とりとめのない話2
明けましておめでとうございます
昨年は読んで下さりありがとうございます。
感想、ブックマーク、評価、お気に入り登録等して頂きありがとうございます。物語を書く上でとても励みになっています。感謝申し上げます。
今回も本編とは全く関係ありません。
幕間でも、番外編でもありません。
年末年始に読み返しや再考が出来そうになかったので、勝手ながら二回続けて本編の更新を延期します。続きを待っていて下さる方には本当に申し訳ありません。
しかも、本編にはまだ登場していない人物(グレアム王子とアンジェリカ)も登場します。こんな二人だったらいいなと想像して書いてますので、本編では違っているかもしれません。グレアム王子達の登場は少し先で、五十話前後の予定です。
ロザリンもお喋りで、リディアも大人しめ、ヘンドリックとの仲も良好で、みんな仲良しこよしの平和なお話です。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
次回は一月六日午前零時過ぎに更新致します。なるべく焦らず、じっくり進めていきたいと思っています。そろそろ折り返し地点で百話にはならないはずですが、道半ばですのでどうなるかわかりません。最後までお付き合い頂けたら幸いです。
本年もどうかよろしくお願い致します。
ロク
♢登場人物
へ=ヘンドリック
リ=リディア
ロ=ロザリン
サ=サーニン
マ=マックス
グ=グレアム
ア=アンジェリカ
♢ おこたでほっこり ♢
へ「皆、寒い中よく集まってくれた。のんびりと新年を祝うのは初めてだが、おこたでまったりがなかなか良いと聞いてな。皆と過ごしたいと思ったんだ」
リ「ヘンリーったら、こたつが欲しいって言うからなんでかなぁ?って思ってたんだけどぉ、こういうことだったのねぇ」
へ「フフ、そうだよ。ねえリディ、寒いだろう?こっちにおいで。一緒にこたつに入ろう。皆もこたつであったまってくれ」
リ「ちょっと待ってぇ。今ホッとレモンいれるからぁ。フフ、ヘンリーは甘いのが好きなのよねぇ。はい、どうぞぉ。みんなの分も作ったからねぇ。遠慮なくどうぞ〜」
リディアは適当にカップを置いてからヘンドリックの横に座った。ヘンドリック達の向かいに座ったロザリンが両手でカップを持った。
ロ「あ、ありがとうございます。はあ、あったかい・・・それに、こたつって、ぬくぬくで気持ちいい」
へ「その通りなんだよ、ロザリン嬢。わかってくれるかい?この感動を!さあ、グレアム達もサーニン殿も、遠慮せず座ってくれ」
グ「ああ。じゃあ、お言葉に甘えて」
グレアムはそう言うとアンジェリカの手を取り、ヘンドリック達の左側に座らせると、アンジェリカを後ろから抱きしめるようにして自らも座った。もちろん、アンジェリカを抱きしめるのは当たり前とばかり、両手でギュッと抱きしめている。
ア「グ、グレアム様。ち、近すぎますわ」
アンジェリカが顔を真っ赤にして俯いた。
グ「何を言うんだ!これでもまだ足りないのに」
グレアムは拘束していた手を解き、アンジェリカの輝くハニーブロンドの髪を一房手に取ると、極上の微笑みを浮かべてキスを落とした。それでも足りないのか、目の前にあるつむじに、こめかみにとキスを落としていく。
グ「あー、ダメだ。アンジェがかわいすぎて止まらない。ねえアンジェ、二人きりになりたい。ここを抜けてデートしようよ」
ア「もう、グレアム様ったらおやめ下さい。それよりこたつですわよ。こたつを堪能して下さいませ」
アンジェリカは真っ赤な顔で、恥ずかしさのあまり目に涙を滲ませてグレアムを睨んだ。
グ「フフ、俺のレディは恥ずかしがり屋だな。そんなところも好きだよ、アンジェ」
ア「グレアム様!本当に怒りますわよ」
グ「わかった、わかったよ。アンジェ、降参だ。私の言葉で怒ってるアンジェもかわいいが、フフ、怒らないでくれ。こたつだね?フム。まるでアンジェを抱きしめているみたいだ。温かいよ。そうだ!俺の部屋にもこたつを置こう。そうすれば二人で楽しめるが、ねえ、いい案だと思わないか?」
グレアムはホールドアップしてからこたつ布団の中に手を入れ、アンジェリカのお腹をギュッと抱きしめて落ち着いた。
へ「・・・お前、本当にグレアムか?」
リ「・・・じ、実は影武者?」
ロ「そうなんですよ、ヘンドリック様、リディアさん。聞いて貰えますか?」
へ「あ、ああ」 リ「え、ええ」
ロ「ヘンドリック様達がご卒業された後、私達は二年になりましたの。グレアム様も一年の時から密かに人気はおありだったんですのよ。でも万年氷の君や鉄仮面王子と揶揄されたり、女嫌いのレッテルを貼られたり、終いには側近のエリオット様と怪しい仲なんじゃないかとまで囁かれてたんですのよ」
