ほんと助かったわ。楽だったよお、逆にすればよかったんだもん。嘘の情報流して、アンタらを首都から逃さないようにしてさ”

“あ、あのオーンサカもね。メイジの奴らの本拠地も。もっともふつうの人たちはちゃーんと逃げたからさ、安心してよね、大半の善良な国民さんは無事だよ、これから大変だろうけど”

と楽しげに笑う声。

「そ、そんな、我々が助かるはず、うまくいくはず…」

呆然とした表情のゴウノ大臣。

“あーあ、怒ったと思ったら、悲しくなった?ほんと子供だよねえ、自分たちだけいい思いしようとするからだよ”

“自分の失敗を認めずに欠陥だらけのシステムを他人に押し付けるだよ、どーしようもないオッサンたち”

「うわあああああ」

絶望して喚き散らすゴウノ大臣。

その声も外の雨音にかき消され、さらなる豪雨が建物に降り注いだ。


どこぞの国では政府がトンデモナイポンコツシステムをゴリ押しするようですが、自分らだけは被害を被らないと思っているんですかね。どういうバグがあるか、エラーがあるかも不明なんですが…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