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【mean―意味なき世界―】  作者: 落世
第一章 一編 【騒乱の幕開け】
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アンノウン スタート



―――――<特別な力>が欲しい。


 そう、思ったことはないだろうか。

 ここで言う<特別な力>とは、飛び抜けた学力や他を圧倒する運動神経等のことではなく。

 文字通り理外の、不可能を可能たらしめる。そんな非現実的な架空の力のことだ。

 『空を飛びたい』,『若返りたい』などを筆頭に、朝一秒でも長く寝ていたいから『テレポートがしたい』、人の本音を知るために『テレパシーが使いたい』。はたまた自己の欲求を満たすため『透明化したい』等々。

 様々な場面で〝こんな力があったら〟と、そんな願望を抱いたことはないだろうか?

 思春期の若者達を中心に、大抵の人は何かしらの形で考えたことがある筈だ。



―――――ならもし、実際にそんな力があったら?



 そんなものあるわけがない。と、端から切り捨てる人も少なからず居るだろう。

 確かに、現実でその存在の証明は成されていない。だが逆に、本当に存在しないと誰が証明できようか?

 ただ私たちが知らないだけで、既にこの世界の何処かには実在しているかもしれない―――この話題はまたの機会に。



 では少し想像をしてみよう。勿論これはたとえ話ではあるが、頭の中でこんな場面をイメージして欲しい。


―――あなたは今、とある場所に立っている。空が見える場所なら何処でもいい。自由に思い描いてみよう。

 ふと見上げると、空を優雅に泳ぐ鳥類の群れが目に留まる。その一団の中に一つ、異質なものが混ざっていことに気が付いた。

 よく見ると‘ソレ’は人の形をしていた。

 目を疑い何度か(まばた)きしてみるも、事実として人が空を飛んでいる。


 航空法違反?力学的に不可能?

 今はそんな視点ではなく、一人の目撃者として。


 そのまま‘ソレ’を見続けていると、向こうもこちらの視線に気付いたらしく、急旋回してこちらに向かってきた。

 恐ろしい速度で、空を飛ぶ‘ナニカ’が眼前に迫る―――――



 どうだろうか。怖くはないだろうか?



 少なくとも私だったら怖い。もし明日の外出中にでもそんなモノに出くわしたら、腰を抜かして唖然と口をパクパクさせることだろう。


 突然空飛ぶ人間の話をされてもイメージが湧きにくいかもしれない。

 なので話をもう一つ。


―――あなたは今友人と話をしている。

 なるべく親密な人物を思い浮かべて欲しい。

 いつもと変わらぬ調子で他愛ない話を。

 天気がどうだとかテストがどうだとか昨日のテレビがどうだとか。


 そんな時突然、話している相手が喋ってもいない自分の考えを語りだした。

 相手が知るはずもないずっと隠していた秘密や本心を次々と言い当てられる。まるでそう―――自分の思考か記憶を読んでいるかのように。


 どうだろうか?多少なりとも不快感を覚えた筈だ。


―――とまぁ、このように。

 身の回りにもしそんな<特別な力>を持った者がいても、常人からしたらただただ怖いだけである。

 次第に人が離れていき、孤立し蔑まれ、最後には科学者のいい研究材料(おもちゃ)にされるのがオチだろう。


―――――何故か。


 理由は至って簡単。彼らが少数派であるからだ。

 先の二つの話にしても、主観の人物から見れば、力のあるものは異様に、異常に見えたことだろう。

 だが、その人も含めて世界中の誰もが空を飛べ、思考が読めるのであれば、そこに恐怖や畏怖の感情は生まれない筈なのだ。

 それが、自分と他人を比べたがる、人という生き物だ。



 さて、そろそろ本題に入るとしようか。


―――――その世界には、<特別な力>があった。

 後に<能力>と呼ばれることになる奇怪な力が、確かに実在していた。

 しかし、その存在を知っている者は少なく、世の中にはいわゆる都市伝説的なものとして語られていたそうだ。

 前振りのとおり、<能力>を持つものが少数派であった故に。


 誰が最初に得たのか、何処でどうやって得たのか。今となっては分からないが。

 世の理から外れた―――いやそれも含めて世界の理か。

 ともかく、そんな力があった。


 その力が、人々に何を齎すか、それは時と場合によって違ってくるだろう。

 その力を、忌むも愛すも呪うも尊ぶも、能力者それぞれの自由であるからして。

 だがしかし、その力を得た者の人生に大きく関わってくることは確かだ。


 これは、彼等の世界で、能力者達を中心に世界が―――いや、世界を軸に能力者達自身が変わっていく。


 そんな、夢のない夢物語(ファンタジー)である。




―――――これは、現実の話ではない。


―――――だが、現実の話なのかもしれない。

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