リ「そうよぉ。あたしもその変な二つ名は聞いたことあるわぁ」
ロ「女生徒の中では有名でしたもの。でも、今の一年生がなんと噂してるかご存知ですか?『微笑みの王子様』ですのよ!『微笑みの王子様』!昨年と比べると天地の差ですのよ。驚きですわ!!」
グ「アンジェ、私は男色などではないよ。信じてくれるね。昨年は夢を見てはいけない人を好きだっただけだ。他の女なんてどうでもよかったんだ。それが、夢にまでみた人が俺の思いに応えて腕の中で笑ってくれる。嬉しくて顔が綻ぶのは当たり前だろう?」
ア「まあ、グレアム様、これ以上は仰らないで下さいませ」
アンジェリカは頬を染めて恥ずかしげに俯いた。
へ「アンジェリカのその顔、私が誉めるといつも浮かべていたな」
リ「ヘンリー、この浮気者〜!!」
リディアが思い切りヘンドリックの甲をつねった。
「い、痛い!やめてくれ、リディ。私が悪かった。懐かしかっただけだ。変な意味はない。失言した」
グ「兄上、アンジェを揺さぶるような事は言わないでくれ。いくら兄でも決闘を申し込みたくなる」
へ「物騒なことを言うな。もし剣を交えると言うのなら、それは試合でにしてもらおうか」
ア「二人ともおやめ下さい。それとグレアム様、恥ずかしいので少し離れて頂けませんか?」
グ「兄上の返答、確かに受け取った。それと、ねえ、アンジェ。アンジェの側にいて触れずいるなんて俺には我慢出来ないよ」
グレアムが申し訳なさそうに言い、アンジェリカは頰を染めたまま深い溜息を吐いた。
グレアムがアンジェリカに構っている間に、マックスとサーニンはヘンドリックの右隣に並んで座った。マックスが手で顔をパタパタと扇ぎながらホッとレモンを飲むなりブフォーッと噴き出した。
マ「な、なんじゃこりゃあ!濃すぎて口ん中がキシキシするぞ。リディア、お前味見したのかよ?」
リ「まあ、マックスったら失礼ねぇ。あたしはこれくらいが好きなのよ。ね、ヘンリーもそうでしょう?」
へ「あ、ああ。・・・美味しいよ」
マ「ヘンドリック様、嘘はいけませんよ、嘘は。リディアのためになりません」
サ「まあ、それぞれ好みがあるんだから一概にまずいとは言うな。マックス、お前の好みでないだけだろ。文句言わずに飲め」
マ「チッ、兄貴までリディアを甘やかすんだから。ところで俺ら、なんで呼ばれたんすか?まさか、ホットレモンを飲むためだけじゃあないでしょう」
へ「ああ。実はこたつをみんなで楽しもうと思ってだな」
マ「マ、マジですか。はあ、そんな事のためにロザリン様まで呼び出すなんて」
ロ「わ、私にとってはいい経験になりますので気を遣わないで下さいね。それよりアンジェリカ様、ご無沙汰していますわ。フフフ、グレアム様のご寵愛ぶりは相変わらずですのね。少しは慣れましたか?」
ア「ロザリンたら。揶揄うのはおよしになって。こんなの慣れるわけないでしょう!毎日手を焼いてるのよ」
ロ「そうですのね。でも仲睦まじくてほっこりしますわ。時々目のやり場に困りますが、フフ」
グ「ロザリン嬢も大変そうだな。領の勉強は捗ってるか?」
ロ「ええ、ヘンドリック様は博識ですから。色々と教えて頂いて感謝していますわ」
リ「そうよぉ!ヘンリーは何でも知ってるしぃ、強いしぃ、とってもかっこいいんだからぁ。ロザリン様ったら惚れないでよぉ」
ロ「まあ、当たり前ですわ!そもそも私達貴族の婚姻は家のために行うものですから。ヘンドリック様みたいに情熱的にはなれませんわ」
へ「ロザリン嬢、それは私が貴族らしくない愚か者だと言っているのかな?」
ロ「とんでもございませんわ!そう聞こえたなら申し訳ありません。謝罪致しますわ。私達女生徒の間では、ヘンドリック様達の恋はまるで物語のようだと言っていますのよ」
リ「物語みたいねぇ。フフ、悪くないわねぇ」
マ「で?結局ダラダラとしてるだけですかい?」
へ「まあ、そうだな。こたつに入ると動けなくなるのは仕方がないってわかったよ。それにしてもぬくぬくで罪深い。だが庶民の正月はそんなもんだろう?たまには貴族らしくない事をして、のんびり過ごしてもいいんじゃないか?」
マ「ヘンドリック様の意見はツッコミどころ満載ですね。でも、なるほど。でしたらとりあえず『大富豪』でもしますか?」
マックスは目をキラリと光らせて、懐からトランプを取り出した。
サ「マックス、私は『うすのろのバカ』でもいいが」
リ「何言ってんのよ、二人とも!集まってやるのは『神経衰弱』って昔っから決まってるでしょ!」
マ「決まってねーよ」
サ「ああ、決まってないな」
皆が一斉にヘンドリックを見た。
へ「そうだな」
ヘンドリックはゆっくりと見回してから答えた。
へ「やはり『ジジ抜き』から始めよう」
ー おわり ー